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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第六章・第二話 奇跡の秘薬は魂の定めに従うんだけど、盗賊のせいで勇者計画の結果は思いもよらない

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251 支配人は理由を勘違いしているんだけど、王女が英雄を喜ばせたいのは間違いではない


    - - -



「お待ちしておりました、ミリリア王女殿下」

「出迎え、ありがとうございます。

 営業時間外にも関わらず、突然の来訪を受け入れて下さり感謝申し上げます」


 応接室でミリリアを迎えたのは、娼館の現支配人だ。

 かつては自身も娼婦を務めていたという異色の経歴の持ち主は、自国の王族の突然の来訪に内心で警戒を強めた。


 税務関連の提出書類は、何も問題ないはずだ。

 いくつか常連のお友達(・・・)が優遇してくれている点についても、問題になるような事ではないはず。

 少なくとも、突然王族が馬車で乗り付けてくるような、致命的なミスはありえない。

 ならば一体、この王女はなぜうちへやってきたのか――


「警戒なさるのもごもっともかと思います。

 それでは、早速ですが本題に入らせていただきますね」

「いえ……申し訳ございません。

 王女殿下が当館へご来訪下さった理由に検討がつかず、自らの不徳を恥じるばかりにございます」


 軽く頭を下げる支配人に、小さな頷きで返すミリリア。


 ミリリア自身、娼館の有する技術と知識には興味があるものの、今は一刻も早く目的を達成して城へと戻りたい。

 そうして、首尾よく話を進めたご褒美に、愛しの盗賊に頭を撫でてもらいたい。

 あわよくば、せっかくお泊りなのだから、エリクサーの使用は出来る限り先送りして、何日でも城に泊まって欲しい。

 それでそれで、夜に二人きりで、お酒を傾けながらソファでゆっくり話したりして、酔ったフリをしてハルト様にしなだれかかっ――


「ミリリア様」

「はっ。

……こほん。失礼いたしました」


 思考が脱線し始めたミリリアを、斜め後ろに立ったメイドが小声で呼び止めた。


 メイドとは、仕える主人の心の動きに対し非常に敏感なものだ。

 ましてそれが王族の専属ともなれば、主の息遣い一つで内心を完璧に読み取れなければならない。

 盗賊を前にした時以外、茶髪の貧乳メイドは非常に有能なのである。


 そんな風に、ここに居ない盗賊が、二人の少女の脳裏から歩き去ったところで。

 ミリリアは、本題に斬りこんだ。


「こちらに、ジュネ様とおっしゃる方が働いておられるかと思いますが――」



 改めて支配人に確認したところ、ハルトから聞いた話に間違いはなかった。


 ジュネがここで娼婦として働いており、この娼館の人気ナンバーワンであること。

 ジュネには、身請け金額が設定されていないこと。

 病床の一人娘がおり、二人暮らししていること。


 ハルトから聞き出した話は他にもあるのだが、この分ならそれらも全て間違いないだろう。

 そもそも、交渉に関係のない話題については、今確認する必要はない。

 大事なのは、ハルトを奪われないこと――ではなくて、メイデンであるジュネの娘の命を救うこと。

 そして、世界平和のために、その意識を未来へ向けてもらうことなのだから。


 なお、身請け金とは『これだけの金額を払ってくれるなら、娼婦を辞めてあなたのものになります』というお金の事だ。

 一晩ではなく、娼婦の一生を購入するための金額、と言ってもいいだろう。

 奴隷などとは比べ物にならない程高額であるのが一般的だが、娼婦自身が買われる事を望む場合には、交渉次第で減額される場合もある。

 通例では娼婦自身と娼館が半分ずつとなるのだが――今は関係ないので割愛。



「本日、ジュネ様にお仕事の予約は入っておられますか?」


 確認してもらったところ、ジュネに予約は入っていないとのことだった。


 娼館の運営上、どうしても避けられない場合を除いて、基本的にジュネは予約を受け入れない。

 これもハルトから聞いていた通りである。

 娘の急な容態の変化がありえるため、ある程度は自由に勤務をコントロールしているのだ。

 一部の固定客から若干の不満の声があるものの、人気があるからこそ叶えられるわがままであった。



「それでは本日一晩、ジュネ様を連れ出してお付き合いいただきたく。

 よろしくお願いしますね」


 決定事項、とばかりにミリリアが笑顔を向ける。

 未だに目的の見えないミリリアを前に、顔には出さず支配人は必死に頭を巡らせた。



 戦争を終えた後、ミリリア王女が勝利の立役者である『英雄』ハルト卿との婚約を発表したのは記憶に新しい。

 ならば、婚約者を悦ばせるため、あるいは逆に英雄を己の言いなりとするために、娼婦としての手管を学びたいということであろうか?


――なるほど、この理由であれば納得できるものだ。

 貴族の中にも、稀にこう言った依頼はありえる。前例のない話ではなかった。



 逆にハルト卿がジュネを抱きたいと希望し、王家側が諸々に配慮した結果、ここへジュネを迎えに来た可能性もあるだろうか?


 その場合は、王女自らが娼館を訪れる必要はないだろうと思う。

 身請けしたいということであれば上下関係の誇示のためにありえる、か?

 だがさっき王女自身が確認してきたように、ジュネは身請け金を設定していない。やはりこの可能性は高いと思えなかった。



 いずれにせよ、多少の不安はあるものの、支配人としては王家に逆らうつもりはない。

 むしろ、十分な金額を支払ってもらえるならば、上客と言っていい。王家の人間も利用したとなれば、金銭以上に箔がつく。


「かしこまりました。

 当館としては、ミリリア様によるジュネの連れ出しについて了承致します。

 ジュネを連れて参りますので、その間にこちらをご確認いただけますようお願いいたします」


 連れ出し用の契約書をテーブルに置いて示すと、支配人はジュネを呼ぶようにスタッフへ言付(ことづ)ける。


 示された書類を一読すると、背後のメイドに渡して確認させるミリリア。

 程なく、部屋へと一人の娼婦が通された。



「失礼いたします。

 ミリリア王女殿下にご指名いただきました、娼婦のジュネにございます」


 頭を下げたその姿を一目見て、ミリリアは内心の警戒レベルを跳ね上げた。


「ミリリア=ファン=フェイルアードと申します。

 我が国一と名高いジュネ様にお会いできましたこと、感謝いたします」



 穏やかで優しげな、垂れ気味の大きな瞳。

 無意識に安心させられてしまうような、紅を差した唇が描く柔らかな微笑み。

 髪を耳に掛ける何気ない仕草にも漂う、女の自分でも息を飲まされるような濃密な色気。

 指先や髪の揺れまで計算し尽くされた、貴族以上に完璧な礼法。


 そして、何よりも。


(大きい……!)


 ミリリアに及ぶのではないかと思われるほどの、薄絹では全く隠しきれていない、大きく大きく張り出した胸。

 そのくせ腹回りは細く、お尻はミリリアよりも大きく。まさに、男の欲望を元に作り上げたかの如き肢体と美貌であった。


 間違いなくハルト好みと思われる娼婦の存在に、改めて内心で気を引き締める。

 そんなミリリアの様子を知ってか知らずか、ジュネは嬉しそうに笑顔を浮かべるのであった。

金髪の超巨乳王女「大きい……! 思わぬ伏兵の登場です」


銀髪の超巨乳僧侶「私はまだ成長しています、必ず追い抜きます!」



茶髪の貧乳メイド「非常に不本意な評価をされました。とりあえず盗賊は抉りますね?」





 祝・ごーるでんうぃーく連続更新中!

 ハルトさんは幕間で抉られてるけれど、明日も更新です!

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