暗雲
総督 ルーク・クレアシオン(クレアシオン王国 第四王子)
魔法師団長 ハリス・フルーム
オーモンド隊 隊長 ロン・オーモンド(少尉)
いちなが脱出した次の日の出来事
今回少し長いです。
朝、いつも通りにいちなちゃんに朝食を届ける為にカートを押しながら客室をノックし開錠した。いちなちゃんには悪いけど突然出ていかれるのはハリス師団長からの指示もあり困るから。
と言っても実は、自分自身がいちなちゃんを失う事が怖いと思っているから。
いちなちゃんが感じている違和感に気づかないふりをして普通に対応する。彼女は雰囲気に流される事が多いからこんな感じで正解なのかなって思うようになる。
少しずつ彼女の感覚が狂えばいいのに。
確かに彼女の魔力の質は特別なのかもしれないが、僕が欲しいのは彼女自身。
始めは監視対象として見ていただけなのに…。
「いちなちゃん、おはよ」
ロンはドアを開けてカートを中に入れる。いつもだとソファーに座っていて彼を迎え入れながらおはようございますという声が聞こえてくるはず…
部屋の中がひんやりしている。そして人の気配がしない。
ロンはカートをそのままにして、寝室をノックしドアを開けた。ベッドが使われた形跡がみえない。
嫌な予感がする。
トイレ・お風呂・クローゼット全て開けたが彼女は見つからない、ロンは焦って周りを見回す。見えていたはずの窓にふと視線がいく。どうして、こんなにカーテンが揺れているのか
「まさか!」
ロンは窓際まで走ると、鍵がかかっていない窓が少し空いている事に気づく
「おい、ここ6階だぞ…」
いちなには、場所を把握されないためにわざと転移で階移動をさせていた。
ロンはすぐにハリスに報告すべくタグメッセージを送ろうとした時、
コンコンコン
いちなの部屋をノックする音が聞こえる。
ロンはハリスがやってきたのかと思いドアを開けると
「おはよう。オーモンド隊長」
ルーク王子が訪ねてきたのだった。
「おはようございます。ルーク総督」
ルークはロンを見て鼻で笑うと
「私の階位を知っていたんだな」
と嫌味を言われる。
ロンは敬礼をしながら
「はっ、ルーク総督は我が軍部のトップであらせられます」
失礼を欠いたと思ったロンは自分の立場を理解しながら言った。
「では、この状況をゆっくりと確認しようではないか」
そう言いながらルークはいちながいた客室を後にした。
ロンもルークの後に続く。
ハリスの部屋の前に着くと、ロンが即座にルークの前に立ちノックをし入室許可をとる
「失礼します。ルーク総督がいらっしゃいました」
「お入りください」
ハリスの声でロンはドアを開けルークが入室できるようにした。
ルークの機嫌は悪く、ハリスが挨拶する前にソファーに座る。
すると、再びノック音が聞こえる。ロンはドアを閉めていなかったのでマナーとして叩いたみたいだった。
その相手は、ルーク付きの秘書官だった。
「失礼します。ルーク王子、これがさきほど届きました」
秘書官がルークに見せたのは綺麗に洗濯されたいちなが着ていた魔法軍の軍服だった。
「ありがとう、それはオーモンドに渡しなさい。君は、私の執務室で引き続き仕事をお願いします」
ルーク付き秘書官はお辞儀をした後ハリスの部屋を出ていた。
「さてと」
ルークは足を組みなおし対面に座っているハリスに向かって
「これはどうゆうことが説明してもらえるかな?」
ハリスは、いちなの魔力について力説した。そして、練習棟で見せた威力の素晴らしさや彼女が魔法軍に所属することの意義など魔法好きのルークにもハリスの主義は十分理解はできたが。
「ハリス師団長の考えは理解した」
その言葉にハリスは明るい表情になる
「それでは、いちなさんを魔法軍にぜひ召喚してください」
「それはできぬな」
「どうしてですか!」
ハリスはさきほど理解したという言葉を放ったのに否定するルークの考えが分からなかった。
「本人の意思決定ではないだろう」
「うっ、そこは時間をかけて」
「だから、軟禁状態にした時点でいちなの意思などないに等しいのではないか?」
ルークの指摘に、ハリスはソワソワしだす。
「今回の対応は本当にマズいぞ。いちなは、ロストだ。寮に戻ってこの事をロスト関係者に伝わると反発を招くぞ」
ルークは溜息をつくと
「とりあえず、今回の件はどう動くか分からない。ハリス師団長は少し頭を冷やしなさい」
ルークはハリスの後ろに立っているロンを見据え
「実行犯は、オーモンド隊長でよいな」
ロンは目を伏せながら「はい、私がやりました」と言うと
ルークは立ち上がると同時にハリスも立ち上がった
「フルーム師団長は、謹慎1週間、オーモンド隊長も同じく謹慎1週間とする。その間の指揮系統はそれぞれ、モーエン副師団長 グレイ副隊長に移行する 以上」
二人は最敬礼をしながらその言葉を受け取った。
ルークはそれを言い終えると自分の執務室に戻った。
ルークが退出するのを見届けると、ハリスは項垂れるようにソファーに座る。
「ルーク王子はどうして、いちなさんの重要性を理解しようとしないのか私には分からないよ」
溜息をこぼすようにつぶやいた。
「ハリス師団長、今は時期をみる時なのかもしれないです」
ロンの前向きな発言にハリスは苦笑いをし
「でも、これ以上深入りするとロンの出世に響いちゃうよ」
「僕にも、周囲が見えなくなるほど欲しいと思う事があるんですよ」
今、気づきました。
そして
ルーク王子には負けない。
ハリスは後ろに立つロンの今まで見たことのないギラギラとした目を見ながら
「じゃあ、私もがんばっちゃおうかな」
と強かに微笑みながら次の作戦を考え始めていた。
最後までお読みいただきありがとうございました。




