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四十六億年の物語——星生まれの細胞は、宇宙を奏でる  作者: 位面の行者
太古の海

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第69章 氷下の怪獣

この巨大なヒトデは直径が三メートルもあり、吸盤のぎっしり生えた触手でリヴァイアサンの背中にへばりついていた。このヒトデには奇妙な名まえがある――「サニー・ヒトデ」という。リンはかつて見かけたことがあったが、まさか変色するとは思いもしなかった。


ヒトデの触手は五本ではなく十五本あり、どの一本にも無数の吸盤がついている。吸盤というものはじつに有用で、極度の吸着力を生み出し、一個の生物に自身の体重の数十倍ものものを引きずらせることができる。


この強力な吸着力のせいで、ヒトデに吸いつかれたらまず剥がれない。たとえもっと大きな魚であろうと、おそらく吸いつかれればそれで終わりだろう。


つづいてサニー・ヒトデは、触手の吸盤のあいだから溶解液を分泌し、リヴァイアサンの外殻を腐食しはじめる。しかしそれと同時に、リンはすでに十体の粉砕者を放っており、やつらはヒトデの背中に泳ぎ寄ると、勢いよく槌打ちを叩き込んだ。


ガッ……


ヒトデの外皮の下には甲質の覆いがあるが、さほど厚くはない。粉砕者の攻撃により、それにはたちまち亀裂が走り、打ち砕かれた傷口からは大量の血液が流れ出した。だがヒトデ本体はそれでもなお、リヴァイアサンにしがみついたままで、逃げる気配はまったくない。


じつにうっとうしいな。


粉砕者たちは続けざまに激しい攻撃を加え、ヒトデの身に無数の傷口をこじ開けた。傷を負ったせいで、分泌される溶解液はますます少なくなってきたが、吸盤の力は相変わらず強烈なままだった。


この何年ものあいだ、ヒトデはやはり本当の脳を進化させてこなかった。これが、やつらがこれほど執拗である理由かもしれない。


どうやらこいつを完全に叩き潰すしかないか? リンがそう考えていたとき、ふと、一体の粉砕者がヒトデに抱き込まれたのを感じた。


この氷層の下には大量のヒトデが貼りついていて、やつらは傷ついたサニー・ヒトデの血液に誘引され、氷層の下から続々と大挙して脱落しはじめている。その大半はリヴァイアサンの背中のサニー・ヒトデの上へと降りかかり、また数匹はちょうど粉砕者の上に落ちてきた。


これ以上ここに留まれば、おそらく大量のヒトデに完全に包囲されてしまうだろう。リヴァイアサンはやつらを皆殺しにするだけの力はあるが、リンにはあまり意味があるとは思えなかった。それにひどく面倒だ。


リヴァイアサンは素早くすべての粉砕者を回収し、それと同時に噴水口を猛然と加速させ、全身にヒトデをのせたまま深海へ向かって泳ぎだした。


なぜヒトデは氷層の下にへばりついているのだろう? 一般にヒトデは、寒さにはどちらかといえば弱いはずだった。


これは異変なのか? それとも何か別の理由が?


リンは再び粉砕者を放ってリヴァイアサンの体についた小さなヒトデどもを始末させ、同時に、もう死んでいるが依然としてリヴァイアサンの背中にしがみついているサニー・ヒトデを、収集者を製造して食わせにかかった。


リンがだいたいやつらを片づけ終わったころには、もうじき海底に達しようとしていた。ここは暗く冷たく、提灯の光の下で、灰色の砂礫でできた海底がリヴァイアサンの視野のなかに姿を現した。


こんな環境は、緑の絨毯には向かない。


リンはリヴァイアサンを砂浜の上に停め、考え込みはじめた。


この次にどこへ行くべきか、まったく見当もつかない……


氷層、やつはいつも、海の上に理由もわからず現れる。こういったものはまったくもって厄介極まりない。リヴァイアサンだけの探索では無理だ。今はかつてのようにのんびり旅をしている場合ではない。一年のうちに、必ず緑の絨毯の生育に適した安全な場所を見つけ出さなくてはならない。


もし……さっき見たあの水母クラゲのように空気中を漂うことができれば、それはずいぶんと楽だろうが、あれはいったいどうやって実現しているのだろう? 一体、どんな種類の気体を集めれば、空気のなかに浮かべるのだろうか?


今、これを考えてもあまり役には立たない。とにかく、もっと速く場所を見つけねばならない。


考えながら、リンは探査用の小さな眼球を製造した。直径一センチで、本体は透明な硬い殻に覆われ、小さな触手で泳ぎ、暗い水域では発光する。さらに捕食防止機能つきで――酸液を放出できるが、蓄えは三度ぶんしかない。


リヴァイアサンはかかる眼球を百個以上も製造し、四方八方へ泳がせた。これらの養分はおおむね三十昼夜持つ。もし時間切れになるか、死に絶えたら、リンは新たに製造し直す。


これで探すのがずっと速くなりそうだ。


リンがこれらの眼球を放つと、やつらは無数の星々のように散り散りに泳ぎ去っていった。が、遠くまでは行かぬうちに、リンはもう数個の眼球が何かの生物にすり潰されたのを感じ取った。


これもまた早すぎるぞ。まだ三十メートルも行っていないのに?


