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第64章 怪獣の時代

それはリンが作り出した「軍隊」だった。一匹一匹の体長は十センチほどで、その姿は主に弾丸のような形をしている。最後尾の一対の肢で水を噴射して動き、二対目の扁平な肢は遊泳の補助に、そして最前部の肢は攻撃用で、そのほとんどが刃物状になっていた。中には噴射口状になったものもあり、それで炸裂弾を発射する。


この「軍隊」は数千体にのぼり、リンが眠りにつく前から、大きな晶石のなかに穴を掘って製造を始めていたものだ。ただ、一定数まで作ったところで製造は止められており、その主な目的はこの新たな世界の探査と、興味深いものの狩猟・分解だった。


弾丸型の構造体は水中をきわめて速く泳ぐ。それらは最高速度で一方角へと向かっていった。結晶の地の水面は、古来よりずっと氷の層に覆われており、その冷たく暗い水のなかで、弾丸たちの提灯が、大量の奇妙な生物が漂っているのを発見した。


丸い殻を持ち、頭部に触手を生やしたこの生物は「菊石アンモナイト」と呼ばれている。矢石ベレムナイトに似ているが、尖った円錐形の殻を渦巻き状に丸めた形で、大きさも五十センチほどだ。菊石は殻がかなり硬く、弾丸の攻撃には向いていない。それに、リンは菊石のどこにも学ぶべき点があるとは思わなかった……ただ、ひとつ面白いのは、リンは菊石が何から進化したのかを知らなかったことだ。巻き貝の一種だろうか? 観察眼の記憶にも、それに関する情報はまったくなかった。


菊石の数は非常に多く、水中のいたるところに広く分布している。弾丸たちはこの巨大な菊石の群れに沿って泳ぎ、やがて暗闇を抜け、白昼に照らされた海域へと出た。


そこはもともと、巨陥虫の砂浜だった。しかし、体を罠にするあの不気味な巨大虫も、遠い昔に完全に姿を消していた。リンが緑の絨毯を敷いたとき、やつらの「罠の口」は塞がなかったのだが、あの怪物たちは結局、ここの環境に適応できなかったのだ。観察眼の記憶によれば、最後の一体は氷柱に凍り殺されたらしい。あの、桁外れの凍結能力を持つ氷柱は、今でも時おり出現する。リンには、それが何なのかいまだに説明がつかない。


現在、そこは一面の緑に覆われていた。だが、それはリンの緑の絨毯ではなかった……


その緑は、触手のように海底にうねり踊っている。野生の光食細胞が進化したもので、根の部分でリンの緑の絨毯に張りついて大量に増殖し分裂した結果、もともと緑の絨毯が覆っていた領域を完全に塗りつぶしてしまったのだ。


もともとリンの緑の絨毯には、長期間光を受けないと自己分解して消化されるという設定があった。だから、この海域はすでに「海藻」と呼ばれる、この緑細胞の進化型に完全に占領されてしまった。


リンとしては別に構わなかった。海藻を直接食べて得られる養分の方が、緑の絨毯が光エネルギーをゆっくり合成するよりも効率がずっといい。いずれ、この海藻をすべて刈り取ってしまおう。ただ、今は弾丸たちの役目はそれではない。リンはむしろ、海藻の群生のなかにいる幾つかの生物に興味を持っていた。


弾丸たちはこの海藻の密林の上まで泳いでいき、そこでリンは、海藻のあいだを遊泳する巨大な生物たちを発見した。体長は二メートル前後、太く流線形の体をくねらせて、小型の生物を追い回している。


サメ」――リンの新語は、扁魚から進化したこの生物を指すのにふさわしかった。かつて扁魚は種類が乏しく、体も小さかったが、今ではかなり多様な種へと進化を遂げている。


これは奇妙なことだった。リンはこれまで、隔絶された環境でしか同じ生物が異なる姿に進化することはないと考えていた。しかし、どうもそうではないらしい。同じ海域の生物どうしでも、異なる姿になりうるのだ。


なぜなのか? リンはそんなことには構っていられなかった。


一匹の鮫が、海藻の群れのなかで別の魚を追っていた。その魚は体長が五十センチあまりあり、胴体の両側に一対の太い鰭脚を持っていることから、「肉鰭魚」と名づけられている。鮫に追われたこの肉鰭魚は、素早く海藻の群れから飛び出し、水面へ向かって猛スピードで逃げていった。


鮫は殺戮のために進化した生物だ。その頭部には鋭い歯で埋め尽くされた巨大な口がついており、扁平な鰭は高速遊泳に適している。鮫は物凄い速さで肉鰭魚に追いつくと、強力な顎で一瞬のうちにその身から大量の肉片を引きちぎった。


狩りが成功したことを感じ取った他の鮫たちも、分け前にあずかろうと群がってくる。幾世代もの進化を経て、これらの生物の知覚能力はますます鋭くなっていた。水中に何の波動もなくとも、ある種の生物は目がなくても標的の正確な位置を知ることができる。それは「嗅覚」と呼ばれる能力だとリンは知っていたが、嗅覚とは一体何なのか? リンにはまだわからない。これは必ず研究しなければならなかった。


