楽しい内緒話
魔法師団長 ハリス・フルーム
オーモンド隊 隊 長 ロン・オーモンド(少尉)
副隊長 イアン・グレイ
今回は本当に長いです。
前後編に区切る場所が分かりませんでした。
すみません。
イアンが激痛から復活したのを後ろ目で確認しながら歩いていると、小走りで彼が追いついてきた。
「この召集ってやっぱりタカハシ殿の件について?」
周囲には聞こえない音量でイアンが確認してくる。
「そうだろうな」
「はぁ~俺、出なくていいと思うんだけど。ロンだけでいいんじゃない?」
ロンは確かにな、とは思ったが
「いちなちゃんについては情報統制されているからな、我々の隊だけで管理したいみたいだよ」
「でも、エリーが早速脱落してるけど」
苦笑いしながらイアンがロンに言った。
「その件については、いちなも了承してるから2・3日の謹慎で解除する予定だよ」
タカハシ殿、神~とイアンが言っているとエレベータホールに到着した。
「では、隊長殿よろしくお願いします」
転移する為の部屋に入るとイアンがロンに転移をおねだりしていた。
ロンは溜息をつきながら
「緊急時はお前も複数人の転移をする必要があるんだから、訓練しとけよ」
といいつつイアンと共にハリスがいる階に転移する。
「あざーす。でも、ロンみたいに魔力が豊富じゃないから。本当に緊急時しか複数人の転移なんて普通の魔法師はできないんですよ」
「そんなものなのか?」
イアンの気持ちが分からないロンはその言葉を流した。
「あ~、これじゃいつまでたっても自分の隊を持てそうにないわ」
遠い目をしながら現実を知るイアンだった。
「僕の元でいればいいじゃん?」
ロンがサラっとイアンに言った。
イアンは驚いて一瞬立ち止まる
「えっ、ロン、俺を口説いてる?」
モジモジしながら言っているイアンを
「まっどちらでもいいけどね」
と鼻で笑いながらロンはハリスの執務室の前まで進むと立ち止まる
「隊長に着いていきますってばぁ~」
友人から上官部下の関係に戻しながらロンに声をかける
「頼むぞ」肩を叩きながら叱咤すると、ドアをノックする。
「入りなさい」ドアの向こうからハリスの声が聞こえる。
ドアを開けてから
「オーモンド隊 隊長ロン・オーモンド入ります」
「同じく副隊長イアン・グレイ入ります」
二人で入室する。
ハリスは執務室の椅子に座り机を隔てて二人の人物がいた。
「よぉ~わが軍のスターじゃないか」
魔法師というよりは陸軍で活躍していそうな体格のいい男性と
「久しぶりね。ロンちゃん達は元気?」
中性的な雰囲気を持つ女性が微笑みながら声をかけてきた。
「はっ、モーエン副師団長、ミルズ副師団長にもご挨拶申し上げます」
と言ったタイミングでロンとイアンは敬礼をした。
「まあまあ、堅苦しい挨拶はここまで。さぁ楽しい内緒話を始めよう」
五人はそれぞれソファーに座るとモーエンが話始める
「で、ハリスがご所望の子は最近落ちてきたロストって本当?」
いちなの事をもう少し詳しく知りたいみたいでロンに話しかける。
「はい、イチナ・タカハシ 18歳 女性 1カ月前ぐらいに王立公園でロストしているところを警備隊に保護され、現在帰依荘に住んでいます」
「ルビーの林檎亭というカフェとバルを併設している所で勤務していました。最初はカフェの時間帯のみ店の雰囲気に慣れたところでバルの勤務を促されたみたいです。しかし、バルの勤務時に魔法師により暴行を受けそうになったところ、魔王様が出現しその魔法師に魔王の爪痕を残し消えたそうです」
「へぇ~。魔王の爪痕残していったんだ」
モーエンは興味深そうに言った。
「私も確認しましたよ。魔王の爪痕、記録でしか知りませんでしたが本当にタグが禍々しく染められていました」
ハリスも思い出すように話した。
「…存在したのですね、魔王の爪痕」
ミルズもハリスの言葉を聞いてやっと認めた形になる。
「はい、それが昨日の出来事ですね。この事件をきっかけにこちらからルビーの林檎亭にはいちなを雇う事を辞めてほしいとお願いし、いちなちゃんには、師団長にもう少し詳しく話を聞かせてほしいと言う名目で訪問してもらっています」
「で、そのまま来賓室にお泊りしてもらうって事?」
モーエンが確認してくる。
「正式には、住んでほしいんだけどねぇ~」
ハリスは笑いながら言う。
今度はイアンが
「タカハシ殿が現在住んでいる寮には当分魔法軍に滞在する事は伝えています」
と報告する。
ハリスはその報告に満足げに微笑む、その表情をみたミルズが
「ハリスがそこまで執着するなんて珍しいわよね」
と感心しながら言った。
ハリスは、目を輝かせながら
「いちなさんの魔法を見ればあなた達もきっと傍にいて欲しくなります。本当に美しいのですよ」
そして、ロンの方をみて
「ロンはいちなさんの魔法を見ましたか?」と尋ねてきた。
ロンは頷きながら
「はい、実は始めに師団長の部屋に行くときに、いちなちゃんがロッドを作ったことを教えてくれまして、説明するために創造したロッドを想像すると、手元からそのロッドを出現させることができました」
ハリス、モーエン、ミルズは、ロンの言っていることが理解できなかった。
モーエンは思わず
「それは、無理な話だろう。魔法で創造した物は触れている間しか物体を保つことができないんじゃないか?」と言った。
魔法師としては基本的な知識だった。
