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四十六億年の物語——星生まれの細胞は、宇宙を奏でる  作者: 位面の行者
太古の海

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第80章 這い寄るものと飛ぶもの

目の前に現れた生物は、太く頑丈な四肢を生やし、全体としてはよく蠑螈イモリに似ていた。しかし体表は魚類にも似た鱗の層で覆われ、わずかに開いた口からは内部に数多の鋭い歯があるのが見てとれる。


「爬行類」?


リンの思念のなかにその言葉が浮かんだ。この名まえ、なんだかひどく面白味に欠けるな。這い回る生物ならかくもたくさんいるのに、なぜこいつだけが爬行類なのか?


この爬行類は見るからにひどく凶暴そうだったが、その大きさはリンをがっかりさせた。全長がわずか三十センチほどしかなく、しかもそれは胴体とほぼ同じ長さの尾を含めての話だった。


爬行類は水溜りに近づこうとはせず、ただ遠くからじっとリヴァイアサンをうかがっていた。リンがほんの少し触手を動かしただけで、そいつは瞬時に向きを変えて逃げ出した。


逃げるつもりか?


リンは大型の生物だけを攻撃するつもりはなかった。小さなものも同じく逃がさない。ここの生物を、一種につき少なくとも一遍は殺し尽くし、自らの地位を確立するつもりだった。


リヴァイアサンが一種の兵種を放つ。大きさはやはり三十センチで、これは実験的な兵種だった。水のなかでの放水系統に比べて、リンはこいつに多方向への噴気の系統を搭載していた。それは頭部から大量の空気を吸い込み、体内で筋肉を使って圧搾し、圧縮し終えた空気を噴孔から噴き出させるもので、六本の節足が走行を補助する。


この系統はリンが少なからぬ計算を重ねたもので、自ら、すでにかなり完璧に仕上げたと思い込んでいた。


だが、結局のところ速く走れるかどうかは、まだわからなかった。


これが新たな突撃者だ。かつてのものと同じく、頭部には逆鉤のぎっしり生えた錐形の角があって、相手を刺し貫く。


リンは突撃者を地面に置いた。そいつの系統が瞬時に作動し、猛然と飛び出していった!


なかなか速いな。


リンは突撃者の視界に注目していた。周囲の尖柱はどれもがきわめて速い速度で背後へと退いていく。ついさっき逃げ出したあの爬行類が、すでに突撃者の眼前に現れていた。


爬行類が頭をめぐらせて一目見て、四肢を加速させて振り動かしながら走り去る。しかし、リンの突撃者もあいかわらずその後ろにぴたりと張りつき、噴気系統によって爬行類へとますます近づいていった。爬行類のあの鱗が突撃者の錐形の角を防げるとは、リンには思えなかった。追いつきさえすれば、簡単にそれを突き通せる。


突撃者の速度はますます速くなり、リンはほとんど水中を突進しているかのように感じた。そして標的にまさに近づこうかという瞬間、突然、爬行類が猛然と尾を振り、左方へと走り込んで、二本の尖柱のあいだの隙間へと逃げ込んだ。


リンはただちに左へと突撃者の胴をひねり、尾部の噴口を閉じると同時に、胴体右側の噴口を開けて気流を噴き出させ、突き出しすぎた体を止めにかかった。方向転換に成功すると、再び尾部の噴口を開け、さらに爬行類を追い続ける。


距離はわずかに開いてしまった。この方式での方向転換は、速度が速すぎて余分に飛び出してしまう距離を最大限度まで抑えられるが、完全に脚だけで走る場合の柔軟さに比べれば、まだほんのわずかに劣る。


とはいえ、この程度の距離はないも同然だった。突撃者はすぐさま、疾走する爬行類へと再び近づいていく。


林のあいだの追跡のなかで、爬行類はまたもや数度、向きを変えた。しかし突撃者の方向転換の動作は、そのたびごとに前回よりもさらに鮮やかになり、リンは爬行類がいつどのように向きを変えるかまで予測できるほどになった。


ついに、爬行類は袋小路へと逃げ込んだ。そいつの目の前には三本の、ぴったりと寄り添った尖柱があり、後方からは突撃者が猛然と突っ込んでくる……


爬行類に反応する暇はなかった。突撃者の錐形の角が、そいつの背中の鱗甲を突き破り、角の尖端が爬行類の胸のあたりを貫き出た。


爬行類はすでに藻掻くのをやめている。しかし、突撃者本体にはものを食べる能力がなかった。リヴァイアサンが殺した場所まで歩いていく必要がある。


これではどうも具合が悪い。今回こそ爬行類はあたりをうろついていただけであまり遠くへは走らなかったからよかったが、もしあまりに遠くへ走られれば、せっかく追いつめた獲物を奪われるかもしれない。


突撃者にも餌を消化する構造を搭載せねばならないな。


リヴァイアサンは殺した場所まで歩いていき、収集者を放ってその爬行類を分解させた。


爬行類の身の上の器官は蠑螈イモリとよく似ていた。この生物はおそらく蠑螈から進化してきたものなのだろう。やつらは比較的硬い鱗甲で皮膚からの水漏れを防いでいるが、体内には一種の新しい面白い器官があった。気嚢のようなもので、何本かの管が頭部の小孔へとつながっており、収縮することで酸素を吸収できる。


