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四十六億年の物語——星生まれの細胞は、宇宙を奏でる  作者: 位面の行者
太古の海

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第65章 新生のリヴァイアサン

他の生物がこぞって進化を遂げているというのに、リンはその場に留まったままだった。緑の絨毯のなかでも、甲羅の修復や、少数の小型侵入者を殺すための部隊だけが活動しているにすぎない。


リンの部隊はそのほとんどが眠りについた状態であり、細胞そのものにも何の変化もなかった。リンは他の生物を模倣して、外見だけなら瓜二つのものを作り出せるだろう。しかし、内部の細胞の種類が十分に豊かでないために、実際には小さくない隔たりが生じてしまうのだ。


だが、ただひとつだけ、自由な状態にある兵種がいた。リンは眠りにつく前、それを水中に泳がせ、その細胞を他の生物のように外界の環境に触れさせ、自己進化をさせていたのだ。


リンはそれに、いっさいの制限を加えていなかった。ただ一点、もし餌が見つけられない場合には、緑の絨毯に戻って食料を補給するようにしてあったが、普段は自力で狩りをし、自分で危険を避けていた……


それはもう、一億年ほど生き続けているかもしれない。リンは目覚めたとき、慌ててそいつを観察したりはせず、まずは周囲の水域にいる他の生物をながめた。そうすれば、あとで比較ができるからだ。


さて……そいつは、いったい何に変わっただろうか?


リヴァイアサン……


リンの思念は、一つひとつの細胞、一つひとつの構造を丹念に探っていく。そしてすぐに、遠く離れたどこか……一つの生物の上に照準を定めた。


かつての旅人であり、リンの最高兵種でもあるそいつが、どんな姿になったのか、リンは期待に胸を躍らせた。


リンの思念は素早くリヴァイアサンの巨体を走査していく。まず、元は円盤状だった体が、前方が丸く後方が尖った流線型へと変わっていた。どこか魚類にも似ている。


やはり、この構造のほうが水中を泳ぐのに適しているのか? たしかに、もとの円盤状の体でも、回転すれば高速で泳げたが、その分エネルギーの消費もずっと大きかった。


三十あった噴水口もほぼ完全に退化し、尻尾の部分に二つだけが残っている。噛みつき触手は二本に減り、それぞれ頭部の両側についているが、先端に鋭い牙の生えた口は消え、代わりに矢石ベレムナイトの触手のように、鋸歯のある吸盤がびっしりと並ぶようになっていた。


どうやら、生物の進化には一つの趨勢があるらしい……


かつての分厚い重装甲も、より軽い灰色の軽甲へと変わり、背中の鎧には知覚用と思われる二列の細かい触手が生えていた。


しかも……嗅覚だ!


リンは、この小さな触手を見つけたまさにその瞬間、嗅覚とは何かを理解した。これらの触手の細胞は、水中の微小な不純物を感じ取り、その不純物がどこから来たのか、何が違うのかを識別できるのだ。


「嗅覚」は、もともと水中の振動を感じる「触覚」能力に端を発している。これはじつに便利な能力だ。視覚、触覚、嗅覚を組み合わせれば、どのような環境でも遮二無二進めるだろう。


リヴァイアサンの体外の構造はだいたい見終えた。今度は体内を見てみよう。


リヴァイアサンはもとの作戦様式を今も保っている。体内で最も大きな器官は増殖槽で、それはリヴァイアサンの胴体両側にある六つの出兵口に繋がっている。


それ以外にも、気嚢や心血系などの器官が残っており、元と同じくリヴァイアサンに口はない。代わりに、部隊が持ち帰った餌を食嚢に入れて分解するのだ。


リヴァイアサンは脳を進化させておらず、神経節さえなかった。どうやらリンが眠っているあいだも、自身で一つひとつの細胞に指令を出す能力を維持していたらしい。


そのほかにも、リヴァイアサンには多くの奇妙な構造が増えていた。出兵口以外にも、体表には開閉できる孔状の部位がいくつもあり、体内では筋肉でできた管に繋がっている。この管は互いに連結し、中心にある嚢状の器官に集まっていて、内部は水で満たされていた。


……なんだか、あまり変わっていないな? しかも、リヴァイアサンの全長はわずか三メートル。一億年も経ったのに、元より二倍にしかなっていないのか?


現存する最大の生物は十メートルもある。それに比べたらあまりに小さい。元来のリヴァイアサンは、まだ「覇王」の名に値したはずなのに。


なんとなく……外れか?


リンはふと、この面白い言葉を思いついた。だが、それでこの少々がっかりした気持ちを取り戻せるわけではなかった。


しかし、リヴァイアサンの兵種を観察したとき、その気持ちは跡形もなく消え去った……


なるほど、リヴァイアサンは進化のすべてをこいつに注ぎ込んだのか?