ロンは話を続ける
「はい。私もその認識でした。しかし、彼女の持っていたロッドには革でできていた屑魔石がはめ込まれていたキーホルダーが装着されていたのですが、革部分はチェーンに屑魔石は白銀の粒子が舞った水晶っぽいもの物質変化したそうです」
ロンの説明を最後まできいたハリスは興奮して立ち上がり
「素晴らしい!素晴らしいとは思いませんか?今までそのような魔法を使用した魔法師は存在しないはず。その才能を活用しないなんて!ありえないと思うのです」
「そのロッドをロン以外に見た人はいないのですか?」
ハリスの質問に
「はい、私も確認しました」
イアンが答える。
「ロッドの形はオーモンド隊長の普段使用している小型ナイフを模したものでした。ただ、長さが足りないと思ったらしく、全長20センチぐらいの持ち手に綺麗な細工がされた美しいロッドでしたよ」
イアンが正確に形状を伝えると立っていたハリスは力が抜けたように座り込み
「想像を絶する作品ですね。私もぜひ手にとって見てみたいものです」
興奮するハリスを見ながらロンが
「その件なのですが、どうやら使用者登録を無意識につけていたらしく、私がみせてもらうために触らせてもらおうとすると粒子となって消えました」
「えっロッドが消滅したのですか?」
ハリスは驚きながら聞く
「いいえ、いちなの体内に戻ったという表現が正しいと思います。もう一度出してほしいとお願いをするときちんといちなの手に戻っていましたから」
「本当に規格外な子なのですね」
ミルズの想像を超えたらしく考えが追いつかないみたいだった。
「早く目覚めたいちなさんを二人に会わせたいですね」
ハリスは嬉しそうに答えるがモーエンが
「でもよ、ちょっと強引に宿泊してもらうんだろ?よくそのタカハシは応じてくれたよな?」
ロンは難しい表情をしながら
「そうですね。少し強制的に眠ってもらいましたね」
「でもよ、すごい魔力持ちなんだろ眠らせることなんて普通できないだろ」
モーエンの鋭い指摘にハリスは笑いながら
「二人の間の信頼関係がそれを可能にしたのかもしれませんね」
その言葉にギョっとするモーエン
「それって、ロンとタカハシの関係は大丈夫なの…か?」
ロンは苦笑いをしながら
「それは、彼女が起きてみないとなんとも言えないですね」
と言葉を濁した。
「ロンがその気ならば、そのままいちなさんと一緒になるのも良いかもしれませんね」
ハリスは自分の言葉に納得しながら言う
ロンは焦りながら
「それは、いちなちゃんの立場上厳しいと思いますよ」
「だったら、私の養女にすればいいよ。私の家の方は大丈夫だから」
まるで、方向性が決まったような口調になってきたハリスだった。
「ハリス!とりあえず落ち着いてちょうだい。いくらなんでも早急すぎるわよ」
ミルズが焦りながらハリスをなだめる
「セリア、君も見れば分かるよ。あの美しい魔力を…」
ハリスはいちなの魔力を思い出し神に祈る様に遠い目をしている
モーエンとミルズは目を合わせてから
「とりあえず、タカハシが目を覚ましたらロンお前が対応しろ。この状態でハリスに合わせると何をするか分からんからな」
「はっ承知しました。」
「ミルズ、ハリスの対応を頼む。とりあえずこの話はここまでだ。ハリスそれでいいよな?」
モーエンの問いかけに
「…大丈夫だ」 とだけ答えた。
「他に、報告はないか?」モーエンがロンに聞く。
「はい、実は先ほどエリーがいちなに攻撃魔法を放とうとして…」
「なに?どうゆうことだ?」モーエンの声のトーンが下がる。
「はい、先ほどいちなちゃんががロッドを発現させる際に魔法暴発と勘違いをしてしまい、私を守る為にそのような行動をとってしまいました。幸い、いちなちゃんは許してくれましてできれば罰は軽くとも言われています」
「タカハシが許しているのならば、謹慎二日と伝えよ。ハリスこの件はそれでいいな?」
「ああ、それでいいよ」虚ろ気に答えるハリス
「以上だ、何かあればとりえず俺に指示を仰げ、分かったな?オーモンド隊」
「「はっ」」 ロンとイアンは返事をする。
ロンとイアンが退室した後、ハリスをみたモーエンが
「こいつがこんな状態になったら、俺は何もできない。セリア後は頼むぞ」
それだけを言ったモーエンも静かに部屋を出た。
静かになった部屋にハリスとセリアの二人きりなる。
ハリスの隣に座ったセリアは自分の肩にハリスの頭を乗せる。
しばらくすると虚無状態だったハリスの意識がハッキリしてくる。
そしてハリスはセリアの肩に顔を埋めて
「セリア、また私は君に恥ずかしい所を見せてしまったね」
「仕方ないわよ。あなたの魔力に対する執着は昔からだもの」
肩でハリスが笑ったためセリアに振動が伝わる
ハリスがセリアを見つめるために視線を合わせる
「それを昔から君は理解してくれているんだね」
「ええ、そうよ。あなたにしか分からない世界。でも、私はそんなあなたを含めて…」
ハリスは微笑みながら指を鳴らすとセリアの隣にクッションが出現する
ハリスはセリアの後頭部を支えながらゆっくりとクッションのある方に押し倒してゆく
ハリスの長い髪がセリアに降りそそぐ
「…昔からあなたの長い髪が好きよ」
セリアはハリスの髪を梳きながら彼に身を委ねた。
魔法師副団長 ニコラス・モーエン セリア・ミルズ
最後までお読みいただきありがとうございました。




