【伝言板】十七階が大変なことに
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
冒険者ギルド ヴェルナ支部 一階 伝言板
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『十七階の修理屋に、宝玉級が並んでたらしい』
→ 並ぶ?
→ 順番待ちしてたってことか
→ 三時間だそうだ
→ 誰だ
→ 赤い外套と言えばひとりしかいない
→ おいまさか
→ レイ・ヴァンダール
→ うそだろ
『昨日その場にいた。本当だ。番号札の四十七番を持って立ってた』
→ 番号札!?
→ 大陸序列三位が木札を握って立ってるのか
→ 絵面がすごい
→ で、どうなった
→ おっさんが剣を三秒見て「左肩やったな」って言った
→ また三秒か
→ 三秒の男
→ 実際レイ・ヴァンダールは三か月前の遠征で左肩をやってる。これはギルドの記録にある
→ 公表されてないぞそれ
→ されてない。だから騒ぎになってる
『追悼の宴で言ってた「先生」ってあのおっさんじゃないのか』
→ 全員そう思ってる
→ 六年前のアルゴノート整備房ならつじつまが合う
→ 待て、アルゴノートの整備房は二か月前に閉じてるぞ
→ 閉じた?
→ 鑑定盤を入れて人を切ったらしい
→ 大陸一のクランが、大陸最強の「先生」を切ったってことか
→ こわい話になってきた
『で、そのおっさんは今どうしてるんだ』
→ 十七階で鍋を叩いてた
→ 鍋
→ 鍋?
→ 鍋だ。俺も見た。銅貨十枚で鍋を直してる
→ 何なんだその人
『整備房を切った運営部の人間の名前が割れてる』
→ やめとけ
→ 個人を晒すのはギルドが動くぞ
→ そもそもその人が悪いのか?
→ 数字の上では正しい判断だっただろ
→ 正しい判断で人が死にかけてるなら、正しさのほうを疑うべきじゃないのか
→ 重い話になってきた
→ 十七階のおっさんは何か言ってるのか
→ 何も言ってない
→ 鍋を叩いてる
→ また鍋か
『昨日、あの工房で点検だけ受けてきた』
→ どうだった
→ 「あんたは大丈夫だ、行ってこい」と言われた
→ それだけか
→ それだけだ
→ で?
→ 泣きそうになった
→ わかる
→ わかるな
『明日行く』
→ 俺も
→ 俺も
→ 俺も
→ おい
→ やめろと言っただろう
→ もう遅い




