ダンジョンアタック
今回はタマモ視点です
一二三と別れたわらわ達は現在エリアルを先頭にダンジョンを歩いていた
ダンジョンを歩き始めてまだ10分ほどだが、既に3つのトラップが仕掛けられていたものの、エリアルが手際よくトラップを解除しているため、こちらの被害は今だない
こう見るとやはり、このPTは全員優れたプレイヤーであるという事が分かる
LVがという意味ではなく、これまでにゲームで培ってきた知識がという意味でだ
思えば盗賊を殺す時にも一切の躊躇がなかった、ゲーム初心者だと、このリアルな感覚での殺人について嫌悪感を持つという話を聞いたことがあるが、十色等は一切の躊躇を見せずに盗賊の頭を打ちぬいていたことからも彼等が慣れていることがわかる
「どしたのタマモっち?いっくんのことでも考えてる?」
わらわがいっちゃん達について考えを巡らせていると勘違いしたいっちゃんがニコニコしながらPT用の念話で話しかけてきた
「そんなわけなかろう、それにあの主はなんだかんだで一人でいるなら問題なくやり過ごすじゃろうな」
「おお、信頼してるんだねぇ!」
いっちゃんは何やら勘違いしているようなのでここは誤解を解いておくべきじゃのぅ
「わらわが気に入っているのではなく本体が何故か気に入っているのじゃ、分け身であるわらわ達は本体の感情の影響を大いに受けるので、そのせいじゃよ」
わらわとしてはあのような失礼な男はいい感情をもっていないのじゃが、だがわらわに向かってゴリラ等という男は久々じゃ等と言って本体が気に入ってしまった為にその影響を受けて嫌いになれないのじゃ残念な事に
「ふむふむ、分け身って面倒なんだねー」といういっちゃんの言葉に「うむそうなのじゃ」と返事をしていると、先頭を歩くエリアルが足を止める
「どうやらこの先に4人いるみたいだ、向こうも気づいてるみたいだけどね」
言われて気配を探ると確かに4人、こちらに殺意を向けていた
「どうもわらわと同LVの盗賊がいるようじゃの、これは油断できぬのぅ」
残念ながらわらわの気配察知などのスキルは高いとは言えない、力量差が大きく開いているならともかく同程度の実力者だと、こちらの方が気づくのが遅れてしまう
これで自分から攻撃を仕掛けてくるとかなら別なのだがのぅ
「隠れてるのはわかってるんだ、さっさと出てきな」
4人の盗賊の中央にいる男がこちらに対する殺意を高める、うむ、これは中々期待できそうじゃのぅ
どうする?とエリアルがこちらに目線を送るので「わらわが先頭で出る」と念話で送り、皆が頷いたのを確認し、扇で口元を隠しながらゆっくりと出ていく
盗賊共はわらわの体に見惚れたのか、ほぅっと声を上げるがすぐに気を引き締めなおす、ふむ中々やるのぅ
「そなたがこの近くの村を襲っていた盗賊共の首領という事でいいのかのぅ?」
「知らねえな、確かにうちの近くに盗賊がいたし、うちからも1人馬鹿が村を襲ったが、俺には関係ねえよ、村から盗賊を捕まえてくれとでも頼まれたのか?それならこいつを持っていきな」
そういって盗賊の首領がこちらに投げて寄こしたのは、エリアルが追っていた盗賊の首だった
「うちとしてもその馬鹿のせいで迷惑かけられそうなんだ、その首もってさっさと帰ってくれるなら、今回の事は穏便に済ませてもいいが?」
盗賊はいかにも自分達も迷惑してますといった態度を取るので、後ろにいる、エリアル達を振り返ると、首を横に振る
「そういう訳にはいかぬの、そもそも盗賊を見逃した等となれば、今後どこかで盗賊に行商人が襲われたという話を聞いたときに気分が悪くなるからのぅ、其方らの首ももらい受けようか」
わらわ達が戦闘態勢に移る、わらわとトトを先頭に、中衛にエリアル、ナイフ、十色、後衛にいっちゃん、その護衛に銀弧と言う形
「交渉決裂か、しかたねえ」盗賊達も全員が武器を抜き、緊張感が高まる、と
