250 伝説の秘薬は用意できたんだけど、病を治すには母親の好感度を高めなければならない
街中で襲ってきた盗賊ギルドの襲撃は退けたが、小悪党というのは害虫のように際限なく湧くものだ。
所持しているエリクサーの価値が価値だけに、再び盗賊ギルドや何かしらの勢力から狙われるかもしれない。
それを危惧したミリリアの勧めに従い、今日は皆でお城にお泊り会である。
オレ一人なら、盗賊ギルドが束で来ても問題ないんだけどね。誰かをさらわれたり人質に取られたりしたら困る。
エリクサーの使用を終えるまで、お城に滞在させてもらい、皆にはお城から出ないようにしてもらおう。
さて。改めて、思考を現在の目的達成に向けたいと思います。
原作のゲーム内で、メイデンであるクミちゃんの治療のために必要なものが二つあります。
一つは、言うまでもなくエリクサーです。
この世界に来て2ヶ月、今日ようやく錬金により手に入れることができました。
早いか遅いかで言えば、十分に早いです。
(この世界に来た当初から進めていた『弱くてニューゲーム最適攻略チャート』のおかげですね)
もう一つは、母親であるジュネさんの好感度となります。
そもそも今のわたしは、クミちゃんに会ったこともないし、家がどこにあるかも把握しておりません。
ジュネさんの好感度を上げ、信頼を勝ち取ることで、初めてクミちゃんにエリクサーを使うことができるのです。
つまり、クミちゃんを助けるためには、これからジュネさんの好感度を十分に稼ぎ、信頼を勝ち取って家に案内してもらわなければならないのです。
「そういうわけですので、世界を守るために、オレは今から娼館に行かなければならないんです……!」
「「「却下」」」
懇切丁寧なオレの説明を、無慈悲な一言でばっさり切って捨てる美少女達。
具体的には、セーナとミリリア、それにユティナさんだ。
「ええーっ!
メイデンの命を救うため、ひいてはこの世界を救うために!
絶対に必要なことなのに!」
「ハルトさん?
あなたは、勇者の友人であるのみならず、ご自身が英雄となりました。まさに、女神様より遣わされし使途と言っても過言ではありません。
そのような立場の方が自ら娼館へ向かうなどと、人々がどのような目をお向けになるか分からないとでもおっしゃるのですか?」
「分かりたくねぇ!(今ここでわたしが娼館に行く事こそが、世界平和のため、女神様のために必要なのです!)」
「非常に口惜しいことではございますが、盗賊様はこの国の貴族になられたのです。
あなたの一挙一動には責任を伴うご身分、娼館へ向かうとあらば斬らねばなりません」
「隙あらば殺そうとすんのやめて!?(この国と世界の平和のために必要だからするのです。これこそが貴族としての責務です!)」
「ハルト様自らが行動なさる必要はありません。
あなたは、その、わっ、わたくしの……
婚約者っ、なのですからね?」
「あああミリリアがオレの婚約者なんて幸せ大好き何でも聞いちゃう……!(はいっ、わかりました!)」
この後、セーナさんとユティナさんに拳でぼこぼこにされました。
だが大いなるミリリアの愛の前にも痛い痛い土下座(なぜなのですか、わたしは英雄であり貴族として、心からこの世界の平和のためにですね……!)
ジュネさんとクミちゃんの対応については、セーナとミリリアの話し合いによって具体的な段取りが定められた……らしい。
オレの意見?
一応、耳には入れてもらえましたよ?
採用されたかどうかは女神、もとい美少女達のみぞ知るということだ――
- - -
天頂を過ぎた太陽が、その光り輝く身に夕暮れの赤を纏う頃。
王都のやや寂れた裏通りを、王家の紋の入った一台の馬車が進んでいた。
一目で分かる威容に、なぜこのような場所にこんな馬車がと数少ない通行人達がちらちらと視線を向ける中。
歩みを緩めて馬たちが足を止めたのは、王都で最も大きな娼館の前であった。
普通、娼館を訪れる貴族は、自らの素性や来訪をひけらかしたりはしない。
国家に営業が認められ、法的に何ら問題がない娼館だとしても、己の下半身事情など大っぴらにしたくないのが人情というもの。
場合によっては性癖やら隠し子やらといった醜聞、果てはお家騒動にまで発展しかねない。
だからこそ、娼館は人気の少ない裏通りに居を構え、そこを訪れる者もどことなくこそこそとした振る舞いをするものだった。
だというのに。
その馬車は、王家の使いである事を一切隠さず、さらには馬に乗った騎士達で周囲を固めた状態で娼館に乗り付けた。
停車した馬車より姿を現したのは、周囲の無言の予想に反し、見目麗しい美少女だ。
しっとりと濡れた艶のある娼婦たちと異なり、煌めく太陽のように華やかな光ある美しき少女。
大陸一の美姫とも呼び囃される、フェイルアード王国第一王女。
ミリリア=ファン=フェイルアードである。
馬車から降りたミリリアは、一人のメイドと二人の騎士を連れて娼館の中へ向かった。
馬車の周囲を囲んでいた護衛達は、ミリリアが娼館へ入ると無言で館の入り口の両脇に立つ。
その姿はあたかも娼館の護衛騎士のようで、後から娼館を訪れた客を大いに驚かせるのであった。
祝・ごーるでんうぃぃぃぃぃーっく!
よーし、連休を祝して残り三日間も連続更新しちゃうんだぜー☆
というわけで、次回は明日のこの時間で!




