↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/84

【伝言板】銀級試験の話

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 冒険者ギルド ヴェルナ支部 一階 伝言板

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『先の銀級試験で、変な落とされ方をした受験者がいるらしい』


 → 変なとは

 → 索敵で虚偽報告と書かれた

 → 虚偽ってのは重いぞ。次の受験にも響く

 → 響く。実質、二年は上がれない

 → 何を報告したんだ

 → 壁の向こうに何かいる、と言ったそうだ

 → で、いなかったのか

 → 試験官が確認できなかった

 → それは「いなかった」とは違うのでは


『審査官はドルグ・ヴァイス』


 → また彼か

 → 前の回でも似た落とし方をしてる

 → 厳しいのは悪いことじゃない

 → 厳しいのと、確認できないものを虚偽にするのは別だろ

 → 別だな

 → ただ、あの人が甘くして人が死んだ話は聞かない

 → それはそう


『落とされたの、十七階の工房の子らしい』


 → 槍の子か

 → 錆落としをやってる子だ

 → あの子、耳がいいので有名だぞ

 → 有名か?

 → 十層の常連なら知ってる。あの子が止まったら止まれって言われてる

 → 知らなかった

 → 灰級の間だけの話だからな。上には伝わらない


『あの試験官、悪い人ではないと思うんだが』


 → 悪くはない

 → ただ、落とす理由の書き方が重い

 → 確認できなかった、で済ませればいいのにな

 → 虚偽と書くと記録に残る

 → 残ると二年は響く

 → そこまで分かって書いてるのか

 → 分かって書いてるから重いんだよ


『ギルドが第九層第三区画の調査を出すらしい』


 → 早いな

 → 同行者を見たか

 → 見た

 → 宝玉級と金級だ

 → は?

 → 壁の向こうを見るのに、大陸で三番目に強いのが出てくるのか

 → 出てくるらしい

 → 世界が狂ってるのか、あの工房が狂ってるのか


『調査の申請を通したのは、ギルドの誰だ』


 → 窓口の眼鏡の人だ

 → ああ、あの人か

 → 規約を暗記してる人だな

 → 半日、上と揉めてたのを見た

 → 珍しいな。あの人が揉めるのは

 → 珍しいから覚えてる


『そもそも、なんでそこまでするんだ。灰級の子ひとりの話だろう』


 → その言い方が全部だよ

 → どういう意味だ

 → 灰級の子ひとりの話だから、いつもは誰も動かない

 → ……ああ

 → 今回は動いた。それだけの話だ

 → それだけの話が、この街では珍しいんだよ


『あの工房の子、支店を任されるらしいぞ』


 → 落とされた子か

 → そうだ

 → 銀級がないと分店は持てないだろ

 → だから今回の件が効いてくる

 → おい、それはきついな

 → きつい

 → 通ればいいんだが

 → 通ってほしいな

 → お前、他人の昇級を気にする性格だったか

 → なってねえよ。ただ、あの子には槍を止めてもらったことがある


『十七階のおっさんは何をしてる』


 → 鍋を叩いてる

 → また鍋か

 → また鍋だ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 調査の日取りが決まるまで、六日かかった。


 その六日のあいだ、工房は普通に開いていた。列は伸びたし、鍋も持ち込まれたし、キースの班は毎日通ってきて、並べた武具の前で言い合いをしていた。


 ニナは掃除をして、錆を落として、番号札を配った。手のことを言ってからは、休むようになった。


 俺はいつも通りに道具を見た。


 休めと言われて休める子ではなかったので、俺は札の束を渡して数えさせることにした。数えるのは座ってできる。


 キースの班は相変わらず毎日通ってきては、並べた武具の前で言い合いをしていた。あの連中は近ごろ、俺が何も言わないうちに三本くらいは当てるようになっている。


 六日目の夕方、その男が列に並んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。