「逃げるぞ、てめえら!」盗賊の首領の男が踵を返して逃げ出した
「なんと、どうする?!」わらわの問に間髪入れずに「追いましょう」と叫び、全員が盗賊達がいた部屋に足を踏み入れた瞬間
「今だ、やれ!」と首領の叫び声が響き、上から檻が降ってくる
「しまった魔法で隠蔽してたのか!」とエリアルが叫ぶももう遅く、わらわ達は部屋の中央に振ってきた檻の中に高速されてしまう
これでわらわ達の様子を見に戻ってくるならまだ何か手の打ちようもあったのかもしれないが、残念ながら盗賊達はそのまま通路に向かって全力で走っていった
「・・・やられたのぅ」
全力で逃げていく盗賊の背中が見えなくなったところでわらわは呟く、ここまで来る途中全て物理的なわかりやすいトラップばかりだったから油断していたがまさか、ここまでの隠蔽魔術が使えるものがいたとは
「すまない、私が油断したばかりに」シーフであるエリアルは自分が悪いと思っているようだが、LV差がありすぎる為しかたないことじゃ
「何、お主が気にすることはない、あの盗賊共はどいつもお主よりもLVが高かった、恐らくスキルも高LVであろう、どれだけ注意してもこれだけ力量に差があっては無理じゃ、それよりもこれからどうするか考えるべきじゃろうな」
「そうだよ!まずはいっくんに、出口方向に向かって4人向かってることを伝えないと!」
「でも、どうするんすか?距離が離れすぎるとPT念話って届かないっすよね?」
慌てるいっちゃんにこちらも慌てたナイフが言う、二人とも、いや、全員がうちの主を心配してくれているようじゃ、うれしい事じゃのぅ
「心配しなくてよい、わらわが念話を送ろう、契約者と非契約者の間でのみ使える念話なら、この距離でも届く故な」
皆が何かを言うよりも早くわらわは主に念話を送る、送った内容が思った以上に強い口調で送られたのを確認し、わらわも興奮しているのだなと心を落ち着かせる
「・・・いきなりなんだよタマモ?」
やる気のなさそうな態度が念話越しにも感じられて思わず怒鳴りそうになったが一度深呼吸をし、今の主では勝てないような相手が4人出口に向かって走っていった事、わらわ達はトラップに嵌められて身動きが取れないことを伝える
「・・・その檻ってどういう形状なんだ、檻ってことは出入り口はあるんだよな?カギは?」
のんきに言う主に少しイライラしながら「少し待て」と言いドアの方に近づく、ドアには南京錠のようなものがかかっておりこれを外せば簡単に出られそうじゃな
「ドアには南京錠のようなものがかかっておるわ、これが外せれば簡単に出られそうじゃが、残念ながら内側からはどうにもできそうにないの、後は下が開いているが、洞窟を掘って抜け出すのは難しそうじゃ」
わらわの報告を聞いた主は「んじゃ、金弧そっちに送るから、金装術で鍵作ればいいんじゃね?」と何でもないように言い出したのじゃ
「・・・確かに金弧の金装術なら、鍵は作れそうじゃが、お主一人で大丈夫なのかのぅ?」
「いや、多分金弧居たって勝てないような相手だろ、こっちに来る奴、だったら素直に俺は逃げるよ」と言う主の言葉は確かに一理ある
「ならば金弧を一度リターンしてもらおうかの、こちらで再召喚するのでな」
わらわの言葉に、はいはーいと気の抜ける声で返事をし
「そういや、タマモを含めたそっちのPTなら、こっちに来てる4人って勝てるのか?」と聞いてくる
「勝てるのぅ、なんじゃ、主が足止めでもしてわらわに罠に嵌められた恨み、晴らさせてくれるのか?」と問うと
「なんだ戦いたいのか、んじゃ、俺が足止めしとくからさっさとこいよ」と言い残して念話が切れる
「おい、主、ええい、あの馬鹿、今度は何をするつもりなんじゃ!」
わらわは急いで金弧を呼び出すと、全員にうちの馬鹿がまた何かやりそうだから急いで出口に向かってほしいと願うのだった、本当に手が焼けるのじゃ!
主「足止めをすればいいのだろう?」




