前提条件崩壊に向けて~~~~~サーシャの場合
サーシャの食い意地は前世を思い出す前から・・・
この話の時点では前世は思い出してないです。
「お嬢、無茶しないでください・・・」
激闘の跡を見てロバートは言った。
「ごめん、角兎だと思って甘く見た」
サーシャは素直に謝る。
そんなサーシャに前にはまるで竜巻が荒れ狂ったかの様な有様が広がっていた。
事の起こりはサーシャの6歳の誕生日、父親より畑(予定地)を貰ったことだった。
その場所を耕し、畝を作り、囲いをして、罠を張り・・・
最初は比較的育ちやすく成長の早い作物を植えた。
秋に無事収穫を終え、冬の間せっせと畑の手入れをしていた。
そして春、冬の間選び抜いた種を植え、さあ最初の収穫だと思った矢先、畑を食い荒らされたのだ。
仕掛けた罠に兎が何羽か掛かっており、敵は角兎だと知れた。
「許すまじ!」
そう叫んでサーシャは怒りに任せて森に突っ込んでいく。
育てた野菜は森にはない独特の芳香を放つ。
森に残ったその痕跡を追っていくサーシャ。
そして一つの角兎の群れに辿り着いた。
普通の角兎の3倍の大きさを誇る統率個体に率いられた群れに・・・
倒した角兎の首を落として木に吊るし血抜きする。
「まあ、狙われたのが神父様の畑じゃなかっただけ良かった。」
「そうですね。」
と頷くロバート。
ネロ領には教会があり、神父と付き人の2名が暮らしている。
領民の数を考えれば助祭、それも通いでおかしくない土地だ。
何故いるのか?
それは霊峰の麓と言う特異性が理由だった。
ネロ領ではここでしか採取できない薬草の類が多い。
ここに常駐する神父は一流の薬師であり、多くの薬を調合し、原料を納めている。
ある時、駐在していた神父が王都に呼び出され不在となったことがあった。
領民達も自身で薬草を育て調合もする。
ただし、それは自分達が使う分であって余所に納める為のものではない。
領民達が育って作った分はどんなに大金が積まれても誰も売らなかった。
結果、教会で用意している薬、特に上級の回復薬が欠品して大騒ぎになった。
その騒動はメヌエルから薬を買っている他の国にも飛び火し、以来、ネロ領には一流の薬師である神父が常駐している。
「とはいえ、あそこの大半は毒草だからね。」
育てられている薬草の大半は薬効が高い反面扱いも難しい。
ネロの子供達は外に出れるようになると必ず神父様のところで薬草に当たってかぶれる経験をする。
ここに不用意に入ると酷い目に遭うぞということを体験させるのだ。
付近の野生動物もそれが分かっているのか今まで荒らされるということにはなっていない。
「扱いを間違えなければ良いお金になるんですよねえ。」
あの畑の手伝いは子供達の良いお小遣い稼ぎであり、生活の知恵を教わる場でもある。
そこで覚えた毒草の対処方法や新種発見時の対応などここで暮らすための必須知識を教えてくれる神父は領民に慕われている。
長年の神父達の教育のお陰でネロ領では辺境にしては珍しく高い教育が施されていた。
「こいつ特異体ですね。」
倒した角兎の首を落として木に吊るし血抜きをしていたロバートが言う。
「通りででかい訳だ。」
特異体は、皮と角、体内の魔石を取って肉はその場に捨てるのが通例だった。
「皮も剥いだし魔石も取ったし、捨て・・・」
そこの言葉をサーシャは遮る。
「お嬢、どうしたんです?」
「こいつ絶対美味しい、だから持って帰る!」
「お嬢・・・そんなに悔しかったんですね・・・」
「当たり前よ!丹精込めて育てた野菜を食われたんだから!
だからしっかり全部食う!」
そう言って7歳の誕生日に貰ったマジックバックに血抜きの終わった個体を放り込んでいく。
「はいはい、分かりましたよ。」
ロバートも自分のマジックバックに角兎を入れていく。
「今日は兎祭りだな。」
そうやって持ち帰った角兎は領主の館だけなく村人の家にも配られた。
食べない分は燻製にして傷みやすい内臓は鍋に、肉は塩を振って各々の家庭の夕飯になる。
領主の館ではサーシャの強い希望で特異体が捌かれ、食卓を飾った。
「「「「・・・」」」」
皆が無言で肉を頬張る。
口の中の肉を飲み込んだ父親が言った。
「こいつは特異体だと言ったな。」
サーシャは頷く。
「・・・こんなに美味しいなんて・・・」
母親の言葉に皆が思った。
今までなんてもったいないことをしていたのか!!!
「特異体を食べないのは毒があるからだ言う話だったな・・・」
「・・・はい・・・」
「毒が溜まる場所は種族によって決まっている。」
「角兎の場合は角周辺の毒袋ですね。」
「元々そこは食べない。」
角兎の毒は畑周辺に撒いて獣除けに使う。
今回、大量に手に入ったのでこれから収穫を迎える畑周辺に撒く予定だ。
「そいつを傷付けないようにすれば・・・」
「毒抜きをするというのも有りですね。」
今回、供された肉類は全て鑑定して毒が無いことを確認している。
「・・・狩るか・・・」
領主である父親の言葉に家族全員が頷いた。
この日より、ネロ家の領主一族及び領民は積極的に特異体を狩る様になる。
そうやって蓄えられたノウハウは他の地方にも伝わった。
そしてメヌエルでは特異体は脅威ではなく、美味しい食材となった。
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ゲームでは様々な悲劇の要因となった特異体
ネロ男爵家が積極的に討伐したため、そこまで特異体が育つことが無くなった。
こうして前提条件の一つが消えたことをサーシャは知らない・・・
閲覧、有難うございます。
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サーシャの前世の祖父母は農家で週末に畑仕事を手伝ってました。
農作業のノウハウが遺伝子に刻み込まれていた様で秋の時点でも相当の収穫を上げてます。
サーシャが特待クラスを狙えるまでに教育を受けられたのは神父と寄り親の伯爵家のお陰。




