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四十六億年の物語——星生まれの細胞は、宇宙を奏でる  作者: 位面の行者
太古の海

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第72章 終末への秒読み

暗い星明かりの下、リヴァイアサンは陸地へとますます近づいていった。だが、高さ数十メートルにも及ぶ岩の峭壁が、リンと陸地とを隔てており、陸上のあの異様な巨大な尖りが一体何なのかを、リンには見極められずにいた。


岩なのか? しかし尖りにはさらに小さな枝分かれがある。岩にこんな奇抜な構造ができるはずはない。


まさか……生物だというのか?


リンは興味を持ったが、この峭壁をリヴァイアサンが這い登ることはできなかった。


まあいい。いずれ峭壁に沿って泳げば、陸に上がれる場所は見つかるだろう。


リンはさほど気に留めず、リヴァイアサンに基地の種を下ろさせた。もしこの陸地にも問題があれば、そのときは災厄に正面から立ち向かうしかない。


さほど期待はしていなかった。だが、リンの基地の種が陸の岩壁に触れたとき、そこには何の異常もなかった……


この陸地には……異常反応がない?


なるほど、道理で、北は安全だという感覚があったわけか……


あの感覚が何なのかはわからないが、どうやら大いに助かったらしい。今すぐ、輸送者たちを急ぎここへ泳がせねばならない。


時間が足りるかどうかはわからない。リヴァイアサンがここに来るまでには百昼夜以上もかかった。しかも輸送者の速度はリヴァイアサンほど速くはない。だが、やつらは今、海の中にいるのだから、陸地の災変の影響は受けないはずだ。


リンはリヴァイアサンを峭壁の下に停めさせ、あの大群の輸送者の指揮に専念しはじめた。


それと同時に、リンはもともと自分のいた拠点、「東の大陸」と「西の大陸」の観察眼にも注意を向けた。今や、災厄が迫る光景はすでに眼前に展開していた。


災厄に近づく三十昼夜のうちに、多くの生物が去りはじめていた。まずはサメをはじめとする嗅覚と触覚の比較的発達した魚類、ついで甲冑魚の類。しかし、九昼夜まで迫ると、水母クラゲやヒトデでさえも去っていき、残ったのは移動できない珊瑚や海藻といった生物ばかりだった……


無論、やつらも座して死を待つだけではない。珊瑚は繁殖期でもないのに異常なほど大量の卵を放出し、水流に乗せて遠くへと流し去らせる。


どの生物も多かれ少なかれ、地の深みの異常な波動を感じ取る能力を備えている。なにしろやつらの知覚能力は、競争と殺戮、そして無数の災厄のなかで絶え間なく進化を遂げてきたのだ。そして今、これらの生物もまた、逃亡の旅路に加わった。


リンは、やつらがどこへ泳いでいくのかを見ることに大いに興味を持った。リン自身はより早く予知できたものの、逃避行の路線に関してはまったく見当がつかなかった。だが、他の生物は常に安全な地へと泳ぎ着くことができるのだ。


リンは今ではもう目的地を持ってはいたが、それでもなお多くの眼球を他の逃亡生物の後へと追従させた。


リンは、多くの生物が自分と同じ方向へと泳いでいるのを知った。たとえば甲冑魚で、やつらはその大半がリンの輸送者の隊列に混じり込んでいる。数はおそらく数万にのぼり、それ以外にもかなり多くの肉鰭魚の類がいる。やつらはリンと同じ方向を選んだが、他の多くの生物は別の方角へ向かって泳いでいるのもわかった。


リンが今持つ輸送者は全部で二千体。輸送者の体型は鮫に似ており、後部の噴水口と触手で泳ぎ、向きを変える。今やこの巨大な隊列は、暗く冷たい氷層の下にあり、片時も休まず北を目指して泳ぎ続けている。


輸送者は体内の九割の場所に、緑の絨毯から得た養分をぎっしりと詰め込んでいるため、遊泳速度は速くない。そのうえ、夥しい甲冑魚も共にいるせいで、数多くの捕食者を惹きつけてしまっていた。やつらはこの巨大な隊列の外側を泳ぎ回り、隙あらば獲物を狙おうと機会を窺っている。


大半は鮫で、おそらく百匹以上はいる。この膨大な隊列の両側面に張りつき、時に一瞬で加速して突っ込み、甲冑魚を一匹咥えるとまた退いていく。


リンの輸送者には少なからぬ護衛用部隊がおり、鮫をあしらうのは比較的容易だ。しかし、やつらが甲冑魚だけを襲うのであれば、リンが手を出すこともない。もっとも、いささか厄介な生物もついてきていたが。


ダンクルオステウスだ。これらの巨大な魚が二匹以上で連れ立つのを目にすることは滅多にないが、今は全部で数十匹が、リンの輸送者の隊列の後方についている。やつらは鮫のようにしばしば不意を狙ったりはせず、むしろひどく静かに、後ろを泳いでくるだけだった。


あるいは災厄の前になると、比較的温順になるのかもしれない……そうは考えつつも、リンはやつらに十分注意を払っていた。この巨魚どもが本気で暴れだせば、かなり面倒なことになる。


リンは北を「魚類路線」と名づけた。ほとんどすべての魚類がついてきている。一方、他の生物たちはおおむね西南方と東北方へと泳いでいった。


今や残すところ八昼夜。はたして間に合うかどうか……だが、いずれにせよ、この位置ならさほど影響は受けないはずだ。


夜が明けて後も、リンの輸送隊列はなおも最高速度で前進を続けている。だが、リンはいくぶんかの異変を感じ取っていた。


隊列の上方、海面を固めている氷層から、大量の氷晶の砕屑がふぶきはじめていた。この砕屑はリンや周囲の魚たちには何の影響もなかったが、リンにはひどく異様に思われた。


きっと災厄前の何らかの兆候なのだろう。まさか、変化がここにまで及ぶというのか?


