魔術と魔力に慣れよう②
こちらはかなり久々の更新になりました。
なるべく週1~2回は更新したい所存。
「それじゃ、今日は戦技について学ぼっか」
ティナから散々にしごかれた翌日。
戦技なる聞き慣れない単語が出てきた。
「戦技っていうのは、魔力を籠めて攻撃の威力を上げたり、色々とあるんだけど……まあカイトには見てもらった方が早いかな」
俺には原理を語るよりも見せた方が早いのは間違い無いな。
どのみち難しい話はわからんし。
何を見せてくれるのだろう、と注目していると、ティナは無詠唱の創造魔術で岩の塊を生み出して、腰の剣を抜く。
「ふっ!」
彼女が裂帛の気合いで岩の塊を袈裟懸けに斬り付ければ、その一撃は見事に岩の塊を斬り裂き、一筋の傷を深々と刻み込んだ。
無駄の無い一撃は、岩の塊にヒビを入れる事無く、斬撃の軌跡のみが刻まれている。
剣自体の斬れ味もあるんだろうけど、ティナの技量の高さがよくわかる一撃だった。
「ま、普通に斬るとこんな感じだね」
解説をしつつ、岩の塊を復元すると、彼女は再び剣を構える。
「斬撃!」
先の一撃と全く同じ軌道の斬撃は、岩の塊を真っ二つに斬り裂く。
少し遅れて袈裟懸けに斬られた岩の塊が、床に落ちて大きな音を立てる。
「とまあ、こんな感じで戦技を使うと同じ一撃でも威力が全然違う。魔術に適正が無くても、魔力を用いて戦う術でもある。まあ、ある意味では魔術と言えるかもしれないけどね」
役目を終えた岩の塊が、魔力の燐光となって消えていく中、俺は興奮を隠しきれなかった。
まさしく、こういうのを求めてたんだよ俺は!
「戦技っていうのは奥が深くて、感覚さえ掴めればいくらでも自分だけの戦技を作れるんだ。さっきの斬撃は剣技の基礎中の基礎って言われるけど、それも過去に誰かが生み出したはずなんだよね。それが弟子とか色々な方向に伝わって、基礎になって、それを発展させていったのが今の戦技の形だって言われてるけど……こういう話はあんまり興味無さそうだね」
俺が早く戦技を覚えたい、という感じの表情をしていたのがわかったのか、ティナは苦笑いを浮かべて肩を竦める。
戦技の歴史なんて聞いてた所で眠くなるだけだ。
それならサッサと試したくなるのが男の子なんだよなあ。
「で、どうやれば戦技になるんだ?」
「理屈で言うなら、攻撃なり防御なり、何かしらの行動に魔力を籠めるだけだね。とは言っても、魔力の籠め方は人それぞれだし、その辺りはカイト自身で掴んでもらうしかないよ」
とりあえず、練習あるのみって事だな。
細かい理屈はわからんが、それだけは理解できた。
俺の中でのイメージとしては、テ〇ルズの術技みたいな感じだと思ってるけど、それで合ってるんだろうか?
まあ、とりあえず基礎だって言ってたから、斬撃を覚えてみるかな。
ちょうど剣も持ってるわけだし。
まずは魔力を籠める感覚を掴む必要もあるし、色々試しながら素振りでもするか。
「的はいる?」
おもむろに素振りを始めた俺に向かって、ティナが声をかけてきたが、まだ的に打ち込みをするまでにはなっていないと思い、無言で首を横に振る。
同じ型での斬撃を繰り返しながら、魔力を籠める感覚、戦技を使った時の感覚をイメージしながら何度も剣を振っていく。
夢中で幾度も剣を振るうち、じんわりと汗をかき始めていたが、気にせずに練習を続ける。
「……イメージがハッキリしないな」
どのくらい素振りをしていたか不明だが、俺は1度素振りを中断した。
俺の練習の様子を見ていたティナが、不思議そうに首を傾げる。
原理は何となくわかるし、理解はしてると思う。
でも、それを自分の身体で置き換えられていないというか。
要するに、ヒーロー物でいう必殺技の括りのはずだ。
某光の巨人でいう光線技で、某ライダーでいうライダーキックやそれに準ずるもの。
何かしらイメージをしやすいタイプのヒーローは?
こちらの世界に来るまでに見た、ヒーロー作品を次々と思い浮かべては、自分の身体に置き換えてイメージしやすいものを探っていく。
光の巨人系の光線技なんかは魔術に近い気もするが……いや、〇オキックや〇ンドスライサーは戦技っぽいな。
あとは……そうだ。
〇55の〇クシードチャージの描写はそれっぽい。
魔力の中心から、該当部分へと魔力を移動させ、チャージする。
そんなイメージか。
よし、これならいける気がする。
「すぅー……はぁ……」
深呼吸して、体内の魔力の流れを意識。
心臓辺りの魔力の中心部から、右腕を伝って剣へと魔力を流していく。
魔力を臨界まで高め、剣を振るう。
「斬撃!」
大きく力と魔力を籠めた一撃を振るい、成功の手応えを感じた。
が、振り抜いた直後、剣からベキン、と不吉な音が……。
「折れたああああ!」
恐る恐る右手に握った剣に視線を移せば、頑丈そうだったはずの肉厚の剣が、無残にも根本から折れている。
まだ買って1ヵ月も経ってないのに!
自分で金出したわけじゃないだけに、弁償しろとか言われたらマズイ。
「……本当にカイトは色々と規格外だね。戦技から一足飛びに魔戦技まで行くなんて、驚かされるばっかり」
ティナはと言えば、微笑ましい表情で俺を見ているが、心情的にはそれどころじゃないんだよなと。
「その剣じゃ、カイトの魔力に耐えられなかったんだろうね。物理的には頑丈な作りだったみたいだけど……まあ、こればっかりはカイトの魔力が規格外というか、殆ど無限っぽいからしょうがない。多分、カイトの場合はその魔力に耐える武器を作るよりかは、自分の創造魔術で用意した方が安定すると思うよ」
「それはいいんだけど、この剣、スプリアが出してくれた費用で買った物なんだよ。弁償とか言われないか?」
「カイトの魔力量を考えたら市販の武器じゃ遅かれ早かれだったろうし、それについては私からもスプリアに言っておくから、心配しないで大丈夫」
ああ、ティナの心遣いが染みるぜ……。
これで弁償は免れるだろう。
多分な。
スプリアの普段の感じ見てると、ティナにはやたらと甘いっぽいし。
「さて、それじゃ自分の魔力に耐えるように創造魔術の精度を上げないとね」
弁償は免れた、と安堵したのも束の間。
少しばかりSっ気のある笑顔でこちらを見るティナ。
ああ、これはきっと鍛え甲斐がある、という感じの視線なんだろうな。
ここ数日のティナの鍛え方から、この先の展開が読めた俺は、思わず天を仰ぐのだった。
この後、スパルタで創造魔術の精度上げをさせられるカイト。
一方その頃、スプリアとシオンはマッドな会話を繰り広げながら、シオンの肉体再生について試行錯誤してるのでした。




