第五話 作戦会議「作戦名:マリオネット・イン・暗闇」
「さて、第一回目の作戦会議だ」数日後、放課後の部室。宮本が黒板に大きく図を書き込んだ。「校内において、最も男女が急接近するベタなシチュエーションは何か。桜井、プレゼンを頼む」「はい!」桜井美月が鼻息荒く立ち上がった。「少女漫画における聖地、それは『体育館の裏』、そして『放課後の物置小屋(体育館倉庫)』です! 誰もいない暗闇、二人きりの空間、そして不意に閉まる扉……! 閉じ込められた二時間は、吊り橋効果によって恋の炎を爆発させる最高の燃料になります!」「二時間か……。本当にそんなに閉じ込めて大丈夫か?」常識人の藤原が眉をひそめるが、遠藤葵がそれを一蹴する。「大丈夫よ! それくらい時間をかけないと、あの二人には何も起きないわ。作戦名は『マリオネット・イン・暗闇』。役割分担を決めるわよ」宮本のノートを元に、綿密な計画が立てられた。 次の金曜日、体育の授業の片付けの時間。「まず、俺が瀬戸を『跳び箱の片付けを手伝ってくれ』って倉庫に連れ出す」と佐々木。「私は、ちはるに『倉庫に忘れ物しちゃったから付いてきて』ってお願いして、中に誘導するわ」と遠藤。「二人が中に入った瞬間、外で見張っている僕と荒木で、外から南京錠をガチャン、だ」宮本が不敵に笑う。「完璧だわ……」 結城莉子はすでに妄想で顔を赤くしている。「暗闇の中、高梨さんが『キャッ、閉まっちゃった!』って瀬戸くんにしがみつくのよね。で、瀬戸くんが『おい、暴れるなよ……顔が近い』とか言っちゃったりして! ああ、ソワソワする! 尊死する!」「おいおい、瀬戸のあんな冷めたツラが赤くなるなんて想像できねえけど、もし本当にそんなことになったら、俺、あいつを一生いじり倒すわ」荒木がニヤニヤしながらポテトを口に放り込む。
「でも、もし本当に怖がって泣き出したりしたら、すぐに開けてあげなさいよ?」中村が釘を刺すが、全員の頭の中はすでに「恋が始まる音」の妄想でいっぱいだった。周りが勝手に盛り上がり、勝手にヤキモキし、勝手に期待を膨らませていく。「よし、決行は今週の金曜日だ。お前ら、絶対に失敗するなよ!」「「「オー!!」」」こうして、完璧な包囲網が完成した。




