表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四十六億年の物語——星生まれの細胞は、宇宙を奏でる  作者: 位面の行者
太古の海

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/180

第44章 空気貯蔵と免疫システム

陸上への旅は無意味ではなかった。陸地にはほとんどリンの記憶に残るものはなかったが、それでも有益な知識は得られた。


たとえば空気。


リンは以前から水中の空気が上方へ浮上することを知っていた。ずっと気に留めていなかったが、今になって突然思いついた。なぜ下ではなく上へ向かうのか?反重力なのだろうか?


そうではない。単に空気が水より軽いだけだ。だから水に押し出される。そのため高所にある陸地はすべて空気で満たされている。


今、リンは甲殻の装着で輸送母艦の速度が低下し、遊泳の機敏性も以前に及ばない。


しかし……空気を加えたらどうなるだろうか?


リンは輸送母艦体内に楕円形の嚢状ユニットを作り出した。その名は『気嚢』。内部は酸素で満たされており、この構造により輸送母艦は大幅に軽量化される。たとえ全身を装甲で覆っても問題ないはずだ。


気嚢には二本の細い管が接続されている。一本は血管につながり、血管に酸素を供給する。もう一本は皮膚層の甲殻上の小孔へと伸びる。この管は普段閉じられている。リンが水面に浮上した時、気嚢を拡張させて吸気を制御するためのものだ。


リンはさらに小型の細胞ユニットも製造した。『蓄気者』と名付けた。体外を遊泳する小さな気嚢のように見える。蓄気者は体周囲の微小触手で遊泳し、中空の触手で水中の微細な気泡を吸い込む。


蓄気者の体外にも硬い殻があり、砂粒を捕食して体重のバランスを取ることも可能だ。


輸送母艦が完全に硬い殻で覆われたため、酸素摂取が困難になった。蓄気者は酸素を満タンに吸収すると、輸送母艦体内へ戻って放出できる。またリンが水面へ浮上したくない場合、直接気嚢へ充填することも可能だ。


ただし現状、リンは気嚢を追加したものの、全身殻はまだ装着していない。殻質物の備蓄がまったく足りないからだ。


同時に、リンは護衛者の殻内にも気嚢を追加した。しかしそれでも浮上することはできず、『浮遊』程度に留まった。


さらに、リンは護衛者の中空の尾の内層に大量の光球と酸注入者を配置した。この元々空いていたスペースを、各種甲殻の溶解・合成に活用するためだ。


合成された殻質物は『塗装者』という新兵種によって運び出され、輸送母艦へ供給される。塗装者は殻質物を直接さまざまな場所に塗布し、甲殻を形成することも可能だ。


護衛者は今や甲殻製造工場の様相を呈している。


リンは気体を用いた攻撃も検討しているが、今のところ良いアイデアはない。


輸送母艦は護衛者を伴いゆっくりと遊泳した。リンは周囲を観察する。この深度の水中砂浜には、砂粒の中であれ他の場所であれ、至る所に単細胞生物がいた。生命の活力に満ちあふれ、あの荒れ果てた陸地とは鮮やかな対照をなしている。


単細胞生物の数は以前よりはるかに増えているようだ。かつては水中がこれほどまでに細胞で満たされる光景はなかった。だからこそ水中でじっと動かず、細胞が漂ってくるのを待ち受けて捕食する生物が数多く出現したのだ。


そう考えている時、リンの眼前に多細胞生物を発見した。砂に突き刺さった数本の管のように見える。触手状の体を管から伸ばし、周囲を漂う単細胞生物を捕獲している。


これを『管虫』と呼ぼう。


リンの接近を感知すると、その柔らかな触手体は瞬時に下の管へと引き込まれた。リンは管虫の隠れた管を軽く叩いた。硬い。間違いなく殻質物で構成されている。


リンが食物から抽出できる殻質物の含有量はごくわずかだ。殻のない生物には1%未満か、全く含まれていない場合さえある。迅速に装甲一式を製造したいなら、リン自ら砂礫の中から原料を調達するか、殻を持つ生物を攻撃しなければならない。この管虫は理想的な標的だ。


