番外編SS「世界でいちばんすごい音楽ってなんだ!?」
「なんだと!? てめぇこのロックの良さがわからねぇのか!」
「うるさいよ。このバロックミュージックの良さの前には全ては無音と一緒さ…」
とある町のとある広場。様々な楽士たちが思い思いにいろいろな音楽を奏でている。
そんなところで、二人の男がなにやら言い争っている様子。
「なんだどうしたんだ」
そんなところに、一匹の精霊コナタが、おびえた楽士のハマナスを連れてやってきた。
「おう、ちょっと聞いてくれや。世界で一番最高の音楽ジャンルはなんだって話題になってよ」
「音楽性の違いってやつさ。まったく騒々しいだけのロックのなにがいいのか、理解できないね…」
「ばっかやろう!バロックこそご丁寧にまとまりやがって!」
「「嬢ちゃん、どう思う!?」」
「ヒョエッ!!?」
二人の男性を前に、ハマナスは限りなく枝のように細長くなってしまう。
震えるハマナスを見かねたコナタは、男性たちの間に割って入り、にらみを利かせる。
次第にハマナスは落ち着き、震えながらも彼らに口を開く。
「え、えと。私は、どんなジャンルの音楽も大好きなのでどっちも、好き、です」
たどたどしいながらも、ハマナスの素直な気持ちが男性二人の心をとらえる。
「それより、せっかく素敵な音を奏でてるのに、争ってたら、もったいないです。争う言葉よりも、もっとお兄さんたちの曲が聞きたいです」
ハマナスの言葉に二人して胸を張る男たち。
「お、おうよ。うれしいこと言ってくれるじゃねぇか!」
「そうまで言われたら、演奏してさしあげようじゃないか」
二人の間の溝はまだ深いが、ハマナスの言葉に少しだけ距離が縮まった。
ハマナスにはそんな『音』が聞こえてきた。
コナタも安心し、ほっと胸をなでおろし――近くの木陰に避難する。
「それに…」
ハマナスが二人の男性が持つ楽器を目に、一歩踏み出す。
言葉を続けるハマナスの様子が変化する。
「そもそもロックの雷鳴のような轟音と魂に訴えかけるようなサウンドはほかと比べられるようなものではなくて最近だとロックの派生形もさらに増えて多種多様になるけどやはりエレキギターのサウンドやアップテンポな曲調は今までの音楽業界ひいてはムジカにも新しい風を吹かせるに違いないっていうか!バロック音楽は古くからあり続ける音楽性が私たちの歴史と生活に深く根ざしてるし聞いた人に安心感や神秘さを思い出させてくれるし特に私は100年前の曲調が好きで学校でもよく聞いていました!あとあと、とくにあのころに流行ったバロックの名楽士たちの曲は素晴らしくてもう未来永劫語り継いでいきたいものばかりで」
男性たちはハマナスのマシンガントークの前に、ただ無言で聞くしかない様子。
やれやれまた始まった。
コナタは木の上から、ハマナスの語りが終わるまで静かに待つのであった。




