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ぱんどら ー治外法権の島ー  作者: 星川宙
第二章ー騒動ー
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外出禁止令そして寮を抜け出そう

 客間にには中原、昴と姫が対面する形で机を挟んで座っており、それぞれの前に美月がお茶を出していた。美月はお茶を出し終えると姫の隣に座り、すぐに口を開いた。


「一応確認のために聞いておきますね。今回訪ねて来たのは、港での事件関係ですよね?」

「ああ、日向の提案でな」


 その疑問に中原はぶっきらぼうにそう言って昴に話を進めるように目で促した。


「はじめは吹雪から情報を買おうとしたのですが連絡が取れず、美月さんや和泉さんだったら何か知っている気がしたので。中原さんの頭を冷やすという理由と共に私が提案したんです」

「……そうですか。ところで犯人の素性はどこまでわかってるんですか? 要求とかもです」

「わからねぇ。あいつら船を占拠した後、何一つ要求してこねぇ。目的が不明なんだ。予測は出来るが、ここまで長引いているとなると断定できない」


 中原が忌々しそうに美月の質問に答えていく。


「今日の11時半頃に犯人じゃなく、乗船者から警察に連絡が来た。"船がサーカスと名乗る変な奴らに占拠されて乗客も全員人質に取られてる"ってな。犯人からの犯行声明はきてねぇし、人数だって分かってない状況だ。それをあいつは昨日から知ってたのに連絡が取れねぇってどうなってやがるんだ!!」

「……まぁ、連絡が急に取れなくなるのは今に始まった事じゃないので、諦めた方がよろしいのではなくて?」


 姫が皮肉を込めた笑みでそんな事を言う。美月がそれを嗜めて中原の方に真剣な眼差しを向ける。


「ここを訪れたのは正解でしたよ。先程、犯人の人数や目的のヒントを聞きましたので」


 美月はそう笑い、その内容を静かに語り出した。




 ♢♢♢♢




「なんで外出禁止で、寮待機なんだよ」


 純の部屋で、当夜は不満そうに文句を言う。昼食時に寮長である和希が理由は語らずにただ外出禁止になった事実だけを告げてきた。何人かは当夜と同様に不満を口にしていたが和希に睨まれ、黙りそれ以上の騒ぎにはならず解散になった。


「詳しい話は如月先輩か大人達しか知らないみたいだよ」


 そんな当夜の様子を見て翼が追加の情報を言う。


「さっき見て来たんだけど、寮の入口は警備員の人が見張ってたから、抜け出すのは難しいと思うよ」

「九条さん、その言い方は抜け出そうと思ったら抜け出せるって聞こえるんだけど気のせい?」


 翼の言い方が引っかかった純はそう尋ねたが翼は微かに笑うだけで何も言わない。


「あー、暇だ!!」


 純のベッドに我が物顔で座りながら当夜は思った事を口にしていく。


「……ってか、なんで俺の部屋に来るんだよ!!」


(あっ、やっとつっこんだ)


「別にいいだろ。部屋でじっとしてるのは俺には無理だ」


 堂々と言ってのける当夜を純は呆れたように見た。


「はぁー、まぁわかっていたけどさ……」


(なんか結城君って性格が少し如月先輩に似てる気がするんだよね。唯我独尊っていうか……)


 そんな様子を見て翼が感想を心の中で呟いていると不意に部屋の扉が開いた。


「こら、九条、なんで部屋にいないんだ!!」


 理不尽な事を言いながら、和希は勝手に純の部屋にズカズカと入って来た。そして迷いなく、翼の襟首を掴む。 


「話があるから、来い」


 和希はそう言って、唖然としてる部屋の住人達を無視し、翼を引きずって部屋を出た。




 ♢♢♢♢




「何のようですか?」


 半強制的に自分の部屋に連れて来られた翼は不機嫌そうに和希を見る。先ほども似たような感じで当夜に純の部屋へと連れて行かれたなと頭の中では既に諦めの境地にいたのだが。


「外出禁止になった理由は知ってるか?」

「知らないですよ、先輩説明してくれなかったじゃないですか」

「あんな大勢がいる場所で言えるか、騒ぎがデカくなる。今から説明する」


 いつになく真剣に言われ、翼は頷くしかできなかった。


「昼食の少し前に学園から連絡があった。本島行きの船が占拠されたそうだ」

「へー、それで外出禁止ってわけですね。確かに生徒が野次馬として見にいって巻き込まれたら大変ですもんね」


 納得したように翼は頷くと学園や和希の意図を汲み取った。どこか他人事の様にそう言いながら、核心を聞く。


「犯人は?」

「まだわかっていないらしい」

「……なるほど。金目当ての犯行ではないって事ですね」


 小さく翼は呟くと、心の中で思った事の続きを呟く。


(となると目的は? ……騒ぎを起こす事? でもそれなら他にも方法がある。ここは船を乗っ取る事が目的って考えた方がいいか? 他国への亡命? ……情報が少なすぎる)


 口元に手を当て考え始める。しかし、何か大切なピースが足りない気がした。


「とりあえずお前は山吹と連絡を取ってこの件を調べてこい」

「……外出禁止を言った人が何を言ってるんですか」

「どのみち隙を見て抜け出そうとしてたんだろ?」

「そうですけど……」

「なら、何の問題もないだろう」


 どこか納得いかないように言う翼だったが、しばらくして息を吐く。


「わかりました」


 そう肯定すると翼はベッドの下から1つの箱を引っ張り出した。そして中から靴を取り出す。


「私はここを離れられん。頼んだぞ、何かわかったら連絡をよこせ」


 そう言い、和希は翼の部屋から出ていく。それを確認して翼は部屋の中から鍵を閉める。

 そしてポーチに携帯など必要最低限の物を入れると先程取り出した靴を持って窓を開けた。


「絶対、この部屋は先輩が裏から手を回したんだろうな」


 窓の外には大木があり、靴を片手に迷わずに木の枝に飛び移る。そのまま器用に靴を履き、窓を閉める。そして慣れた動作で木から降りた。


 そして見つからないように木や建物の影に隠れながら寮から離れる。ある程度寮から離れると、鞄に入れた携帯を取り出し、どこかに電話をかけながら港に向かって歩き出した。

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