リヴァイアサンは、リンが以前に持った考えをそのまま受け継いでいた。すなわち、兵種を回収したあとは分解し、次に使う必要が生じたときに再び組み立てるのだ。今はリヴァイアサンの体内にどんな部隊もいないが、リンはリヴァイアサンの生活記憶から、少なくとも十種類以上の新しい兵種を組み立てていたことを知ることができた。しかも、それらの多くは奇妙な姿をしており、リンはそれに似た生物を見たことがなかった。


よし、ではその威力を試してみよう。


リンはあたりを見回した。ここは、緑の絨毯が覆う場所から遠く離れた水域で、おそらくリヴァイアサンが生活の過程で泳いでここまで来たのだろう。


下方には広大な珊瑚礁が広がっている。リンはすぐに、見覚えのある生物をいくつか見つけた。一匹の三メートルほどの矢石が、脳のような形の珊瑚の上に浮かび、遠くにいる甲冑魚をじっと見張っている。


お前に決めた! 行け!


リンはリヴァイアサンの体内で素早く、ある新型の兵種を組み上げた。それは小さな球体で、背中には何本かの鋭い棘が生え、腹部は鮮やかな赤で節足がついており、放水式で移動する。


この兵種を、リンは「殺戮者」と名づけた。この上なく残酷な方法で獲物を仕留めるのだ。


殺戮者はわずか三十センチの大きさで、矢石の頭部へ一直線に突っ込んでいった。飛び込んでくる生物に気づいた矢石は、甲冑魚を放っておき、触手を伸ばしてこの小さな生物を捕まえようとする。


殺戮者も逃げはせず、そのまま矢石の触手に捕まりに行き、触手にもみくちゃにされながら矢石の口へと運ばれた。


矢石の口は触手の中心にあり、そこには超高硬度の嘴がある。その締めつけの前には、どんな頑丈な甲羅も耐えられない。殺戮者の腹部は噛みつきを受け、瞬時に炸裂弾さながら弾け飛んだ。


だが、恐怖はここから始まる。


弾けた殺戮者の体内から無数の小さな尖刺が放たれ、周囲の矢石の触手に突き刺さった。その尖刺が、ある特異な液体を矢石の触手細胞へと注入したのだ。


この液体が結局どんな破壊を引き起こすのか、リンにはわからなかった。リヴァイアサンが単独で生活していたときには、リンのように常に眼球を放り込んでつぶさに観察するような真似はしなかったからだ。しかし、リンはこの液体を注射された後の生物がどうなるかを知っていた。


矢石は殺戮者に一口噛みついた後、すでに二口目を噛める状態ではなくなっていた。殺戮者を吐き出すと、十本の触手が狂ったように互いに絡みつき、自らの吸盤の鋸歯で自身の体から肉片を次々と引き裂き、口から大量の青い液体を噴き出した。


どうやら長くはないな。リヴァイアサンの嗅覚触手は、矢石の口から噴き出された異物の臭いをはっきりと感じ取っていた。それは間違いなく、やつの血液だ。


おそらく殺戮者の体内には、ある種の強烈な毒素か何かが含まれていて、他の生物に極度の苦痛を与えるのだろう。リヴァイアサンが一体どうやってこんな強力な毒素を進化させたのか、まったく見当もつかない。ウイルスよりもずっと強力だ。


しかも、当の殺戮者本人は消耗さえしない。爆裂したのは腹部だけで、主要な器官はすべて背中の甲羅の下にあり、自爆は自身の生命にはまったく影響を及ぼさないのだ。


珊瑚礁の上へゆっくりと沈んでいく矢石をよそに、リンは次に、餌を集めるための兵種はないかと調べようとした。だが、リヴァイアサンの嗅覚触手が、不気味な気配がゆっくりと近づいてくるのを感じ取った。


嗅覚というものは、やはり便利だ。ある種の生物は水の流れの変動に合わせて身をくねらせるため、普通の触覚では、それが水流なのか生物なのか判断しにくい。しかし嗅覚の前では、いかに完璧な忍び寄りであろうと、その正体を隠しおおせはしない!


リヴァイアサンは勢いよく加速し、この接近する物体を避けた。リンはすかさず眼球を組み立て、リヴァイアサンの後方で獲物を取り逃がしたその生物を観察した。


それは……


見たことのない生物だった……


その生物は体長が三メートルほどあり、頭部は楕円形で、巨大な両顎のなかには鋭い歯がぎっしりと生え揃っている。扁平で長い尾が遊泳の推進力となり、さらに胴体の両側には二対の太い肉肢があり、その先端には鋭利な刃がついていた。


こういう肉肢は「手」「足」と呼ばれ、そしてこの生物は……


「両生類」と呼ばれていた。

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