休息日のお出かけ①
「時間通りだな」
「言うてさっき会ったばっかだけどな」
ユイと出かける約束をした翌日。
結局朝食も一緒に摂って、部屋に戻って支度をしてから再度合流。
俺はありふれた綿のシャツとズボンという恰好なので、さしずめ街の住人モブといった所だろう。
対してユイはと言うと、パンツスタイルなのは俺と一緒だが、スキニーのようなピタッとした感じの生地だ。
あとは油断するとボタンが弾け飛びそうなブラウスに、薄手の上着を羽織っている。
全体的に彼女のスタイルの良さが際立つ格好だ。
とにかくブラウスの胸元がパツパツで窮屈そうなのと、めっちゃ足が長い。
あと、普段はポニーテールにしてる髪を下ろしているのはちょっとイメチェンポイントが高い。
そして、しっかりと刀をベルトに差しているのが最高にユイっぽいというか。
さすがに普通の刀1本だけだが、しっかり武装している辺り、意外と治安が悪い場所に行くのかもしれないな。
「私服も似合ってるじゃん。髪も下ろしてると雰囲気が変わるな」
「お褒めに預かり光栄だ。そういう君はとても普通だな」
「あんま服のバリエーションも持ってないし、貯蓄があるわけでもねーからな」
とりあえず、女性の服装を褒めるという目標は達成したので、ユイの案内に従って寮を出た。
外出のやり方を教える、とか言ってたけど、どこかに寄るでもなく、そのまま門の方へと向かっていく。
「外出時は、入口の魔導ゴーレムに学生証を読み込ませるんだ。見ていろ」
口頭で軽く説明した後、ユイは己の学生手帳を門にいる魔導ゴーレムとやらにかざす。
なるほど、あの門番の鎧はゴーレムなのか。
俺が1人で納得していると、どこから野球ボールくらいのドローンのようなものが飛んできて、彼女の学生手帳に光を当てて読み込んでいく。
ものの数秒で読み込みを終えると、今度はユイの眼前にドローンが飛んで行って、彼女の目に光が当たる。
これは網膜でも確認してるんだろうか?
『トウロクガクセイカクニン。ガイシュツキョカ』
機械音声が鳴ったかと思えば、ドローンが門番ゴーレムの方に飛んで行って、その兜の中に入り込んでいった。
なるほど、そこに収まるのね。
「戻ってきた時は学生証を読み込ませるか、魔導ゴーレムに魔力を流して認証させればいい。出る時だけは必ず学生証を読み込ませる必要があるから注意するようにな」
なるほど、俺を連れて来た時は戻りだから魔導ゴーレムに魔力を流して認証させたわけね。
何というか、魔力だとか魔術だとかが暮らしを便利にしてる系の文化っぽいな。
「カイトもやってみるといい。学生手帳が発行されているなら問題無く通れるはずだ」
ユイに促され、俺も自分の手帳をかざしてみた。
すると、先ほどと同じようにドローンが飛んで来て、俺の手帳を読み込んでから、俺の目に光を当ててくる。
こうして実際に光を当てられてみると、意外と眩しくない。
横で見てると結構眩しそうに見えたけど、割と目に優しいな。
『トウロクガクセイカクニン。ガイシュツキョカ』
俺の方も問題無く認証されたので、ユイと一緒に学院の門を潜る。
「とりあえず、あまり金のかからない娯楽を案内しようと思うが、それでいいか?」
「それで頼む。余裕ができたら金策もしたいところだ」
「なら、それも併せて案内するとしよう。知っておいて損は無いだろうからな。まずは狩猟ギルドに行くくぞ」
ユイの案内に従い、商業区を移動していく。
王都というだけあって、早朝でもそれなりに人通りは多い。
ピークタイムになれば、もっと人でごった返すのだろう。
「ここだ。私も狩猟ギルドに登録しているから、話を通しやすいだろう」
