いちな、ありのままで魔王城に呼ばれる! 2
ロスト 高橋いちな
アーテル・フィーニス・オプスクーリタース(通称 魔王)
「そうそう、あの羊の角ついた魔人ね~。みかけはかわいいのに腹黒なのよ」
といちなは思わず言葉をかえす。
魔王は、それを聞くと歩くのを辞めていちなを振り返る
綺麗な赤い目にうっすらと涙が溜まっているみたいだった。
そして、いちなの両手を上から包み込むように握ると
「そうだな。インティウムがよく言っていた言葉だ。宰相とはあまり仲がよくなかったな」
いちなはとまどいながら
「今のは私じゃないです。けどイメージが目の前に現れて…」
「そうか、魂のままの方がいちなよりインティウムの記憶に触れることができるのかもしれんな」
呼んでよかった。と言いながらまた魔王はいちなの手を引いてスタスタと歩き出した。
魔王のなんとも言えない感情をいちなは受け取ってしまい、もう少しこのままでもいいかと絆されているのだった。
しばらく歩いていると一つの扉の前に着いた。他の部屋の扉と同じ様に見えるが魔王がいちなに開くように伝えた。
いちなはノックをした後そっと扉を開けると、中から眩しい光が差し込んできた。
魔王城の色合いとはとても不釣り合いで中を覗くと
「うわぁ~」
前面ガラス張りの温室になっていた。
「インティウムの希望で作ったのだ」
二人で温室に入ると王立公園のような木々や花が咲いていた。
「前のインティウムさんは自然が好きだったのですか?」
いちなは魔王に聞いてみる。
「そうだな、一応こちらにも植物はいるのだが『何か違う』と言われてしまった」
「なんだか、こちらの植物を見るのが怖いですね…。」
温室の奥にガーデンテーブルとイスがセットで備え付けらていて、その上お茶の準備が整えられていた。
魔王にエスコートされながら座ると
「お腹がすいただろう、さあお食べ」
と勧められる。
「…でも、私は今実体がないですよね?食べれるのですか?」
魔王は一瞬遠くを見ると
「魔力に変換されるのではないか…な」
あっこれ適当なやつだな。
いちなは見抜いた。
「せっかくなのでいただきます!」
駄目だったらどこかにこぼれたりするのかなと思いながら勇気を出してスイーツを頬張った。
「うん、おいしぃ~」
なかなか、この世界に来て甘いものを食べる機会がなかったのでいちなはちょっと嬉しかった。
「魔王様、体から食べたものが出てこないです!」
「お主は、意外と怖い事を言うな」
魔王は苦笑いをしながらもっと食べるように促した。
食べれることが分かったいちなは、スイーツ達を堪能した。
食べている姿を見ていた魔王は
「やはり、魂は同じでも違うものなんだな」
と少し寂しそうに紅茶を飲みながらささやいた。
「それは仕方がないと思いますよ?まったく同じだったら怖いじゃないですか」
「そうだな…。」
一通り食べ終わり満足したいちなは、フォークをお皿に乗せると魔王に話しかける
「イニティウムさんは魔王様の最愛の方だったんですよね?」
魔王は飲んでいた紅茶をティーソーサーに乗せると
「今も愛しているよ。私と彼女は対だからな。元々二人で一つの魂だったのだよ」
「だから、どちらかが消滅するともう片方も消滅しようとする。精神が少しずつ崩壊すると言った方が正しいかもしれんな。」
「もしかして、殺戮とかしていた時代の魔王様って」
「うむ、もしかすると対と出会えなかったり、突然の不幸で亡くしてしまったりしていたのかもしれんな」
「今の魔王様、フィーニスさんはどうして対の方が亡くなったのに穏やかに過ごせているのですか?」
「お主が現れるまで、イニティウムの残してくれたタグが私の精神を守っていてくれたのかもしれぬな」
そして、いちなは少し緊張しながら
「じゃあ、同じ魂の持ち主の私の事が好きなのですか?」
最後までお読みいただきありがとうございました。




