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四十六億年の物語——星生まれの細胞は、宇宙を奏でる  作者: 位面の行者
太古の海

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第83章 暗夜の虫の群れ

これはじつに奇妙だ。小さいやつが大きいやつの攻撃を防ぐとは? リンも海のなかで、ごく少数の生物のあいだに、似たような協力戦闘を見たことがあるだけだ。


単細胞どうしの協力ならきわめてよくあることだが、多細胞での協力は実にまれだった。たいていの多細胞生物は繁殖期以外には出会うことさえなかったのに、思いもよらぬことに、陸の上にもこれほど協力し合う生物がおり、しかも尖柱林はやつらが作った可能性がある。


植物を栽培し、しかも互いに連携して戦える種族なのか……


このことを、リンは思わず――自分自身と重ね合わせていた。


リンはやつらを「アステカ虫」と名づけようと思った。


ん? なんだか知らず知らず、妙に奇怪な名まえを思いついてしまった。何か特別な意味があるようでもあるな。


今や、小さな虫はみな大きな虫の体の上に這い上がっていた。たとえリンの提灯に照らされようとも、やつらは逃げ出さない。こうなると、小さいやつらが護衛となり、大型のアステカ虫が、強力な噛みつき力の巨大な牙でリンの突刺者を一匹また一匹と噛み砕いて粉々にする役目を負っていた。


リヴァイアサンの炸裂弾がひとたび射出されれば、すぐに小さなやつが跳ね起きて防いだ。アステカ虫には眼がない。どうやらやつらには、かなり強力な他の知覚能力が備わっているらしい。


だが、リヴァイアサンの砲撃はその一種だけではなかった。やつには「散弾」と呼べる攻撃法もあったのだ。


再び体内に吸い込んだ空気を一つに圧縮し、かなりの数の小さな炸裂弾を準備し終える。大虫が次の突刺者を噛み砕くより前に、リヴァイアサンは猛然と砲口を開け放ち、炸裂弾どもを一気に傾け出させた!


百発以上もの溶解液を満たした炸裂弾が、大虫の体躯めがけて飛んでいく。その頭頂にいた一匹の小さな虫がただちに跳ね起き、小さな体躯をその巨大な頭の前に晒した。


しかし、そいつが防げたのは少数だけだった。まだ大半の炸裂弾は大虫の身に打ち当たり、リンは今、溶解液が甲羅を分解するあの特別なシューシューという音を聞くことができた。


提灯の光の下で、リンはさらにはっきりと、大虫の烏黒い甲殻の上に多くの小さな穴が現れるのを目の当たりにした。どれもみな炸裂弾によって溶かし開けられたものだ。


海水には腐食性の成分が多く含まれているため、海の生物の甲羅には一般に防食効果があるが、陸の生物には明らかになかった。


「ウウー……」大虫が重く低い咆哮を上げ、絶えず後方へと退いていく。リンはそいつの体の上のあの小さな虫たちが、いつしか苔蘚を咥えてきて、その苔蘚を大虫の傷口に塗りつけているのに気づいた。


あの苔蘚は有毒なのではなかったか? おそらくやつらには無毒なのだろう。それにしても、治療までするとは? まったくもって奇抜な生物だ。


そう言ってはみたものの、リンに容赦はなかった。さらにもう一発の散弾を大虫に打ち込み、そいつを治療していた小さな虫どもをすべて打ち据える。大虫の傷だらけの体躯が露わになったとき、リンは再び突刺者を前へと進ませた。


突刺者の棘の一部は射出できるもので、しかもこの種の棘は先端に開口部があり、内部は毒液で満たされていた。


突刺者は大虫の体の傷口を狙い、これらの毒針を噴き出させる。あたりの風向きを計算することで、リンは百発百中の命中率をなしえた。


大虫の傷口に毒針が命中し、やつはもはや立ち続けられず、轟然と地面に倒れ伏した。


勝ったのか?


小さな虫たちが鋭い叫び声を上げた。やつらは倒れた大虫を取り囲み、キーキーと鳴き騒ぎ、立ち去ろうとはしなかった。だが、攻撃してくる気配もなかった。


やつらは何をしているのか?


リンはこれらの生物の行動にますます好奇心を募らせた。群居生物は単独のものとはたしかに異なっており、かなり多くの奇妙な振る舞いをするものだ。


「ブーン……」


小さな虫たちの鳴き声とともに、天空に一種の奇妙な音が響きわたった。どうやら……多くの生物が空を飛んでいる。


蜻蜓か? いや……あれは……


リヴァイアサンが提灯を空へと向けたとき、リンは不可思議なことを目の当たりにした。十センチほどの小さな飛翔虫が、いつしかリヴァイアサンの上空を埋め尽くしていた。その数はかなり膨大だが、最も奇抜なのは、やつらがアステカ虫と寸分違わぬ姿かたちをしていながら、ただ背中に、蜻蜓とよく似た二枚の翼を余分に生やしていることだった。


これらの飛行生物もアステカ虫なのか?!


分業による協力……リンはこれまで単細胞以外の生物で、こうした状況が現れるのを見たことがなかった。一般に多細胞生物にはせいぜい雌雄の別があるだけだったが、雌雄といっても実際には大した違いはなく、ただ放出する生殖細胞のかたちが異なるだけだった。


ところがこれらの「アステカ虫」にはすでに三種が現れていた。見かけはよく似ているが、大きさ、あるいは行動の様式がまったく異なり、何よりもいちばん肝心なのは、みな連携して作戦することだった。


これらの生物は、やはりリンによく似ている!


