↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
145/148

ep145 吹雪と従者

 肇はフードの人物と対峙する。フードの人物は自分が気絶させた男の背中を容赦なく踏みつけている。


「この男は禍月組……といっても、ほとんど表で生きている君には通じないか。まぁ、極道の下っ端みたいなものだ。君の能力に目をつけて利用しようとしている」

「その男も言っていたけど、能力って何の話? オレの人形作家としての腕を褒めてくれているのか?」


 肇はゆっくりと後退しながら近くに待機している人形《鳥達》を呼び寄せようとして、異変に気付いた。


(さっきまで近くにいたはずなのに、この付近に1体もない?)


 猫を抱える腕に力が入る。先程までは確かに感じていた気配を探れない。肇の命令を無視するはずがないとさらに周囲を探ろうとした時、フードの人物がタブレットを触りながら、肇に近付いてきた。

 倒れていた男は、そばに控えていた茶髪の男が見張っていた。


「君の人形は悪いが、こちらで預からせてもらっている。これで、能力者じゃないとしらを切れないだろ?」

「――っ」


 フードの人物が見せてきたタブレットの画面には、確かに肇が手ずから作成した鳥の人形達が鳥籠の中にとらわれていた。

 肇は人形達が人質に取られたことにより、先程のように誤魔化すことが出来ない。仮に知らないと答えたことにより人形達がどうなるかが想像もつかないからだ。

 肇にはフードの人物に従う以外の選択肢がなかった。眼鏡越しに睨み付けるようにしながら、小さく首を縦に振る。


「では、一緒に来てもらおうか」


 そう言うとフードの人物はいきなり距離を詰めてきて、タブレットを持っていない方の手で肇の腕を掴んだ。


「葵、そいつは後で回収させる。君も来い」

「……ああ」


 葵と呼ばれた男はフードの人物の近くまで来ると、タブレットを受け取る。すると、フードの人物はポケットから携帯をとりだしどこかに電話を始めた。


「月陽? 今送った座標から、さっき伝えた座標まで飛ばして」


 用件だけ伝えて、すぐに電話を切り、ポケットへとしまうと、背後に控えていた葵を見る。


「葵、一応の可能性があるから、どこかに捕まっていろ」


 フードの人物に葵が触れたと思った瞬間に、視界が歪む。思わず、抱えていた猫をさらに強く抱きしめた。無意識に閉じていた瞳を開けると、そこはどこかの室内だった。


「え……」


 先程まで道にいたはずと思わず声が漏れる。すでにフードの人物も葵も手を離していた。


「さて、単刀直入に……」

「流石に、混乱してるだろう。飲み物ぐらい出した方がいいんじゃないか?」

「……君はいつからそんなに世話焼きになった」

「そんなつもりはない。ただ、ここからあんたに振り回されるのを考えるとな」


 2人は軽口を叩くと、葵は室内にあった簡易キッチンへ、フードの人物はどかりと椅子に座った。


「別に取って食う気はない。とりあえず座りな。どこぞのお節介がお茶でも準備し始めたからな。一応、こっちは君に危害を与える気はない。さっきの奴らに君を盗られると面倒なんだ。だから、身の安全を保証する代わりに君の自由を制限したい。それがこちらの要求だ。詳しい話は、まぁお茶でも飲みながらしようか?」

「そもそも、君は誰なんだ? 名も名乗らない奴を信用しろとは勝手すぎないか?」


 有無を言わさないフードの人物と空いている椅子を交互に見ながら、肇は警戒を解かない。その様子を見て、楽しそうにフードの人物は笑った。


「それはそうだ。一応商売をやっているから、そっちの名を名乗らせてもらおう。吹雪だ。御影島《ここ》で便利屋を生業としている。色々と面倒だから探ろうとするなよ? その場合はこちらも対応を変えないといけなくなる」


 吹雪はフード越しに肇をじっと見つめる。しびれを切らして、肇も椅子へと座った。抱いていた猫は床に下ろしてやると「にゃぁ」と一泣きして、椅子の下にうずくまった。


「まずは、こちらを返そうか」


 吹雪は携帯を弄りながら机の上を見る。その瞬間に、先程まで何もなかった空間に人形《鳥達》が入った鳥籠が現れた。


「――っ!」


 肇は思わず立ち上がる。そして鳥籠を開けると全員の無事を確認し、傷がないことに安堵する。


「こちらの手の者にテレポーターがいるからな。丁重に扱わせてもらったよ」

「……鳥籠に閉じ込めるのが? しかも中に入っている間、気配を感じなかった」

「そりゃそうだ。この鳥籠は能力遮断の素材で出来ている。気配を感じてもらっては困るんだよ。まぁ、さっきまでは君の把握できる範囲外までテレポートで移動させていたがな」


 無人になった鳥籠を回収しながら吹雪は、何でもないことのように言う。

 

 ――能力遮断の素材。


 噂では能力者研究所の天才科学者が発明したと噂話で聞いたことがあったが本当に完成していたのかと、肇は内心で驚きを隠せない。

 そんな肇の前に珈琲の入ったマグカップが置かれた。


「あいつから、あんたは珈琲が好きだと聞いたが、間違いないか?」

「……あっ、ああ」

「そうか」


 前に置かれた珈琲からは香ばしい匂いが漂ってくる。自然と喉が鳴る。


「ただの珈琲だ。薬とかは使っていない。心配なら俺が一口飲むが?」

「いや、そこまではしなくても大丈夫だ」


 人に対して気を遣う気が全くない吹雪、そして、ぶっきらぼうながら気を遣う葵。正反対の2人に挟まれて肇はこの先どうなるのかと、とりあえず無事が分かった鳥達や足下で寛ぐ猫に癒やしを求めたくて仕方なかった。


「詳しい話の説明に移っていいか?」


 そんな心情の肇を気遣う素振りもなく、吹雪は口を開く。4人掛けのテーブルだったが、葵は何故か椅子には座らずに吹雪の後ろに待機した。

 吹雪は目の前に置かれた珈琲に口をつけてから楽しそうに、肇を見た気がした。


「まずは、禍月組についてから話そうか」


 机に頬杖をつきながら、吹雪はニヤリと口元を歪めた。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。