リヴァイアサンは眼球が死んだ場所へ向かって泳いだ。提灯の光の下で、犯人たる姿が浮かび上がってくる……


全身まっ黒なブロントスコルピオが一匹、その口のなかの小さな鋏角肢で、しきりに何かを咀嚼している。周囲にはまだ、光る破片がいくつかこぼれ落ちていた。


たぶん蠍は、眼球がもともと備えている酸液をあまり恐れないのだろう。リンもあまり構ってはいられなかった。リヴァイアサンはくるりと向きを変えて立ち去ろうとする。


ドン……


リヴァイアサンが振り返ったその一瞬、背後から強烈な水流の波動が伝わってくるのが見えた。リヴァイアサンがあらためて振り返って見たときには、蠍はもう消え失せていた。


喰われたのか? リンは、蠍がもといた場所に砂の穴だけが残っているのに気づいた。まさか砂中の急襲か?


ブロントスコルピオといえば大型生物の部類に入る。それがこんなにもあっけなく瞬殺されたというのか?


なんだか面白い言葉を使ってしまったな。そんなことはどうでもいい。


リンはまるで気に留めなかった。これは怪物が輩出する時代なのだ。たとえ十メートルを超える恐怖の生物が現れようとも、リンはちっとも珍しいとは思うまい。


リヴァイアサンは高みへ泳ぎ上がり、提灯をしまい込むと、光のない暗い水のなかで、もっぱら触覚と嗅覚だけを頼りに周囲の環境を知覚する。


リンは適当に一つ、方角を選んで泳いだ。光のない暗闇のなかには、どうやら多くの奇妙な感覚が潜んでいる。水流の波動があり、異様な臭いがある。見えないがゆえに、これらが一体何なのかは推測するほかなかった。


リヴァイアサンは再び氷層を覆う水面へと近づいた。幽かな光が、重く厚い氷層を透かして射している。ここにはヒトデはおらず、ただ何匹かの水母だけが活動していた。


これらの水母は……さっき見かけたあの空中に浮かぶタイプのものとはまったく違うな。


リヴァイアサンが水母の群れのなかを泳いでいくと、前方にいくつかの菊石アンモナイトが現れた。やつらは別に水母を食べるでもなく、まるで呆けているかのように、何をするでもなく、ただ静かにここに浮かんでいる。


菊石のなかにも大物はいる。リンは一群の小さな菊石のなかに、直径が二メートルもある巨大な菊石がいるのを見つけた。そいつの頭は殻のなかに引っ込められ、殻の蓋は固く閉ざされ、ぴくりとも動かず水中に浮かんでいる。


こいつら、ここで何をしているのだろう? 菊石の殻は最も硬い部類のはずだ。まるで石のようであり、開けられる生物はほとんどいない。だからこそこんなにも悠然としているのか?


リヴァイアサンは泳ぎ寄り、触手でこの巨大な大石をつついてみた。


すると突然、巨大菊石の殻の蓋が勢いよく開き放たれ、そこから強烈な水流が一筋、射出された。水流の推進力に乗って、巨大菊石は深海の方角へと猛然と泳ぎ去っていく。


このとき、周囲で呆けていたすべての菊石もまた、まるで呼び醒まされたかのように、同様に放水の手段で急速に巨大菊石の方角を追いかけはじめた。


何が起きた?


まだ理解はできなかったが、リンはすぐにリヴァイアサンをも後を追わせた。どうやら今、自分の好奇心が格段に強くなっているらしいと気づく……


菊石は殻が分厚く硬く、とても重そうに見えるが、実は内部は空気でいっぱいであるため、かなり速く泳ぐことができる。しかしリヴァイアサンもまた、いとも容易く追いつくことができた。


菊石の群れの泳ぐ方角は奇怪だった。時には上へ、時には下へ。リンがまさに、なぜこいつらはこんな泳ぎ方をするのかと奇妙に思っていた矢先、一筋の異様な波動が、リヴァイアサンの後方から伝わってきた。


リヴァイアサンの眼球触手がねじり向いてそれを見ると、たちまち、一頭の怪物が後ろ遠くない場所で追いかけてきているのが目に映った。


体長は七メートルはあるだろうか。リンが以前見たあの巨魚と同種のものだ。あの時のほど大きくはないが、明らかに同類だった。


この手の魚には名前がある。「ダンクルオステウス」という。あまり面白くない名前で、リンはむしろ粉砕者だの圧壊怪だのと呼びたいくらいだった。やつらは強力な筋力で硬い殻を粉砕するのを得意としているから、菊石でさえ逃げ出さざるをえないのだ。


やつがリヴァイアサンをも標的の一つと見なしているかどうかはわからなかったが、それでも逃げるに越したことはない。もしかすると、試しに打ち負かしてみることもできるだろうか?


リンがそう考えているうちに、前方が突然、明るくなった。菊石の群れはいつのまにか、ある奇妙な場所へ泳ぎ着いていた。


ここは氷層下の寒冷な水域で、本来ならば光もなく暗いはずだったが、何らかの理由で、ここの海底はさながら夜空の星空のようにきらめいていた。

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