【伝言板】銀級試験の話
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冒険者ギルド ヴェルナ支部 一階 伝言板
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『先の銀級試験で、変な落とされ方をした受験者がいるらしい』
→ 変なとは
→ 索敵で虚偽報告と書かれた
→ 虚偽ってのは重いぞ。次の受験にも響く
→ 響く。実質、二年は上がれない
→ 何を報告したんだ
→ 壁の向こうに何かいる、と言ったそうだ
→ で、いなかったのか
→ 試験官が確認できなかった
→ それは「いなかった」とは違うのでは
『審査官はドルグ・ヴァイス』
→ また彼か
→ 前の回でも似た落とし方をしてる
→ 厳しいのは悪いことじゃない
→ 厳しいのと、確認できないものを虚偽にするのは別だろ
→ 別だな
→ ただ、あの人が甘くして人が死んだ話は聞かない
→ それはそう
『落とされたの、十七階の工房の子らしい』
→ 槍の子か
→ 錆落としをやってる子だ
→ あの子、耳がいいので有名だぞ
→ 有名か?
→ 十層の常連なら知ってる。あの子が止まったら止まれって言われてる
→ 知らなかった
→ 灰級の間だけの話だからな。上には伝わらない
『あの試験官、悪い人ではないと思うんだが』
→ 悪くはない
→ ただ、落とす理由の書き方が重い
→ 確認できなかった、で済ませればいいのにな
→ 虚偽と書くと記録に残る
→ 残ると二年は響く
→ そこまで分かって書いてるのか
→ 分かって書いてるから重いんだよ
『ギルドが第九層第三区画の調査を出すらしい』
→ 早いな
→ 同行者を見たか
→ 見た
→ 宝玉級と金級だ
→ は?
→ 壁の向こうを見るのに、大陸で三番目に強いのが出てくるのか
→ 出てくるらしい
→ 世界が狂ってるのか、あの工房が狂ってるのか
『調査の申請を通したのは、ギルドの誰だ』
→ 窓口の眼鏡の人だ
→ ああ、あの人か
→ 規約を暗記してる人だな
→ 半日、上と揉めてたのを見た
→ 珍しいな。あの人が揉めるのは
→ 珍しいから覚えてる
『そもそも、なんでそこまでするんだ。灰級の子ひとりの話だろう』
→ その言い方が全部だよ
→ どういう意味だ
→ 灰級の子ひとりの話だから、いつもは誰も動かない
→ ……ああ
→ 今回は動いた。それだけの話だ
→ それだけの話が、この街では珍しいんだよ
『あの工房の子、支店を任されるらしいぞ』
→ 落とされた子か
→ そうだ
→ 銀級がないと分店は持てないだろ
→ だから今回の件が効いてくる
→ おい、それはきついな
→ きつい
→ 通ればいいんだが
→ 通ってほしいな
→ お前、他人の昇級を気にする性格だったか
→ なってねえよ。ただ、あの子には槍を止めてもらったことがある
『十七階のおっさんは何をしてる』
→ 鍋を叩いてる
→ また鍋か
→ また鍋だ
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調査の日取りが決まるまで、六日かかった。
その六日のあいだ、工房は普通に開いていた。列は伸びたし、鍋も持ち込まれたし、キースの班は毎日通ってきて、並べた武具の前で言い合いをしていた。
ニナは掃除をして、錆を落として、番号札を配った。手のことを言ってからは、休むようになった。
俺はいつも通りに道具を見た。
休めと言われて休める子ではなかったので、俺は札の束を渡して数えさせることにした。数えるのは座ってできる。
キースの班は相変わらず毎日通ってきては、並べた武具の前で言い合いをしていた。あの連中は近ごろ、俺が何も言わないうちに三本くらいは当てるようになっている。
六日目の夕方、その男が列に並んだ。




