いちな、お引越し&お買い物 後編
ロスト 高橋いちな
寮(名称考え中) 寮母 森園 恵
娘 森園 リコ
少し長めです。
いちなは、エッという顔をそのまま森園に向ける。森園も「あちゃ~このタイミングで」
といいながら一度リコをおろして今度はかがんでリコの目線に合わせる。
「じゃあ、これからお母さんと一緒に組合長に魔王さんが出現したことを言いに行きましょう。いちなちゃん、悪いけど先に帰れるかな?道は単純だから迷わないと思うの。」
と言いつつ
「いちなちゃんは私達とは逆だから急だけどここで、ごめんね。この子リコって言って私の子どもよ!またゆっくり紹介させてね」
と言いながらリコの手を持ち慌てて組合事務所に向かった。
「おねえちゃん、バイバイ」とリコも手を振りながら走っていく。
「バイバイ」いちなも返事を返したがもう二人の姿が小さくなっていた。
「なんだか急に慌ただしくなったけど、大丈夫なのかな?」と独り言を言いながら寮のある方へ戻ろうと後ろを向く。
すると
「何が、大丈夫なのだ?」
振り返ったいちなの目の前は突然闇に包まれて…。ん?
くろいふく?
と思いながら視線をググッと上まで上げると
黒い日傘を指した全身黒ずくめの黒髪赤目の美人がいちなの前に現れた…。
「魔王…サマ?」
これが、いちなと魔王のファーストコンタクトだった。
はい、高橋いちなです。私は、今この世界の魔王と呼ばれる方とカフェテリアでお茶を飲んでいます。会話とか、ないです。初対面の魔王とする会話のネタある人いたら教えてよ。もぅ。
「……」
「……」
魔王は日傘を片づけると胸ポケットからきのこの形をしたオブジェを机の上に置きだした。
「なんですか?それ?」いちなは我慢できずに聞いてしまった。
魔王は、フムと言いながら
「瘴消力」
「ん?」
魔王は溜息を付きながら
「だから、しょうしゅう「わー!!!」」
最後の言葉はいちなが大声を出してかろうじて阻止をした。
「なんだ、お主も知っておるのか」
二度も言わせるなとちょっと怒られた…。
いやいや、なんか最後まで言わせてはいけない理を感じたのよ!私。
「私の瘴気がヒドイのでこれで吸引してもらっているのだ。昔ロストの人が作ってくれたのだよ」
と懐かしそうな表情でそのきのこを見つめた。
良い話なんですけどね!ネーミングに悪意を感じますよ!ロストの偉人さんよ!
魔王は紅茶を一口飲むと
「お主はいつ、こちらに来たのだ?」
「4日ぐらい前ですかね?」
「そうか…。」
魔王はしばらく考えて
「うち来る?」
といいやがった。
いちなは魔王の言っている意味が分からずしばらくフリーズしたが
「言っている意味が分かりませんが、謹んでお断りします」
「分かっているから断ったのだろう」と笑いながら魔王に言われた。
そして、いちなの胸元を見て手をかざす。
いちなはすごく怖かったが何も抵抗できなかった。
そして、魔王の手には、いちなのネームタグが握られていた。
「あっそれ!」いちなは焦ったがすぐにとりかえせる距離ではなく困っていると
「大丈夫だ、周囲には見えないように魔法をかけている。というかお主こんなタグを持っていたら、この世界では生きにくいぞ。それに簡単に盗られてしまう脆い紐で留めよって」
といいながら、いちなのタグを覗き込む。この世界は個人情報保護とかないのかね!
「いちなか…。あまり聞きなれぬ名前だな」
魔王はもう一度いちなのタグを片手で握りしめるといちなの胸元にかざした。
すると革ひもがプラチナのチェーンに変わり、ネームタグはプラチナのスライド式のケースに収められていた。ケースには細やかな彫刻がほどこされており一目みただけではタグケースには見えなかった。
「ほぇ~すごいですね」
感心しながら新しい、ネームタグの装飾品を眺める。
それを肘をつきながら魔王も眺めていた。
「その装飾は、いちなと私の魔法でしか解除できぬ故、第三者には触ることができぬ。気を付けて持たれよ」
なんで、魔王の魔法も対象なのかがイマイチ分からん…。
「とりあえず、綺麗なやつに変えてくれてありがとうございます?」
何かに満足した魔王はきのこ型の「かさ」の部分の蓋をあける。中から赤い石を取り出すと、ポケットから透明の石と取り替えた。
「これもお主にやろう。困った時に通貨と交換すると良い」
と言い終えるときのこを片付け日傘をさし商店街の方へ歩いて行った。
「お茶は、そなたが支払ってくれ!」
かっこよく言い切ったが、いちなの奢りということらしい…。
いちなが注文したアイスカフェオレを飲みながら
「「けち」ってそうゆうことね…。」と一人で納得した。
ーーー
いちなと別れた魔王は商店街の散歩を取りやめて自分の城に戻った。
執務室の豪華な椅子に座ると背もたれに体重をかける。
目をつぶりながらいちなの事を思い出す。
「あの魔力は、始まりの…。ようやくこちらに戻ってきたのか。」
魔王は手のひらから自分のネームタグを取り出す。
そこには、二枚のタグが現れた。
自分の漆黒のタグとずいぶん昔に託された白銀のタグ
重なるように握りしめると、白銀のタグが角から銀の粒子に分解されていく。
全て粒子になったのを確認すると
「おかえり、私の対よ」
と言って、残った自分のタグを額に当てながら目をつぶった。
ーーー
最後までお読みいただきありがとうございました。




