第43章 荒れ果てた世界
新たなユニットは『探索者』と命名された。その体型は護衛者の半分ほど。薄い甲殻に覆われた楕円形の胴体には、酸素を吸入するための微小な孔が多数開いている。頭部には二つの眼球と照明用の提灯触手が備わる。体内には小型の心臓と血管構造が組み込まれている。
胴体周囲には、合計八本の甲殻に覆われた節肢脚が伸びる。リンはこれらの節肢に円盾蠕虫と似た関節部分を加え、節肢内に充填された筋肉と組み合わせることで、高速移動を可能にした。
『探索者』が組み立てられた目的は、狩りや敵殲滅ではない。水面の向こう側の世界を探索するためだ!
リンは未知の領域を探検するのが好きだった。前回水面に偶然到達して以来、この考えを抱いていた。そして甲殻の製造に成功した今、ついにその考えを実行に移せる。
リンは白昼ではなく、より安全な夜を選んだ。甲殻はあるが、無水状態で紫外線を防げるかは確信が持てないからだ。
探索者は動き出した。上り坂の方角へ素早く歩を進める。この一帯は主に礫で構成された環境で、探索者にとって歩行は非常に容易だった。
夜間は水位が依然として高いため、水面はまだ見えない。しかしリンが探索者に製作した提灯は少し異なる。光球が全身発光するのではなく、発光部位を片側に集中させ、一方向へ向けて組み合わせて提灯とした。さらに提灯の両側を殻で遮蔽したため、放たれる光はより遠くまで届く。提灯触手を上げれば、水面の位置を確認できる。
探索者が上り坂を進むにつれ、水面の位置はどんどん低くなった。周囲の環境も元の礫地から、黄褐色の細かい砂粒へと変わっていく。リンはこの色の砂粒を初めて見た。
探索者はすぐに目的地に近づいた──水面と大地の境界線だ。
その向こうへ一歩踏み出せば、リンは水を離れ、気体の領域へと足を踏み入れることになる。
『興奮』と呼ばれる感覚がある。
どうやら水を離れることは非常に重要な出来事らしい。だからこの感覚が生まれるのだ。
リン自身はそう思っていない。単なる新領域の探索に過ぎないと考えている。リン自身が上陸するつもりはなく、ただ『好奇心』を満たすためだ。だがなぜこの感覚があるのか?リンにはわからない。
とにかく、続けるだけだ。
探索者の身体は歩みと共にゆっくりと水面を抜けた。リンは再び、気体領域に属する虚無感を感じた。天を覆う星々の輝きが、前方の道を照らしている。
この新世界を、リンは『陸地』と呼ぶことにした。提灯は不要だ。星々の光がすべてを照らし出している。
『陸地』は荒れ果てた場所だった。黄褐色の破片と砂粒に覆われ、所々にそびえる巨石を除けば、何もない。
しかしリンは止まらなかった。
探索者は再び一歩を踏み出した。その節肢もまた身体と共に水を離れ、新世界へと降り立った。
そして、転倒した。
水を離れた瞬間、重力が急激に増大したかのように感じられた。たちまち探索者を地面へと引きずり下ろし、身動きを取れなくした。
リンが作った甲殻は、この重力に対抗するためのものだった。だがどうやら筋肉の調整も必要らしい。
そう考えつつ、リンは節肢内部の筋肉を迅速に修復させた。細胞たちに分裂と強化を急がせ、巨大な重力下でも身体を支えられるようにした。
細胞たちの迅速な修復作業により、探索者はすぐに再び立ち上がった。今度は転ばない。
探索者は胴体周囲の節肢を動かし、この荒れ果てた世界へと歩みを進めた……
陸上では、水流に代わって寒冷な気流が吹き抜ける。その頻度は水流よりも速い。気流は地面の砂塵を舞い上げ、探索者の外殻を打ちつけた。リンはそれらを表す言葉を持っていた──『風』。
リンは気づいた。この世界における水は、水中の気泡のように、無数の小さな球形粒子として存在している。風が吹き抜けるたび、無数の水滴が連れ去られていく。果てしなく吹き続ける風によって、探索者の濡れていた外殻は、足元の砂粒のように乾ききってしまった。
