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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第六章・第二話 奇跡の秘薬は魂の定めに従うんだけど、盗賊のせいで勇者計画の結果は思いもよらない

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252 王女とメイドは娼婦と対峙するんだけど、何もされていなくても警戒を強めざるをえない


    - - -



 娼館での一幕から、一刻ほど。

 行きに王女(ミリリア)を乗せた王家の馬車は、乗客として新たに娼婦(ジュネ)を加えて城へと戻っていた。


 王族による娼婦の連れ出しということで、行先が城であることは予想していたのだろう。

 一切の動揺や驚きを見せず、変わらぬ柔らかな笑みを浮かべたままのジュネに対し、ミリリアは少し警戒を強めた。

 刺客とか害意という意味ではなく、婚約者の心を奪う強力な()の一人として。



 王城へ着いた後、そのままミリリアとジュネは、メイドのユティナだけを連れて応接室の一つに入った。

 室内に居るのは三人のみ。

 その状態となったことで、ようやく緊張から解放されたとばかりに、ミリリアが小さく息をついてみせた。


 ミリリアとジュネが向かい合ってソファに腰を下ろす。

 その傍らで、ユティナがそれぞれの前へ紅茶を並べた。


「まずは我が城までお越し下さって、ありがとうございます」


 紅茶を一口含んで喉を潤してから、ミリリアが向かいのジュネに軽く頭を下げた。


「下賤なこの身にお城へ入る機会をお与えくださいましたこと、深く感謝申し上げます。

 娘に、良い土産話ができそうです」

「娘さん、ですか」

「はい」


 ミリリアに倣い、ユティナ(メイド)のいれた紅茶に口を付けるジュネ。


 その所作を、ユティナは気取られぬ程度にじっと観察する。

 主人であるミリリアとは異なり、盗賊の好みだの理不尽な巨乳だのは関係なく、あくまで相手の所作のレベルを量るために。

 そう、けしからん胸のことなど関係ないのである。主以外の巨乳と、それに目を向ける盗賊は敵であるが、今は関係ないのである!



「まず、最初にお聞きしたいことがあります」

「何でもお聞き下さいませ」


「あなたは、娼館で身請け金を設定していない、と聞いております。

 理由をお伺いしても構いませんか?」


 ミリリアの言葉に、小首を傾げてウェーブがかった髪を揺らすジュネ。


 少し困ったような苦笑でさえ色っぽいのだから、始末に負えないなとミリリアは内心で嘆息した。



「私如きの事を、よくお調べになられているのですね。

 でしたらご存じかと思いますが、娘の病が治らない限り、私は誰かの下へ行くことはございません」


 ジュネも、かつては一応身請け金を設定していた。

 だが、身請けされた娼婦が、必ずしも愛と幸せの中で暮らせるわけではない。


 そもそも、身請けとは半ば『商品』としての価格設定だ。そこに娘の状況への配慮など存在しない。

 ジュネが働くのは娘のためであり、生き続けるのも娘のため。

 ならばこそ、この身を身請けさせる(商品とする)のは、娘の幸せが対価となる時だけなのだ。


「ならば、あなたの娘の病の完治と引き換えであれば?」

「喜んで、娘を治して下さった方のものとなりましょう」


 ミリリアの言葉に、後を続けるかのように。

 誇らしげな笑顔と共に、ジュネは大きく頷く。

 その笑顔の下で、まるで同意するかのように、頭の動きにあわせて大きな胸も上下に揺れ動いた。


 それを見てユティナは、特に理由があるわけではないが、ただなんとなく『そうだ、盗賊、刺そう』と思った。



「それを聞けて安心いたしました。

 あるお方より、あなたの娘――クォミーエさんを癒すための薬を受け取っております」


「薬……?

 失礼ですが、その薬はどのようなものでしょうか」



 ジュネは、王都で最も大きな娼館の、人気ナンバーワンの娼婦だ。

 それすなわち王都で一番の娼婦ということであり、このフェイルアードという大国でナンバーワンと言って差し支えないだろう。

 そのような存在のジュネであるから、身請けを希望するものは年齢や身分を問わずこれまで非常に多く存在してきた。


 金額の設定がないにも関わらず、大金を積み上げて身請けを迫るもの。

 お金で(なび)かないのならば、己のものとなれと脅迫をするもの。

 犯罪すれすれどころか、明らかな犯罪行為に巻き込まれたことも一度や二度ではない。


 そのような状況の中、娘の病を理由に身請けを断るとともに、一縷の望みを掛けて、娘を治せるのであれば身請けを考えると宣言。

 それにより、ジュネを身請けするため、クォミーエを癒す薬を渡してきた男も何人も居たのだ。


 それらの結果がどうなったかは、今もまだクォミーエが病床にあることから明らかであろう。

 否、最も悪辣なケースとしては、薬と偽って毒を渡してきた者さえ居た程だ。


 娘の治療を対価に求めつつも、持ち込まれた薬に対し警戒心を持つのは当然の事。

 ましてそれが、己が飲むのではなく、娘に飲ませるものであれば、母親としてどれほど警戒しても、し足りないぐらいであった。



 ジュネの当然の質問に対し、ミリリアは無言で一枚の用紙をテーブルに置いた。


 その書類の名称は『鑑定証明書』

 錬金ギルドが発行する、鑑定した物品の正体が記載の通り間違いないことを証明した紙だ。


 紙面の中央に刻まれた、アイテムの名は――



「エリクサー。


 万病を癒し、寿命すら超越し、死をも覆す奇跡の雫。


 クォミーエさんの病を治すために、勇者が用意した(・・・・・・・)、たった一つの治療手段です」

異次元を旅行中の勇者「…ぁ、はーっくしょん!」

一緒に旅行中の女騎士「オスティン、大丈夫? またあの盗賊あたりが噂してるのかしら」




茶髪の貧乳メイド 「そうだ、盗賊、刺そう」

この後刺される盗賊「脈絡なさすぎません? 酷い」




 ジュネさんとミリリアの会話シーンも終了という事で、祝・ごーるでんうぃーくの三日連続更新でした!


 勇者が用意したというエリクサーとは、いったいどういう事か?

 それよりも、メイドに(前話で)抉られ(今話で)刺された盗賊の安否はいかに!?


 気になる続きは、また次回・毎週月曜お昼の定期更新で!

 次回から、怒涛の盗賊タイムがスタート! お楽しみに☆

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― 新着の感想 ―
更新乙 ふ~ まとめて読んだぜ! 結論「盗賊は情報だけ絞り出して後方待機の方が話は捗るwww」 つまり情報と子種だけ出してベッドに縛り付けるのが吉 みんな仲良く搾り取るんだよ~ おばちゃんもこっそり…
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