古き者の監視者⑤
長らくお待たせしました……!
忙しかったり色々で更新だいぶ滞ってました!(土下座)
「それじゃ、くれぐれもよろしく頼んだ。間違っても壊すなよ? というかシオンに何かあってみろ。その時は全力でぶっ殺すからな」
「わかったわよ。そんなに威圧しなくたって真面目にやるわ」
遺骸核の性能お披露目の翌日。
俺はスプリアに遺骸核を託し、ティナと一緒に学院長室を後にした。
俺の方は俺の方でやる事があるからだ。
「それじゃ、今日は魔力と適正魔術の測定、それから魔術の使い方についてやっていこうか」
ティナは昨日と同じ建物に俺を連れ込んで、同じように中から魔術で空間を隔離。
聞いてみれば、何かトラブルがあっても大丈夫なように対策しているだけで、別に俺の存在を隠すとか、そういう意味は無いそうな。
確かに、建物自体が破損したりすると修繕とかが面倒そうだし、そんなもんか。
「測定を始めるけど、何か質問はある?」
「道具とかが無さそうだけど、どうやって測るんだ?」
測定云々と言われれば、測定器具のような物を使うのが定番だと思ってた。
ラノベとかでは水晶玉だとか、測定用の道具がある事が殆どだったが。
「使ってもいいけど、私が直接確認した方が手っ取り早いしね。カイトみたいなタイプの人は、道具が対応してなくて壊れる、なんて事もあるだろうし」
ちょっと失礼、とティナは俺の心臓の辺りに右の手の平を当てる。
少しずつ、何かを吸い取られているような感覚を覚えながらも、俺は身を委ねた。
どうせ魔力が云々という理屈はわからんしな。
「属性適正は……無いね。無属性」
属性適正、という文言からして、火とか水とかの属性の適正が無い、という事らしい。
まあ、どう考えても俺に知力なんて存在しねーしな……。
どちらかというと、魔術だとかそういうのは、相棒の方が向いてそうだ。
「魔力そのものは……相当あるね。総量がどれだけあるか、わからない」
目を閉じて集中していたティナが、驚きに目を見開く。
まあ、神様らしい存在が人間の魔力総量を測れないとなると、驚きもする……か?
「それってすげーの?」
魔術というものが存在する世界である事は理解していたが、細かい理屈がどうこうってのはサッパリだ。
ゆえに、何がすごくて何がすごくないのかなんて、わかりゃしない。
「とてもすごいね。スプリアですら、限界はある。それを私は測定できる。でも、それができないから……ものすごくとてつもない量の魔力があるのか、もしくは無限、なのかも」
俺の心臓に触れていた手を放し、腕を組んで考える仕草をするティナ。
ご立派な胸部装甲が強調されて、眼福である。
「結局の所、俺は魔術を使えるのか? 魔力とやらがあっても、適正が無いんじゃ使い物になんねーと思うが」
中途半端に期待を持たせるくらいなら、いっそ才能無いよお前ってスッパリ言ってくれた方が、期待しなくて済む。
いかに憧れがあっても、才能が無ければどうにもならんわけだし。
「焦らない焦らない。まだ魔術適正が無いなんて言ってないでしょ」
若干捨て鉢気味の俺を見て、ティナは苦笑いをしながら腕組みを解く。
あっ、せっかくの眼福タイムが……。
「魔術適正はちゃんとあったよ。創造魔術。それがカイトにある魔術の適性」
そうぞう、まじゅつ?
耳慣れない単語に、俺は首を傾げてしまう。
座学は苦手なんだよなあ。
「ま、これは見てもらった方が早いかな」
そう言って、ティナは右手の平を上に向けた状態で俺に見える位置へ。
すると、僅かな燐光が弾け、彼女の右手の上には、小さな木の球が。
いきなり何も無い所から、木の球が出てきた……?
「これは、私の魔力で作った木の球。形を失えば、魔力に戻る」
俺が顔を近づけてまじまじと木の球を観察していると、ティナは生み出した木の球を握り潰す。
すると、木片になるのではなく、魔力と思われる燐光となって消えていった。
再度ティナが右手を開くと、その手には木の粉も欠片も存在しない。
「魔力に形を与えて、一時的に固定する。それが創造魔術だよ。例えば、こんな事もできる」
ティナが右手を頭上に掲げると、その手に簡素な剣が姿を現す。
そして、それを胸の前に移動させると、僅かな燐光と共に形状を変化させ、1本のナイフへと変えた。
1度生み出した物でも、形を変える事ができるのか。
上手く扱えれば、応用が効きそうだ。
「俺にも同じ事ができる、のか?」
「努力次第でね」
まあ、さすがに無料で使えるほど生易しくはないか。
とはいえ、ティナが見せてくれたのは、まだできる事の一端なんだろうけど、俺に魔術を使うという希望が残されていたのは、シンプルに嬉しい。
「それじゃ、まずは魔力を動かす事に慣れてみようか。いくら大量に魔力があっても、操れないんじゃ意味が無いからね」
それから、ティナの魔術講座が始まったのだが……。
俺の魔術の習得は、初歩中の初歩で躓いてしまった。
自分の魔力を操る。
字面では簡単だが、今まで魔力なんてものに触れた事の無い俺からすると、まるで空気を掴むかのような話だ。
クソ、こんな所で躓くなんて……。
「……まあ、魔術に馴染みの無い世界から来たんだし、初日なんてこんなもんでしょ。時間ならあるから、焦らずにゆっくりやろう。ほら、根を詰めすぎても上手くいかないだろうし、とりあえずお昼にしよ?」
四つん這いになって絶望していたら、そういえば腹が減ったな、と頭を上げる。
どうやら、夢中で練習するあまり、いつの間にか昼になっていたらしい。
「スプリアから食堂の使用許可が下りてるから。案内するよ」
ティナに連れられ、俺は訓練所から学院の校舎脇にある建物へ。
結構な大きさの建物だ、と思っていたら、どうやらここは学生寮らしい。
男女様々な学生が、皆一様に同じ制服を纏い、思い思いに過ごしている。
どうやら、寮の食堂を利用する、という事のようだ。
一緒に食事……実質これってデートでは?
そんな考えに至った俺は、午前中の精神的な落ち込みなど忘れて、ティナとの昼食を楽しんだのだった。
なお、ティナはいつの間にか制服姿になっていて、ごく当たり前に学生たちの中に紛れていた模様。
きっと、これも魔術によるものなのだろう、と後々に考えたが、当然今はそんな思考に至るはずもなく。
ともあれ、ティナとの楽しい昼食デートを楽しんだのだった。
しれっとイチャイチャ(本人のみ)してるつもりのカイトくん。
当然、ティナ側は何にも思ってません。




