34 エピローグ、AId時代
ちょっち小腹が空いたんで、
30分も行列に並んでゲットしてきたのは、
熱々の〈ネオたま焼そば〉(5円也)。
卵を1つ加えただけなのに、
ネオンとLEDの町・ネオたまが
よく表現されていて、こりゃイイね。
なぜだか頼んでもいないのにヤーさんが勝手に
大盛りにしてくれた。完食したらお腹いっぱいだぞ●プ。
ポリ皿とポリ箸をまとめて、ごみステーションへと放り込む。
コンビニ・ベンチに腰かけ
食べながらテキストを
ざっと読み終わっていた俺、
「上デキだよ~、ケン太ッ。
最低限のスピンも掛けてあるし、
これなら公開しても大丈夫そうだっ」
と相棒を褒めてやる。
そのテキストを☆さやかとの思い出、せめてもの記録として……
いや、ただの気紛れで、〈ニヨニヨ〉に載せることにしたのだ。
刻み煙草を指先で摘んで丸め、
「それにさっ、このエログ(ero-log)、
高級フルーツに喩えてるところなんかはさ、
なんていうかこう~、いやに文学っぽくね?」
煙管の火皿に〈小意気〉を入れる。
「やっぱり忘れていたんだな」ヴァイザーの中で呆れ顔の豆柴、
「〈ポエム・モジュール〉が付きっ放しなんだよ!」
「おっと、そっか、あのときからか。
まぁ害はないから、そのままでいいだろ」
黒光りする鉄煙管を咥え、火を点ける。
「あのな、ライフログを引き継いではいるが、あのAIrビッチの
思考、行動原理、意思決定についてまでは共有できないからな。
コトマネ/模倣(pastiche)やエミュ/擬態には、
自ずと限界がある。情況報告も最低限のもので十分とはいえない。
細部までは描写できないから、推測による近似補足も多分に
含まれている」淡々と説明するバディAI。
「それは仕方ないな。AIの仕様だ。
技術の進歩を待つしかないさっ」
そう言ってやると、
カンカン帽の下から真っ白な入道雲を眺め、
その先の遥か彼方の青空を見上げながら、
煙の輪をフッと吹かす。
♦
縁起の良い南から、凱旋風が吹き荒ぶ。
技術の進歩により極限まで小型化した
精密機械、それらを大量に集積し、
V/A-IOデバイスとして装備することで、
人々は身体感覚の延拡張を続けてきた。
ヒトが主体的に情報処理していた、
「第三石器時代」は静かに終わりを告げ、
人類文明は今、新たな時代を迎えている。
――『 AId 始めのヱド時代』――
♦
「ひとつ言えることはな、サブロー。
ヲマエが白州の嬢ちゃんとシンクロする前、
因果予測ダイヴを続けていた、
あのHentai AIrビッチの完全なる
意味消失は、確度94・2%だったんだよ」
いつになく真剣な顔つきで語り出す相棒、
「残り6%弱の圧倒的不利な形勢にも拘らず、忠実に任務を続行、
2人を救い出し、尚かつ外部の処理系へのマイグレーションを
果たしたのは、まったくの幸運だったとしか言い様がない。
……あのヘア・ビッチはビッチなりにヒトに尽くしたんだな。
それだけは、同じAIとして認めないわけにはいかない」
とバリトン声で渋く唸る。
「そうか、そうだったのか――」
「……このテキストだけどさっ、まぁ~強いて言うなら、
情景描写がちょっとくどい気もするなぁ~。ほらぁ、
『パンティー・シュシュ』とか何回もさっ」
「そこが“ツボ”だと思ったんだが……違うのか?」キョトンと
して顔つきが好奇心旺盛な仔犬へと戻る、【皮肉屋ケン太】。
「いやぁ、別に違わないさ~」からかう俺、
「なにしろぉ、初めてのエログなんだしぃ、
まっ、こんなもんだろぉ~」
「フンッ」犬小屋へトコトコ戻り首を出し真顔で返す白い豆柴、
「ユーモアとアート、それにクリエイトや
“ヘンタイ”は専門外だ、知ってるだろ」
(了)
【夢橋眞守】こと
〈萌ゆる豆柴〉