これはどうやら「肺」と呼ばれるものらしい。


リンの気嚢にも収縮する能力はあるが、これほど複雑ではない。「肺」の内部にはなお多くの網状の構造があり、どんな作用があるのかはわからなかった。


この種の器官は大量の酸素を吸収するのに適している。しかし今は酸素がきわめて豊かだから、あまり役に立つとは思えなかった。


爬行類を食い尽くすと、リンは突撃者と収集者を回収し、引き続き適当に方角を選んで歩いていった。


この次は、いったいどんな生物に出会うのだろう? 何に出会おうとも、たとえ以前のあの蠕虫であろうとも、リンは戦いの準備を整えていた。ただし、結局のところ勝利できるかどうかは、本当に打ち合ってみなければわからなかった。


リヴァイアサンは尖柱の林のなかをゆったりと歩いていった。ここの気温は一向に涼しかったが、リンは今、一陣の熱い波が突然襲いかかってくるのを感じた。それは気流に乗ってこの林の一帯を吹き抜け、あたりの温度をいっぺんに上げたではないか?


まさか海洋の温度上昇がここにまで影響したのか?……違う、この熱い流れは海とは逆の方角から来ている。


リヴァイアサンは素早く、熱い風の吹いてきた方角へと歩いていった。一列に並んだ尖柱の作る柱の壁を抜けた後、リンは一面の広広とした区域へと出た。


リンの視界のうちには、見渡すかぎりの黄色い砂があった。ここは、まるで一億年前の陸地と同じだった……水はなく、生物はなく、ただ風に舞う砂礫と、果てしない荒漠があるだけだった……


こうして見ると、尖柱の林の範囲はさほど大きくはない。植物はより深い陸地へまでは伸び広がっていないのか? おそらく霧があまり遠くまで漂えないのか、あるいは他の何らかの理由があるのだろう。


リンは背後を振り返った。あの一列に並んだ尖柱が、一枚の巨大な壁のように砂漠と尖柱の林とを切り分けている。このことは、リンをして再び、これらの尖柱はあるいは普通の石ではないのではないかと疑わせるに十分だった。


リンはいくらか惜しい気がした。もともとは生物の溢れる陸地を目にできると思い込んでいたのに、いくらも経たぬうちに再び一億年前の光景を目の当たりにするとは……


リヴァイアサンがまさに向きを変えて立ち去ろうとしたとき、一つの音が突然、リンの思念のなかへと伝わってきた。


眼球触手が音の方角へと向く。尖柱の林の上を、突然、二匹の生物が飛び過ぎていった。やつらはきわめて速い速度で砂漠へと飛んでいく。


飛ぶ生物だ!


リンはただちに突撃者を放った。リヴァイアサンの速度ではこれらの生物に追いつけないが、突撃者なら明らかに可能だった。それはきわめて速い速度でこれら二匹の生物を追尾し、一方リヴァイアサンは後方で比較的遅い速度でそれを追った。


高速移動のなかで環境をはっきりと見るために、突撃者の眼球もまた特別に改造されていた。瞬間のうちにかなり多くの画像を捕えられ、それは空中にいる二匹の生物の形態をはっきりと見ることができた。


これら二匹の生物は体が細長く、全長は一メートルあまりあった。比較的太い胸部には三対の節足が生え、頭部の眼球はかなり大きい。そして最も目立つのは、やつらの胴体の両側に全部で四枚ある、透明で扁平な長い構造物だった。やつらはどうやらこれを使って飛行しているらしく、水母とはいくらか違っていた。


これらの生物には「巨脈蜻蜓」という名まえがあった。なかなか悪くない名まえに思える。「爬行類」などよりはずっと格好いい。


突撃者は蜻蜓を追尾しながら、やつらの構造を研究していった。リンはすでに、みずから製造してみようという考えを抱いていた。必ずしもやつらを捕まえなくともいいのだ。


リンはまた、やつらがどこへ飛んでいくのかを見るのにも大いに興味を持っていた。これらの生物はずっと空のなかで生活しているのか? それとも地面に降り立つのか? 海の生物には、海底に決して近づかない種がかなり多くいるが。


突撃者は巨脈蜻蜓を追って砂漠のなかをしばらく走り、一道の砂丘を乗り越えた後、リンはやつらの標的を目の当たりにした。


あれは……


砂丘の下方に、小さくない砂の窪みがあった。そこにはかなりの数の蜻蜓が群がっており、そして砂の窪みの中心に、一匹の巨大な姿の生物がいた。


その生物は見たところいくぶんブロントスコルピオに似ていた。前肢は鋏で、さらに八本の節足の脚があったが、体は大きく、全長が三メートルあまりもあり、しかも尾部には曲がった鉤がなかった。そいつの身の上の甲羅は、どうやら何かにやられたらしく裂け目でいっぱいだった。あの巨脈蜻蜓たちはそのそばを飛び回り、時おり急降下してその甲羅の裂け目を攻撃し、なかから流れ出る血液をむさぼり食っている。


リンはさしあたり、そいつを「砂漠蠍」と呼ぶことにした。砂漠蠍は鋏を振り回しているが、あの速度のきわめて速い蜻蜓どもを捕まえられない。このままいけば、確実に死ぬ運命だった。

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