ep159 バレなければ犯罪じゃない!
指紋の検証が終わり、蒼達は地下の研究所を後にした。
ちょうど眞琴の部屋を出た時に、リビングに美月がおり、彼女の好意で食堂へと移動して少し遅めの昼食を取る。
そして、昴とは駿河家で離れて琉架と二人で車に乗り込む。
蒼と琉架はお互いにシートベルトを付けながら、今後の行動について話し合う。
「……その能力付与の持ち主には連絡してから近付くの?」
「いや、盗聴の可能性が怖い。さっき、まこっさんにジャミング用の機械借りてきたから直接行く」
「それ、大丈夫? 警戒されない?」
「まぁ、なんとかなるって。……不服だけど俺は子供だからって警戒は薄れる。琉架さんも優男だから、警戒はされづらいって」
「優男って……」
琉架は戸惑うように言う。蒼は頭から琉架を一瞥して、優男だよなと1人で納得する。
「警戒されないって褒め言葉だよ? ……今から会いに行く相手、25歳女性だからさ」
「そうなの?」
「ああ、まこっさんのメモによると、本田春奈。島内銀行に勤めてるらしい」
蒼はメモを確認しながら、琉架と情報の共有をする。
「能力者なんだよね? 銀行に勤められるなんて優秀な上に、かなり努力したんだろうね」
「そもそも、能力者だからって就職の制限されるのがおかしいんだけどな」
「まあ、前提はそうだよね。それでも、この島で能力者を知っている人にとってはその考え方自体が珍しいんだよね」
琉架は蒼からメモを受け取り、カーナビに行き先の銀行を設定すると、エンジンをかけた。
車は静かに発進し、駿河家を後にする。
琉架は少し車を走らせてから、前を向いたまま蒼に話しかけてきた。
「それで、今日は平日だけど彼女が働いてるか確認に行くで大丈夫?」
「そうだな。窓口担当らしいから」
そう言いながら、蒼は車の中に置きっぱなしにしていた鞄からタブレットを取り出す。
そして、能力者研究所のデータベースへとハッキングを始めた。
以前、研究所にはハッキングで侵入したことがあったため、思った以上にスムーズにデータベースまで開ける。
――本田春奈。
名前で検索するとすぐにヒットする。蒼は能力欄を確認し、顔写真をタブレットに保存すると、一切の痕跡を残さずにハッキングを終える。
次は、島内銀行だなと蒼は次のハッキング先を島内銀行の社員データへのアクセスを試みる。銀行と言うこともあり、セキュリティはしっかりしていたが、国家機密をハッキングしたこともある蒼にとっては、造作もないことだった。
少しだけ時間を要したが、無事にアクセスを完了すると蒼は出退勤のデータを探す。
「おっ、琉架さん。今日出勤してるみたい。仕事が終わる時間まで近くで待機して、話を聞こう」
「……待って、蒼さん。さっきからタブレット弄ってると思ってはいたけど何やってたの?」
「ん? お休みだったら嫌だなと思って、能力者研究所から顔写真引っ張って、銀行は出勤しているかの確認しただけだぜ?」
「いや、わからないから、ハッキングしようは違うと思う……。確かに名札を一人一人確認するのは大変だから顔が分かるのは助かるけど、それでも犯罪はよくない。……僕の立場から言うのは違うとは思うけど」
琉架は前を見て運転しながらも、真剣な表情で蒼を諭すように言う。
神庭会は別に分類上は極道に入っているが、実際の行動指針や最近の活動は能力者を守るためのやむを得ない場合を除いて、犯罪をほとんど犯していないから別に行って良いと思うなと蒼は、対極にいる従兄弟の顔を思い浮かべる。
「琉架さん、知らないのか? バレなければ犯罪ではないんだよ!」
「……その年の子供から、その台詞は聞きたくなかったな」
「でも、吹雪の受け売り!」
「……そもそも、その年で吹雪と知り合いってのも教育上よくないと思うよ」
琉架はハンドルを強く握りしめながら、彼にしてはやや強い口調で続ける。
「僕もほとんどが噂話でたまに父さんと天音が話しているのを聞いているくらいしか知らない。だから、あまり決めつけるようなことを言いたくないけど、お金のためならと禍月組とも繋がっているんだろ? 島を食い物にして住人達を危険に巻き込むことも気にかけない。僕はそんな人間にしか思えない」
「あははっ」
琉架の吹雪像に蒼は思わず吹き出した。実際に唯華には興味がないことに関しては、琉架の予想通りの面もある。しかし、自分の商売を守るために島の安寧を島民の中で一番気にかけていると言っても過言ではない面があるのも事実だ。
金の亡者気質も、天文学的数字になりつつあるらしい、和泉の酒のツケを払うためという裏事情を知っているとさらに面白い。
「大丈夫だよ、琉架さん。正義のヒーローではないし、物語の黒幕っていっても過言じゃないぐらいには暗躍しまくってるけど、今回のノアズ計画の件と言い、島の危機には早めに動いている。それに、きちんと相手の力量を確認して、巻き込む采配も調節してる。……琉架さんが心配するような人間ではないよ」
蒼は琉架に笑いながら、全く安心できない一言を続ける。
「確かに、バレなければ犯罪じゃないは吹雪の受け売りだけど!」
「……その言葉で全ての説得力がなくなるの自覚した上でいうのが、蒼さんらしいね」
琉架の呆れたような声が車内に響く。
そして、車は島内銀行の前を通過し、長時間止めても怪しまれないように少し離れた位置にあるコインパーキングの捜索に目的が変わった。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、明日20時に更新予定です。
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