案内された先は、王都西門に近い大きな建物。
木材と石を組み合わせて造られた、頑丈そうな建物だ。
大きな入口の上には、これまたデカデカとギルドの紋章が刻まれ、[狩猟ギルド王都ヴァイゼ支部]という看板があった。
案内されるままに大きな入口を潜ると、中は多くの人で賑わっている。
内容としてはよく物語に出てくる酒場とクエストカウンターが併設されているようで、依頼書らしき張り紙がされているクエストボードのようなものも見えるな。
「あっちは狩猟ギルドが運営している酒場兼食堂だ。仕入れ状況でメニューが変わるが、ギルドに登録していれば比較的安めに利用できる。量も結構あるからオススメだぞ。あの紙がたくさん貼ってあるのはギルドからの依頼だな。あっちにあるのが登録や依頼の事務手続きをするカウンター。で、あっちの奥の方にあるのは納品及び買取窓口だ」
ユイが指し示す場所をキョロキョロと見ながら、実際にギルドとか依頼とかっていうのを見ると、ワクワクが大きくなってくる。
今日は運動を禁じられてるから、実際に依頼に行ったりするのは無理だけど、登録くらいはしておきたいかも。
「登録はすぐにできるのか?」
「そうだな。学生手帳もあるから身元も保証されているし、私も口添えをするからそう時間はかからないだろう」
「なら、早速登録しようぜ。案内頼む」
ユイと一緒に、ウッキウキでカウンターの方へ向かう。
すると、奥で事務作業をしていた職員の1人がこちらへ向かってくる。
「いらっしゃいませ。狩猟ギルド王都ヴァイゼ支部へようこそ。初めてのお客様ですか?」
そばかすが特徴の、素朴な感じの受付嬢だ。
ギルドの制服に身を包んでいるが、その豊かな胸元は、窮屈そうに制服を押し上げている。
この世界の女性、みんな胸デカくない?
まあ、俺は眼福だからいいけどさ。
「私はもう登録をしているが、こっちの連れは初めてだ。すまないが登録を頼む。一応、私からの推薦という事にしてくれ」
受付嬢とやり取りをしながら、ユイはズボンのポケットからバッヂのようなものを取り出した。
銀色に輝くそれは、良く見るとこの建物の外で見た、ギルドの紋章だ。
「これは、Bランクハンターの方でしたか。お名前を照合させていただだきますね……ええと、ユイ・イサハラ様でお間違い無いですか?」
「うむ。ユイ・イサハラ本人だ」
受付嬢は、赤外線体温計のような機械を取り出すと、ユイの取り出したバッヂをスキャンした。
すると、しっかりとユイの名前を言い当てた辺り、学院の手帳と同じような仕組みっぽいな。
で、多分バッヂの色とか材質でランクがわかるんだろう。
「それでは、ご登録者様の書類記入をお願いします」
ユイの本人照合が終わってから、受付嬢は1枚の書類を取り出した。
規約やらなんやらがビッシリと書かれているが、要点を拾えばこうだ。
まず身の危険もある仕事なので、怪我等は自己責任となる。
あくまでギルド側に過失がある場合のみ、補償を行う。
常時依頼や公募依頼の達成状況や態度、実力等を加味して適宜ランクの選定を行い、実力に見合わない依頼は受けられない。
ランク詳細について。
F~Sランクまでがあり、実力が飛びぬけている者は特例上位ハンターとする。
ギルドバッヂはランクごとに以下の通り。
Fランク:木製
Eランク:石製
Dランク:鉄製
Cランク:銅製
Bランク:銀製
Aランク:金製
Sランク:白金製
特例上位ハンター:その実力に応じて特殊鉱物によるバッヂを支給
こんな感じか。
というか、ユイのやつ、既にBランクなんだな。
確かに相当強いとは思ったが。
なるほどな、と色々な気付きを得つつ、俺は書類を読みつつ記入を進めていくのだった。