奇妙ではあったが、リンはずっと足を止めなかった。


もう一昼夜が過ぎた。今や残すところ七昼夜。氷層には大量の亀裂が現れはじめた。今度こそ明らかな変化で、鮫たちは静かになり、どうやらすでに餌を食う気を失い、しかも遊泳速度を上げている。


残すところ六昼夜。リンは水温がこれまでよりずっと高くなっているのを感じ取れた。すべての魚類が遊泳高度を下げ、それほど水面の氷層にぴったりつくことはなくなった。


リンも彼らに従って高度を下げた。路線の選択においては、リンは他の生物のほうを比較的信頼している。


残すところ五昼夜。氷層の割れ目は巨大な裂け目となった。白昼の光が裂け目を通して暗い海域を照らし出す。もし氷層が融ければ、リンはここに直接、海面の緑の絨毯を作り上げられる。だが、周囲で絶え間なく急ぎ泳ぐ魚の群れを見て、リンはその考えを取りやめた。


その後も、昼夜の交替が止めどなく続くなか、氷層の変化もまたきわめて明らかだった。最初は厚さ十メートルを超える堅氷だったものが、今ではわずかにまばらな浮氷が漂うだけの海面となっている。


水温の変化はとりわけ速く、冷たい海水がまるで温泉のようになった。リンには温泉が何かはまだわからなかったが、この言葉からその意味を理解するのはいとも容易かった。


今や残すところ二昼夜……


魚の群れは今ではもう、ほとんど海底に貼りついて泳いでいる。リンは、北へ向かっているのが魚の群ればかりでなく、かなりの量の節足類、たとえば三葉虫やブロントスコルピオなどもまた、海底を北へ向けて絶え間なく移動しているのを知った。


暑さに耐えきれずに道中で死んだ魚類も少なくない。やつらが海底に落とした死体を食べようとする生物は一匹もいなかった。どの生物もひたすら道を急ぎ、まったく他のことをしている余裕はない。かつて捕食者と獲物の関係だったものどうしも、今では隙間なくぴたりと身を寄せ合い、共に旅をしている。


災厄が訪れる前は、すべてが様変わりしてしまうものだな……


リンの部隊もまったく損失なしとはいかなかった。最初の寒冷から灼熱への転換があまりに速すぎたため、何体かの輸送者が適応しきれずに死んだ。しかし、残りはきわめて迅速に調整を終えた。


リンは耐熱能力を久しく使っていなかったが、遠い昔に持っていた耐熱能力の細胞記憶は、ずっと貯蔵され続けている。リンは必要とさえすれば、それを生み出せるのだ。


しかし、海水がさらに加温を続ければ、危険はおそらく大きかろう。


今は、残すところ一昼夜……


今やリンは周囲の生物をあらためて観察した。付近の甲冑魚はすでに半数以上も減っており、残っているのはあの、体が大きく抵抗力の十分に強い個体ばかりだった。鮫の具合もあまり芳しくない。それにひきかえ、ダンクルオステウスは暑さをさほど恐れていないらしく、おそらく数匹を失っただけだろう。


節足類にいたっては、どうやらやつらの抵抗力は魚類よりもずっと強いようで、リンはやつらにほとんど死傷者が出ていないのを目にした。


リンは絶えず何個かの眼球を水面で観察させ続けていたが、そこにはもう氷の塊はほとんどなかった。暑さは途方もないほどだが、眼球は構造が単純で、自身を変化させて耐熱能力を増すのはきわめて容易い。


これまでずっと、リンの眼球が観察してきたのは氷層の変化だった。しかし今や、この氷のない海面で、やつらはいくつか別のものまでも目撃していた。


今は夜の刻限、星空はあいも変わらずきらめき、温度も白昼よりずっと低い。リンは眼球たちを水面に浮かばせ、空気の温度を感じ取らせようとした。そのとき、リンの眼球はふと、周囲の温度が瞬時に高まるのを感じ取った。天空の上で、数個の星がますます大きくなっていく。やつらはまっすぐ、海面の方角へ向かって飛んでくるのだ!


あれは何だ?


星か? どうも違うらしい……


それらのものは球体を呈し、直径はおそらく十メートルほど、その全身は、一団の赫々とし絶えずうねり踊る光沢に包み込まれていた。


リンの思念のなかに、新しい言葉が現れた――「火炎かえん」。


火炎? いったい何なのだ?


リンがなおも惑っているうちに、その数個の火球が勢い激しく、遠くの海面へと撃ち当たった。

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