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第71章 極北の地

すでに三十昼夜が過ぎていた……リンの緑の絨毯は一部が回収され、その養分は全長二メートルほどの楕円形をした輸送者の体内に蓄えられている。他の生物に捕食されるのを防ぐため、それらはわざわざ掘られた洞穴のなかに留め置かれていた。洞穴の入口は十分に狭く、大型生物は入り込めない。災厄が迫るまで、そこから出ることはない。


緑の絨毯の回収は順調に進んでいるというのに、リヴァイアサンのほうは相変わらず、安全な地点をひとつも見つけられずにいた……


前回放った探索眼球はすでにみな死に絶えた。大半は食われたのだ。やつらはこれといった好場所を見つけられず、あの暗い氷層の海域から泳ぎ出ることさえできなかった。


光の糸の研究のほうはといえば……


光の糸が覆う範囲は数十メートルに及び、観察のなかで、やつらはたしかに、上層のさまざまな生物の捕食や死によって落ちてくる砕屑を頼りに生きていた。やつらはひどく植物に似た生物でありながら、脳を備えている。


すべての糸は中心にある一つの球体につながっており、その内部には他の生物とよく似た脳の構造があって、それが全糸の活動を指揮している。何か餌があれば素早く包み込んで分解できるようにするためだ。


これはじつに神奇な構造で、いったいどうやって進化してきたのか想像もつかない。


そこでリンもやつらを見倣い、その近くに、似たような発光する網状の構造物を一つ作ってみた。しかし、ほとんど餌がかからなかった。位置が悪いのか? それとも偶然の率が大きすぎるのか?


そんな問題はどうでもよかった。要は、この方法がさほど実用的でないということだ。効率は光合成にまるで及ばない。道理で、あの光の糸もあれだけの範囲しか覆っていないわけだ。


とはいえリンは、やつらの捕食のしかたを参考に、新しい兵種を一種、研究し出していた。機会があれば試してみよう。


それに、リンが研究しているあいだにも、さらに多くの眼球を放っていた。今度のやつらはいくぶん遠くまで泳ぎ、しかも数個は出口を見つけた。やつらは氷層に覆われた海面から無事に脱出し、別の陸地へとたどり着いたのだ!


その後、この眼球は食われた。


だが、情報はリンがしかと得た。これで、このあまりあてにならない方法を研究し続ける必要はない。リヴァイアサンは全速力で目標の海域へと向かう。


海の彼方、もう一つの陸地か……


わからない、この世界に何枚の陸地があるのかは。おそらくとても多いのだろう……だが、一つを見つけるにもひどく時間がかかる。なにしろ海はあまりに広大だ。


リヴァイアサンの速度は眼球よりずっと速いが、それでも暗い氷層の下を三昼夜も泳ぎ続け、ようやくその眼球の見た地点へと到達した。


白昼の光がこの海域を照らし出し、リヴァイアサンの眼前には繁栄の光景が広がった。


ここの地形はかつての場所とよく似ている。海底は珊瑚礁と砂浜でできており、さまざまな生物がここを泳ぎ回り、互いに狩り合っている。


ここは光も十分にあり、生物も繁栄している。緑の絨毯を敷くのにはいかにも適しているようだった。だが万が一に備えて、こちらの陸地に危険がないかどうかを探らねばならない……


リヴァイアサンは珊瑚礁を泳ぎ過ぎ、陸地とつながる砂浜へと近づくと、基地の種を一つ投下した。


基地の種が砂浜に落ちたその一瞬、聞き覚えのある波動がリンの思念のなかへと伝わってくる。


あの時と同じ感覚だ……ここの陸地も同じなのか? 一年後に激しい変化が起きる。なぜだ? この二つの場所は数百キロメートルも離れているというのに……


リンは今、方位を示す正確な言葉を持っている。主に「東西南北」で構成されるものだ。もとの基地は「東」にあり、ここは「西」にある。両者のあいだには何のつながりもなく、しかも氷層に覆われた広大な大海が隔てている。なのになぜ、同じ反応が現れるのか?


まさか世界全体が、何か巨大で奇怪な変動を起こすとでもいうのか?


いけない、安全な地を見つけねばならない。


こちらの向きはもうほとんど試した。もし陸地を見つけられなければ、リンは大海の中心へと逃げ込み、災変が通り過ぎるのを待ってから、再び緑の絨毯を敷きに戻ろう。


リンには陸へ這い上がって緑の絨毯を敷いてみたいという考えもあったが、今の陸地は未確認の事柄であまりに満ちており、しかも災変の下では、陸地がいくつにも裂けてしまう可能性さえある。


リヴァイアサンは再び大量の眼球を放つ。やつらは東西と北を除くすべての地域を探索する役目だ。そしてリヴァイアサン本体は、北方へと航路を取る。


リンには、ある奇妙な感じがあった。北方には何か特別なものがあるかもしれない、と。しかしこの感覚はあまりに異様で、真実味に欠けていた。だがそれでもリンは、行って見てみたいと思った。


