↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
143/146

ep143 隠し通路と人形使い

 車から降りると蒼は、葵に近付いた。


「アイさん、なんでここにいるの?」

「あんたの予想通りだ」

「へぇ、そういえば最近駿河家にいなかったけど、いつからここにいるんだ?」

「悪いが、その情報は伝えるなとあいつから言われている」


 葵の顔をのぞき込むも、教えてくれそうな雰囲気はなく、蒼は諦めた。


「蒼さんの、知り合い?」

「初めまして、神庭琉架さんですよね。俺は、朽梨葵。蒼とはまぁ、顔なじみみたいなものです」

「大丈夫だよ、琉架さん。アイさんは信用できる人だから」


 話しながら玄関へと向かう。蒼はチラチラと葵の様子をうかがった。葵は気付いているだろうにその視線をスルーして先を歩く。

 玄関に入り、居間へと案内される。

 居間には着物を着た人物が本を読んでおり、その向かいには落ち着かないように正座をしている昴がいた。


「えっ、すーさん? 何でいるの?」

「蒼さん……。私も何が何だか。いきなり携帯片手に月陽さんが部屋を尋ねてきまして、気付いたらここに飛ばされていました」


 昴が居心地が悪そうに着物を着た男性を見ている。

 月陽を使って、唯華がこの場所へと昴を誘導したことは分かったが、理由は分からない。着物の男性が一宮かと、顔をのぞき込もうとするも、その前に声により遮られた。


「昴も待たせて悪かったな、行くぞ」

「えっと、この方は……? 説明は後でする。神庭さんも覚悟はあって来ているということで間違いはないですよね? 一応確認させてください」

「はい、覚悟は出来てます。でも、まず一宮に挨拶を……」


 葵は琉架の返答を聞くと言葉を最後まで聞かずに歩き出す。何故、挨拶をさせないのかわからない。蒼は、これだけ騒いでも一度も本から視線をあげない男に少し後ろ髪を引かれながらも葵に続いた。

 蒼の後ろには同じく戸惑っている様子の2人が続く。


 葵は廊下の突き当たりにある部屋の扉を開けて中に入る。ベッドとサイドテーブル、クローゼットがあるだけの寝室のようだ。葵は、クローゼットまで進むと迷わずに開ける。

 そして、座り込むと、床下収納の扉を開けた。


「とりあえず、ここ降りるぞ」


 床下収納と思われた空間には、コンクリートで出来た下へと降りる階段があった。

 思わず、無言で昴と琉架の2人と目を合わせる。2人とも困惑した様子がありありと窺えた。


「アイさん、この下に何があるの?」

「後で説明する。もともとここは、唯華《あいつ》のセーフハウスの一つだ」

「なるほど、地下が本命ってわけか」


 唯華にとって、隠す必要のあるものがこの階段の先にある。蒼はムクムクと好奇心が膨らんでくることを自覚した。

 善は急げだなと、迷わずに階段へと足を向ける。


「とりあえず、何かあったら俺が対処するから、琉架さんも、すーさんも行こう」


 笑顔で2人に声をかけるとなんとも言えない表情を返された。そして、先頭を蒼、次に琉架、昴、最後が葵の順番だ。

 3人が階段を降りたのを確認後に、クローゼットと階段の入口の扉を葵は閉めていた。

 所々にある人感センサー付きの電球で階段は照らされているが少し心許ない。階段を降り終わると、すぐに大きな扉がある。


「アイさん、この扉開けていいの?」


 後ろを歩く葵に確認する。四方がコンクリートに囲まれているためか、蒼の声はよく響いた。


「問題ない」


 葵の返事を聞くと、蒼は迷わずに扉を開ける。すると扉の中から珈琲とトーストの焼けるいい匂いが漂ってきた。


「いらっしゃい。神庭は久しぶりだな」


 小さなキッチンが備え付けてある部屋で優雅に椅子に座り、珈琲を飲んでいる着物姿の男が笑顔で蒼達を見た。


「迎えに行ってくると言ったのに、このタイミングで朝食ですか? 約束の時間を取り決めたのはあんたでしょう」

「あはは、朽梨君は手厳しいな」


 葵は階段に通じる扉を閉めながら、椅子に座る男の後ろへと控えるように移動した。


「はぁー……。神庭さんは知っていると思いますが、一応紹介します。こちら、一宮肇(いちみやはじめ)。現在、禍月組に狙われていて吹雪が保護をしている能力者です」


 葵の説明に肇はひらひらと手を振る。


「神庭以外も吹雪の知り合いだって聞いたから、安心してるよ。オレはただ、好きなことをして過ごせるんなら、どこでもいいんだけどね。人形《うちの子》達を利用されるのは違うんだ」


 珈琲の入ったマグカップを机の上に置き、眼鏡越しでも分かるギラギラした瞳で蒼達を見る。

 強烈なキャラだなと蒼は自分のことは棚に上げて感心した。そして、そのまま気になったことを口にする。


「でさ、一宮さんだっけ? 禍月に狙われてるって何の能力なわけ?」

「人形使いだよ。自分の作った人形の方が精度はいいけど、他人が作った人形でも、まるで本物のように自立させて動かすことが出来る。君達も上で見ただろ? 着物を着ている僕の人形《身代わり》」


 人形使い。蒼の中でノアズ計画と関係ないと片付けた文章ファイルの内容が蘇る。

 まだ、ノアズ計画に直接関わるかは分からない。それでもあの文章は一宮と禍月組を繋げるものであり、あの文章の出所が禍月組である可能性が高いことは分かった。


(ゆいが、俺に期待しているのはノアズ計画の破壊? 禍月組への介入? それとも、一宮肇の保護?)


 様々な可能性が蒼の頭を駆け巡る。

 ニコニコと笑う肇と、いつも通りの仏頂面の葵。そして蒼以上に困惑している様子の昴と琉架。

 室内は、わずかな緊張をはらんだ空気が支配していた。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、明日20時に更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。