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【完結】ヒモになるため合成魔法で理想の合成獣(ヒロイン)を錬成してみた件  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
最終部 シュタイン博士の愛した実験体

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第43話 誤算

 俺とキメラは東の村で巨人型魔獣トロールを倒した後、森の中にある研究所に戻っていた。


「おかえり なさい しゅたいん せんせいと きめら さん」


 岩石でできた兵隊のゴーレムマン達が(むか)えてくれる。(わき)にはサラマンダーの死骸(しがい)が積まれていた。そういえば防衛を任せていたんだったな。


「被害は?」


「ありません みんな げんき です」


「素晴らしい。さすがだ」


「えへ えへへ」


「それじゃあ各々(おのおの)作業に戻ってくれ」


 ゴーレムマン達は敬礼(けいれい)して持ち場へ帰っていった。


 俺たち二人は部屋の中に入る。キメラは外套(がいとう)を脱ぎ、椅子に腰掛けた。


「それで、話って?」


「フランを倒す策についてだ」


 俺がそう切り出すと、キメラの背筋がわずかに伸びた。


「続けて」


「恐らく、ここは特定されたと思っていいだろう」


 彼女の(まゆ)が動くが口は挟まない。既知(きち)の事実だからだろう。俺は話を続ける。


「トロールから村を救った(うわさ)はすぐに広がる。そして銀髪の女神様と、その連れが森の方へ消えた、との情報も()れるだろうな」


「村人達の口止めをしなくてよかったの?」


 もっともな疑問だ。俺は肩をすくめた。


「下手に口止めしたら仲間だと勘違いされる恐れがある。フランは疑わしい者がいたら消すタイプだろう。善意(ぜんい)で黙ってくれた村人が結果的に殺される可能性もある」


 キメラは少しだけ目を()せた。


「あんたにも人の心が少しはあったのね」


「労働力が——」


「それはもういいわ。策の説明をして」


 ぴしゃりと(さえぎ)られる。


「了解だ」


 俺は机に地図を広げる。エルドラド周辺と、森、そしてこの研究所。


「フランは戦力を整えてから来るはず。俺達が只者(ただもの)じゃないと理解しているからな」


「慎重派だものね」


「少なくとも、これまではな。だから準備期間はある。罠を張り、武器を作り、兵隊を増やす時間がな。ただ懸念点(けねんてん)がある」


 俺は地図の一点を指で叩き、神の智歯(ちし)を持つ魔獣が出た位置に印を付ける。


「フランは神具・神の智歯(ちし)を操っている可能性は以前示唆(しさ)しただろう? 四つしかないはずのそれをあんなに大胆(だいたん)に使って居場所を特定しようとしてきている。(あせ)っている証拠だ」


「……つまり?」


「早ければ一週間程度で来るかもな。俺達と会いたくて仕方ないんだろう」


 キメラが小さく息を()む。


 そして、ここからが本題だ。俺は彼女に真剣な眼差(まなざ)しを向ける。


「それからフランについて……キミに伝えておくべきことがある」


 キメラの視線がまっすぐ俺に向く。


「心して聞いてくれ。フランは——」


 俺は重大な事実を告げた。魔女フランの正体に関するほぼ全てのことを。


 話し終えた時、研究所の中はやけに静かに感じた。


「……それって、本当?」


「ああ、フランを退(しりぞ)けて、“あるもの”が完成したら、もっと詳しく話す。それまで待ってくれ」


 キメラはしばらく黙り込んでいたが、やがて小さく息を吐いた。


「……わかった。信じるわ」


「素直だな」


「一応、積み重ねがあるもの」


 その言葉は思った以上に胸に来た。


「デレ期は近いか」


「はぁ?」


 (にら)まれる。だがその瞳はいつもより優しく見えた。


 しかし、その心地良い空間を引き裂くように部屋の入口から何かが滑り込んでくる。


「まじゅう くも たいぐん むかってる タカ!」


 ゴーレムマンHが必死な様子で羽ばたいていた。


「まさかフランの手先か……!? 早すぎる……! 慎重に動くと読んでいたのを逆手に取られたか……!」


 その時、服から一匹の子蜘蛛(こぐも)が飛び出した。


 心臓が一拍(いっぱく)遅れて動き出す。あのトロールから出てきた蜘蛛か……! 発信器的に使い、俺達の居場所を完璧に特定したようだ。


「どうするの!? ここは放棄(ほうき)するわよね!?」


 キメラが立ち上がる。


 俺は一瞬だけ考えて首を振った。


「いや。まだやらなければならないことがある」


「正気!?」


 俺は彼女に真剣な瞳を向ける。


「正気だ。キミは森で時間を稼いでくれ。ただし、無理はするな。命の危機を感じたら迷わず逃げてくれ」


「……あんたは?」


「俺は罠を張りつつ、必要なタスクを処理する。それが終わったらここを放棄して脱出する」


「その後に……フランを倒すのね?」


「ああ」


 キメラは一瞬だけ、(くちびる)を噛んだ。


「……死なないわよね?」


「当然だ。キメラを置いては死なないよ」


 俺は、いつになく素直に言葉を並べた。


「キミこそ壊されないでくれよ」


「言われなくても。借りは後で返してもらうから」


 彼女は複雑な表情を浮かべながらも少しだけ笑う。


 俺は肯定(こうてい)しつつ、キメラに必要な道具を渡し、なおかつゴーレムマンにも指示を出す。


 (あわ)ただしく準備するゴーレムマン達。彼らにも先に脱出してもらう。貴重な実験体を壊されたくないからな。


 準備が終わり、キメラは(きびす)を返して扉へ向かう。彼女は一度だけ振り返り、口をわずかに開くが、何も言わずに覚悟の瞳を俺に向けて出ていった。


 研究所に残ったのは俺と、迫り来る魔獣の気配だけだった。


 さて実験の時間だ。間に合うかは俺次第。いや、間に合わせてみせる。

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