しかし今のリヴァイアサンは養分がもうじき尽きようとしている。まずは補給を満たそう。


リンはあたりを見回すと、すぐに、遠くない場所に格好の獲物らしきものがいるのを見つけた。


おそらく蠑螈イモリの類だ。だが溶岩蠑螈とは違い、この蠑螈は全長がわずか半メートルで、肌は黒い。


これで新しい兵種を試せるかもしれない……


リヴァイアサンはゆっくりとこの蠑螈に泳み寄ると、一種の小さな球体を放った。直径はわずか五センチだ。小球体は蠑螈に気づかれることなく、蠑螈の皮膚の上へと泳ぎ着き、その上にぴたりと貼りついた。


この時点まで蠑螈はまるで感じていない様子だった。すると小球体の周囲から多くの糸が生え伸び、これらの糸は末端が鋭利で、蠑螈の皮膚のなかへと突き刺さり、その皮下で大量の溶解液を放出しはじめる。


それと同時に、それらの糸は腐食した細胞の残滓を吸収し、それを瞬時に自身の養分へと変換する。そのためやつらは急速に増殖し続けることができ、ついには蠑螈の体内の心臓や他の重要器官の箇所にまで到達した。


蠑螈は最後の瞬間までずっと藻掻き続け、生命が尽きるその瞬間、体内の器官はすっかり糸に絡み取られ、やがてそいつも砂浜の上に倒れ伏し、二度と動かなくなった。


じつに面白い兵種だ……


リヴァイアサンは蠑螈に近づき、これらの糸と蠑螈の死体を完全に回収した。この蠑螈には毒がないようだった。


続いてリンは付近の生物をさらに数匹狩り、十分な養分を補充し終えると、北方への旅を開始した。


はたして時間は足りているだろうか……


リヴァイアサンは再び大海の深みへと泳ぎ出した。どうやら大海のすべてが氷層に覆われていて、陸地に近い場所だけが、暖かな輝きを持っているらしい。


だが、寒冷な海域の生物もまた相当に豊かだった。水母クラゲ、ヒトデ、サメ菊石アンモナイトなど、みな氷層の下を泳ぐのを好んでいる。しかし、この氷層があるかぎり、リンには緑の絨毯を覆わせるすべがない。


北への旅は、長いあいだ続いた……


昼夜が止めどなく交替するなかで、もとの緑の絨毯はすでに回収がほぼ終わっていた。リンの輸送者はますます増え、もはや千体近くにもなっている。今ではもはや特別に穴を掘る必要もなかった。これほど多くの、全長二メートルにも及ぶ大型生物が一堂に集まっていれば、最大のダンクルオステウスといえども、みだりに攻撃はしてこない。


準備はほぼすべて整った。しかし、リヴァイアサンはいまだに陸地を見つけられず、まだ暗い氷層のなかを突き進んでいた……


すでに半年が過ぎている。


もしかすると、北方にはそもそも陸地などないのかもしれない? しかし、別の方角を探索させた眼球も、何か有用なものを見つけてはいなかった。


リンはこれ以上待てない。輸送者たちを海の中心へ向けて泳がせはじめた。陸地から最も遠い場所で時機を待つためだ。もとの場所には、陸地の変動を観察するための観察眼球だけをいくつか残す。


そしてリヴァイアサンは、北方への旅を続ける。たとえ陸地が見つからなくとも、リンは氷層の出口をどうにかして探し出してみたかった。


これは遥かなる旅路だった。リンは初めて、世界がこれほどにも巨大であることを感じた。旅の途上、数多くの見知った、あるいは見慣れぬ種を発見したが、氷層の尽きる場所だけは、ずっと見つからずじまいだった。


まさか、氷層に終わりはないのか? 昼夜が止めどなく入れ替わるにつれ、リンの計算した災変の日まで、すでに十昼夜も残っていなかった。


今のリンは、陸地を見つけることよりも、むしろ氷層に覆われていない海面を見つけることを強く望んでいた。


冷たく暗い水のなかで、リヴァイアサンの前方に、ついに終点が現れた。


氷層の覆いが消え去っている。リヴァイアサンは水中からその身をのり出し、夜空の星の光が暗い大海を照らすのを直に見ることができた。こここそが、あるいは望んでいた場所なのかもしれない。


リンの感じに間違いはなかった。成功したのだ。ただちに輸送者たちをこちらへ来させることができる。リンは海の上で巨大な緑の絨毯を製造できる。そうすれば陸地の危険から遠く離れられる。


待て……


リンはふと、はるか彼方に、計り知れず巨大な黒い影が現れたのを目にした。


陸地か? だがこの陸地は……どこか妙だった。よくある陸地は平たく荒蕪としているのに、なぜこの陸地は、これほど数多の突起した尖りに満ちているのか?


うまく形容できていないかもしれないが、夜のことゆえリンにはあまりよく見えなかった。

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