飛虫は空中を飛び回り、やつらは躍りかかってきて攻めることはせず、尾部から何かの液体を噴き出した。それらの液体がリヴァイアサンの甲羅に滴り落ちると、リンは甲羅から一筋の青い煙が立ち昇るのを目にすることができた。


溶解液だ……


それも、リンの見たことのない溶解液だった。防食被膜もまた、溶解液の種類に照準を合わせて製造されたもので、構造成分も甲質物の一種だ。出会ったことのない溶解液に対しては、効果が現れない場合が生じる。


「ボンッ」


リヴァイアサンが空へ向けて大きな散弾の束を打ち出した。これらの虫は体が小さすぎ、一つ二つも当たればそれで致命傷だった。多くの飛虫がそれによって墜ちていったが、すぐにまたさらに多くの飛虫がその位置に補充された。


数が多すぎる。いたるところやつらの翅音で満たされていた。静かな蜻蜓とは違い、これらの飛虫は特別にやかましかった。ただ提灯の光だけでは、リンにはやつらのごく一部しか照らし出せなかった。


溶解液は絶え間なく空から大量に滴り落ちてきて、それが与える損傷は実のところごく小さかった。リンはやつらがリヴァイアサンの鎧を溶かし貫くよりも前に、一種の新しい防食甲質物を組み合わせることができる。


だがそのとき、リンは再びあの重々しい足音を耳にした……


またあの大虫か? しかも……数が二匹だとは?


撤退せねばならない。


リンの提灯が、異なる方角から包囲してくる二匹の大虫を照らし出したとき、リンはこの決断を下すほかなかった。大虫の純粋な力による噛みつき力には、抗しきれる自信がほとんどなかった。


リヴァイアサンは向きを変えて撤退を開始した。残った突刺者たちも散開して走り出す。リンは二頭の巨虫がどちらもリヴァイアサンを追いかけてくるのに気づいた。一方、小さな虫と飛虫は散り散りになって、それぞれあらゆる逃走目標を追いかける。


巨虫の速度はリヴァイアサンよりいくぶん遅い。おそらく体が重すぎるためだろう。それならば……


リヴァイアサンは背後に構えた砲口を大虫に狙い定め、猛然と大量の散弾を爆き出した。しかしこのとき、状況はいくぶん異なった。


無数の飛虫が大虫の目の前へと突っ込んでくる。やつらの数は膨大で、ほとんどすべての炸裂弾を完璧に阻止することができ、リンの攻撃をまったく無効にしてしまった。


この一瞬、リンはほとんど、自分自身と戦っているかのような感覚を覚えた。これらの奇妙な生物は、いったいどうやって進化してきたのか?


今、それを考えている時ではないようだ。


飛虫どもが大量の溶解液を射出し、リヴァイアサンの最外層の甲羅は腐食されて穴ぼこだらけになった。しかし、リンはすでに内部に一層の新しい防食甲質物を製造し終えていた。リンにはこの層の殻で飛虫の腐食攻撃に抗する自信があった。


そして大虫もリヴァイアサンには追いつけない。こうなれば、リンが逃げおおせるのは時間の問題だった。その時こそ、もっと強大な部隊を造り出して雌雄を決しよう。


前方に、一列に整然と並んだ尖柱が、リンの提灯の光のなかに現れた。あれこそが尖柱林の出口だった。もっと前方へ歩けば、海岸の絶壁前の岩地にたどり着ける。


今はただ、あそこへ向かって走るしかなかった。水のない砂漠へ向かうよりは、リンは海水が温度を取り戻しているかどうかに一か八か賭けてみたかった。


リヴァイアサンはためらいなく尖柱の壁を突き抜け、開けた岩地の上へと出た。


ここはいたるところ魚の骸骨だらけだった。その肉はとっくに蠍か他の生物に食い尽くされている。リヴァイアサンは何匹かの肉鰭魚の骨格を打ち当たって押し倒し、絶壁へとまっすぐに突き進む。


アステカ虫の群れもまた、ぴたりと背後に迫りくる。やつらは最初の夜のように、少し追ってあきらめることはなく、最後まで追いすがってきた。


追撃が岩地の中ほどまで差し掛かったとき、地面からはゴロゴロという音が伝わってきた。何か途方もなく巨大なものが地底から這い出してこようとしているかのように、岩地全体が震えはじめる。


ミストワームだ……


このとき、傍らから突然「ドン」という音がして、リヴァイアサンが提灯をその方角へと向けると、一頭の巨大な蠕虫が地面から岩を突き破って飛び出し、逆鉤の歯の生え揃った巨大な口を開けて、一匹の大型のアステカ虫の体に噛みつき、それを引きずって戻っていくところだった。


ついさっきの一瞬、リンは蠕虫までもアステカ虫の仲間かと思った。どうやら違うようだ。


だが、リンがまだ安心しきらぬうちに、リヴァイアサンの目の前の地面もまた突然、爆ぜ割れ、一頭の巨大な蠕虫がそこから飛び出し、真正面から巨大な口を開けてリヴァイアサンに噛みつきかかってきた。


不味い! これは避けられそうにない!


危急のとき、リンは突然、一つの方案を考えついた。それでリンはリヴァイアサンを止めさせも、回避させもせず、蠕虫の巨大な口のなかへまっすぐに突っ込ませた!

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