次の瞬間、リンの槌が管虫の外殻を激しく打ち据えた。


管虫は細く、それほど硬くない。外殻は一撃で裂け目が入った。


リンは相手の殻の硬度を気にしていない。殻質物を溶解・再構成し、甲殻を理想的な硬度に調整できるからだ。


カキッ……


管虫の外殻はリンの打撃で砕け散った。内部の柔らかな器官が露出した。


続いて捕食者の仕事だ。彼らは殻の破片をリンへ持ち帰ると同時に、管虫の柔らかな身体を引き裂き、養分と殻質物を両方とも無駄なく回収する。


管虫の体内構造は非常に単純で、リンは研究する興味すら湧かなかった。


細かな殻質物は直ちに護衛者体内へ運ばれ、溶解・再構成される。リンの輸送母艦は方向を転じ、近くの管虫を攻撃に向かった。


輸送母艦全体を覆う甲殻を作るには、およそ十匹の管虫が必要だろう。


輸送母艦の触手には殻を装着しないつもりだ。柔軟性を損ないすぎる。


リンが次の管虫を打とうとした時、その管虫は引き込まなかった。代わりに体をくねらせ、大量の青色液体を噴出した。


この液体は無数の微細粒子で構成されている。リンの特殊な眼球には、それがはっきりと映った。


……ウイルス?


液体には膨大な量の糸状ウイルスが含まれ、少量は管虫本来の細胞だった。


管虫はウイルスを放出して攻撃するのか? いや、この管虫がウイルスに感染していたのだろう。


現在の環境では、ウイルスは実際それほど一般的ではない。細胞を破壊するが、細胞も逆にウイルスを殺す。細胞が大量に存在する環境では、むしろウイルスの方が抑制されている。


この管虫のような特定の多細胞生物だけが、ウイルスの大規模な発生を引き起こすのだろう。彼らは漂ってくるものは何でも食べる。ウイルスを捕食しても不思議はない。


リンの輸送母艦は決して直接養分を摂取しない。何であれ他の兵種が運んでくる。そのため輸送母艦がウイルスに侵入される可能性はほとんどない。しかもリンはウイルス対策の良い方法を思いついていた。


リンは蓄気者を順番に外で活動させ、酸素を取得させる。そのため常に何匹かの蓄気者が輸送母艦の周囲を漂っている。一部のウイルスが蓄気者の吸気触手に紛れ込み、触手内層の細胞に侵入した。


ウイルスが細胞に侵入すると、リンは即座にそれを感知した。直ちにその細胞の周囲を急速硬化する殻質物で覆い、ウイルスが分裂する前に完全に封印した。


最後に硬化した細胞を排出すれば、簡単に解決する。


その他、直ちに細胞を死滅させるのも有効な手段だ。ウイルスは生きた細胞内でしか増殖できないようだ。


リンは血管構造を少し拡大し、腺細胞をその中で遊泳させた。これにより全身へいつでも殻質物を供給できる。どの部位の細胞も迅速に殻質物を吸収して硬化させられる。このシステムはウイルスやその他の微小生物の侵入を効果的に遮断する。


リンはウイルス攻撃を無視し、この管虫を完全に破壊し、無駄なく回収した。


さて、次は……


リンが他の管虫を攻撃しようとした時、緊急信号が思考に飛び込んできた。輸送母艦後部にいた護衛者が攻撃を受けたのだ。


リンは護衛者が自らをはるかに超える強大な力で引きずられているのを感じた。輸送母艦が振り向いた時、目に入ったのはただの砂の窪みだった。


何らかの生物に砂中へ引きずり込まれたのか?


リンは護衛者に目を装着しなかったことを後悔した。今感じ取れるのは、護衛者がその力で強く押さえつけられ、もがいても逃れられないことだけだ。


円盾蠕虫と同等か、それ以上の多細胞生物のはずだ。そうでなければ護衛者をあんなに容易く引きずり込めない。


掘り出してみるべきか?


護衛者はそれ以上深く引きずり込まれてはいない。まだ浅い位置にいるはずだ。


リンは躊躇した。いずれにせよ、輸送母艦の安全を最優先する。


しかし……護衛者を失うのは惜しい気がする。


結局、リンは砂の窪みへ接近した。輸送母艦の触手で中心部を掘り始める。砂粒をある程度かき分けると、護衛者の体が見えた。


護衛者の後半身が、二層の巨大な円盤形の硬い殻に挟み込まれていた。強大な圧力のもと、リンは護衛者の体が今にも切断されそうなのを感じた。


リンはこの種の生物を覚えていた。以前、葉形虫の出没する地域に多数生息し、殻が非常に硬かった。しかしリンは彼らが動くところを見たことがない。まさか、こんなに強力な捕食者だったとは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