新世界へ踏み出し、リンはいくつもの新語を得た。しかし次第にある思いが募り始めた……
まったくつまらない。
探索者は陸上をゆっくりとした速度で移動していた。だがその視界には、どこまでも続く黄砂か、あるいは時折現れる巨大な岩塊があるだけだった。
それ以外は何もない。多細胞生物も単細胞生物もいない。ただ舞い散る砂塵と吹きすさぶ寒風だけ。天の川がこれほど美しいのに、大地はかくも荒涼として空虚だった。
リンが陸地に抱いていた好奇心と興奮は、ほぼ消え失せていた。面白そうな新語に構う気もなく、ただ黙々と探索者に一歩また一歩を踏み出させた。
生物がいないということは、食物もないことを意味する。リンは新たな問題にも気づいた。風が探索者の外殻の水分を乾かした後、体内の水分もゆっくりと失われ始めていることに。
水分は殻の微小な孔や亀裂から滲み出て、通り過ぎる気流によって無数の微細な水滴となり、跡形もなく消えていった。
リンはこれまでずっと水中で生活してきた。水分を失う感覚を味わったことはなかった。
しかし今、理解した。それは死を意味するのだ。
水分を失った細胞は瞬時に死ぬ。甲殻の亀裂は修復しなければならない。
探索者の甲殻の下には大量の腺細胞が存在する。それらは各種の亀裂を修復する殻質物を迅速に分泌できる。リンが当初製作した甲殻はそこまで完全ではなかったが、今や全面を覆う必要があると悟った。
リンはすぐにすべての亀裂を塞いだ。換気用に二つの微小な孔だけを残して。
リンは理解した。なぜ他の生物が存在しないのかを。彼らは水を離れて生きられないのだ。
そしてこの荒れ果てた世界には、他の生物を引き寄せるものなど何もない。
しかしリンは諦めなかった。探索者は陸地のさらに奥へと歩み続けた。
今、振り返っても海は見えない。周囲の景色は相変わらずで、砂と岩だけだ。それはリンに幼少期を思い出させた。
あの頃も似たような感覚を抱いていた。『水ばかりで何もない』という感覚だ。
探索者の体内に蓄積された脂肪細胞は、長い時間を歩き続けることを可能にした。しかしリンはこの旅の意義を疑い始めていた。
本当に退屈だ。
単調な環境の中で、リンは注意を上方に向けた。天の星々がゆっくりと変化することに気づいたのだ。光点は時にゆっくりと移動し、時には高速で空を横切る光条すら現れる。しかし多くの光点は通常、静止している。
陸地へ上がって初めて、リンは星々が自分から非常に遠くにあると知った。おそらく、水中のように空気中を泳いで接近しなければならないのだろう。
それは……あまりに困難だ。
その時、探索者の前方に、少し異なる物体が現れた。
砂丘。
砂丘は水中の砂浜でよく見かける。リンは普段気に留めない。しかし陸上の砂丘はリンにより広い視界を提供してくれるだろう。
探索者は登っていった。砂丘の頂上から遠方を見渡す。
やはりだ。視界の限界まで、ただ砂塵が広がっているだけだった。
こんな場所、訪れる価値などまったくない。
リンはもう歩き続ける気力を失っていた。探索者を砂丘の上に伏せさせ、空を見上げた。
リンは気づいた。星空のすべての光点は実は動いているのだと。星々の配置が絶えず変化するにつれ、周囲の環境の明るさもそれに伴って変わっていく。
ゆっくりと、周囲が明るみを帯び始めた。そして天の星々は次第に消えていった。
すべてが『白昼』の光に飲み込まれたのだ。
白昼が到来した。
周囲が完全に白昼の光に包まれた時、リンは大気中の温度が明らかに上昇したのを感じた。強烈な紫外線が探索者の節肢関節や体表の気孔から直撃し、体内の細胞を驚異的な速度で破壊していく。
白昼の光がさらに強まるにつれ、紫外線は探索者の外殻さえも貫通した。内部の細胞は急激に死滅していった。
次の瞬間、探索者は死亡した。リンの陸上への旅はここで終わりを告げた。
帰ろう……
浅瀬に待機していた輸送母艦はゆっくりと方向を転じ、深淵へと泳ぎ出した。
まったく無意味な旅だった。