もっとも、鮫の視力も優れてはいる。ただ、観察眼の記録から得た情報によれば、鮫の嗅覚はおそらく全生物のなかでも最高クラスだろうということだった。


眼の進化は別の生物にも見られる。リンが気づいたところでは、単細胞生物の眼は光を感じるだけで、複雑な像を解析することはできない。多細胞生物が登場してからも、多くの生物の眼はそのままだった。複雑な像を解析できる眼を持つ生物が現れたのは、つい最近のことなのだ。


とすれば、かつてのリンにも視力はなかったはずだった。ところが、観察者が食べた結晶のような奇妙な物体がそれに視力を与え、その後、細胞たちはその結晶の構造を模倣して眼球を組み立てるようにさえなった。


あの結晶とは、一体何だったのか? それはいまだ未解明の謎であり、リンがここまでに発見したいかなる結晶とも異なっていた……


この件はまた後で考えよう。いずれ、この「視力の結晶」も見つかるだろう。


今、鮫の群れは素早く肉鰭魚を平らげると、再び散り散りになっていった。群れて暮らすのを好んだ扁魚とは違い、これらの鮫は進化の過程で次第に同族から距離を置くようになっている……


鮫たちが散ったのを見計らい、弾丸たちは最も近くにいた一匹に狙いを定めて泳ぎ寄った。体長わずか十センチの弾丸を、鮫は元来、何とも思っていない。それが間違いだった。


この鮫は、自分が包囲されていることに気づいたときには、すでに手遅れだった。弾丸たちは群れをなして殺到し、鋭利な前肢で鮫の外皮を切り裂く。さらに数体が、鮫の比較的柔らかい鰓の部分に集中攻撃を仕掛けた。


鮫には反撃する意志などまるでなく、狂ったように身をくねらせて遠くへ逃げ出そうとする。それは猛烈な勢いで海藻の群生を突っ切り、水面へと向かっていった。


弾丸の群れはその後を追う。傷口からは大量の細胞が噴き出し続け、それが同類たちを引き寄せた。だが、その同類たちは加勢に来たわけではない。仲間を分食しようとしているのだ。


こいつらは個体化が行き過ぎて、仲間さえも喰らう。鮫がなぜこんなにも異様な生存形態に進化したのか、リンにはずっと理解できなかった……


リンは弾丸の一部を割いて、追ってきた鮫たちを追い払いにいかせる。そして、残る数百体はなおも逃走者を追い続け、ついにそいつを水面近くの巨大な浮氷のそばまで追い詰めた。もはや、退路はない。


だが、弾丸たちが手を下すより早く、鮫のすぐ横にあった巨大な浮氷が突然割れ、その中から無数の逆棘が生えた鎌状の腕が飛び出して鮫を掴んだ。


これは――


そのとき、巨大な浮氷がゆっくりと裂けていき、砕ける氷片の下から、全身の晶甲をきらめかせる影が姿を現した。


体長は五メートルを超える。リンがよく知っている生物、つまり氷晶怪の進化形だった……


リンは当初、氷晶怪の生活習慣を理解していなかった。しかし長年の観察のなかで、成熟した氷晶怪は結晶の地へ戻って繁殖し、幼体はある程度成長してからそこを離れることを突き止めた。


氷晶怪の全体的な外見の変化は小さく、ただ体が大きくなり、全身を覆う結晶の鎧はそのままだ。前肢は逆鉤のついた鎌に特殊化し、頭部には巨大な眼球が二つ生えている。この生物が鮫を一撃で仕留める能力を持つことは疑いようもなかった。


この狩りと殺戮に満ちた時代にあって、かつてのあの、比較的のんびりとした活動様式はもう通用しなくなっているのをリンは痛感していた。さっきも、もっと完全に包囲して鮫を逃がさないようにすべきだった。そうすれば獲物を横取りされずに済んだのだ。


このままでは、弾丸たちは氷晶怪を傷つけられそうにない。そうなると、リンと共にずっと眠りについていた、あの「切り札」を出すしかなかった……


氷晶怪の口は、刃と鋸状の鉤爪がびっしりと並んだ裂け目で、鮫を易々と引き裂ける。しかし、晶甲に覆われ巨体を持つ氷晶怪にも敵はいた。一頭の巨大な生物が、遠くからゆっくりと泳いでくる。どうやら鮫の死体に引き寄せられたらしい……


その先祖は扁魚だが、扁魚から甲冑魚へ、そしてさらにその甲冑魚の類から進化した、リンが観察記憶のなかで知る限り最大の生物だ。


体長十メートル。この巨魚の頭部は硬い装甲に覆われている。だが、甲冑魚のあの無用で邪魔なだけの頭甲とは違い、その頭甲の末端には巨大な刃状の歯が生えており、同時に頭甲が上下二つに分かれて開閉するため、獲物を噛み砕くことができる。


そいつは一直線に氷晶怪へと突っ込むと、氷晶怪の体側面にある甲殻にガッチリと噛みついた。頭をひねるだけで、砕けた結晶の鎧の大きな破片を容易く引き剥がす。


その咬合力は強烈で、氷晶怪の鎧さえも粉砕する。氷晶怪は鮫を放り出し、強力な後肢の放水装置で素早く逃げ去った。


巨魚の力は強いが、速度はまったくダメだ。巨魚は氷晶怪を諦め、あの小さな鮫を食らうことにした。


まったくもって面白い環境だ……


リンは気がつくと、最初から最後までほとんど傍観していたが、それでもかなりの収穫はあった。さて、そろそろ本気を出すとしよう。あいつを登場させ、興味深いものをすべて回収させるのだ。

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