18_お助けキャラ
ゲームでは、入学式から最初の実力テスト終了までチュートリアル期間としてイベントは起きない。
これは3人共通の仕様で、これが終わるとエリスやアリサの場合、幼馴染との最初のイベントが起こる。
辺境田舎育ちのサーシャにはこの学園に知り合いはいない。
なので、まずは友達というより知り合いを作ることから始まる。
入学当初、顔を名前が一致するのは寮母と指導員の上級生だけ。
一般寮に淑女科の生徒がいないので実力テスト期間中、HRで顔を合わせた同級生ともなかなか交流することが出来なかった。
そんなサーシャに友達が出来た。
自室の簡易キッチンでリズミカルな音が響く。
「こっちは全部切り終わったよ。」
「じゃそっちの鍋を掻き回して。」
すりこ木を手にゴリゴリとゴマや木の実をすり潰していたもう一人が声を掛ける。
「終わったよ。こんなものでどうかしら。」
鉢を覗き込んでサーシャはそこに用意していたたれを注ぐ。
「続きをお願いします。」
「了解。」
良い匂いが部屋に広がっていく。
部屋にはサーシャの他に赤毛と栗毛の少女が居る。
赤毛はポリー、騎士科のライバル令嬢だ。
もう一人はサーシャの指導員だった騎士科の上級生のアンナ。
3人はテーブルに並んだ料理を前に手を合わせ、
「「「頂きます」」」
そう言って、料理に手を伸ばした。
「うん、美味しい!。」
最初にスープを口にした上級生が頬を緩める。
「私、トマト、苦手だったんですよね。」
ポリーがドレッシングの掛かったサラダを口に運ぶ。
サーシャは黙々と料理を平らげていく。
3人の会話は続かずただひたすら料理を味わう時間が過ぎていた。
この3人、実は寮食を朝晩きっちり食べている。
元々サーシャは知り合いを作る目的もあって、食事は食堂で食べていた。
が・・・足りない・・・
味は悪くないしバランスも考えられているけれど、一般寮には文官科の少女が多いこともあって一食の量はそう多くない。
騎士科の上級生達は遠慮なくお替りしているが新入生で淑女科のサーシャには流石にそれは難しい。
それで夜食を作っていたら匂いにつられた少女が二人。
入寮時から何かと良くしてくれたアンナとその後輩のポリー、実家がご近所さんで子供の頃から付き合いがあったとのこと。
「ご馳走様です。
「食べた食べた。」
「美味しかったです。実家にレシピ、教えて良いですか。」
良いよと気軽にメモを渡すサーシャ。
アンナとポリーはテーブルを片付け食器を洗って戸棚にしまう。
その間、淑女科の課題で習った手順に従ってサーシャはお茶を淹れる。
テーブルには入寮時に揃えた茶器が並ぶ。
「どうぞ。」
「有難う、大分それらしくなってきたね。」
アンナの言葉にサーシャは苦笑い。
ポリーはと言うとテーブルに置かれたマナー本を見ながら手順を確認してお茶を飲んだ。
「結構なお点前・・・」
「無理しなくて良いよ。
まあ近衛や貴族の直属を目指すなら覚えた方が良いけど。」
「必要なんですか?」
サーシャの言葉にアンナは言う。
「手順や作法を知らないといざという時に動けないからね。
騎士でもある程度の教養は必要。」
王女や高位族の夫人、令嬢の護衛は女性騎士か戦闘訓練を積んだ侍女が務めるのだ。
それもそうかとサーシャは頷いた。
「そう言えば魔獣肉は寮食じゃ出てこないけどこっちでは食べるの?」
「あー、魔獣肉、高いからねー。こっちじゃでないと思う。」
「と言うことはあっち(高位貴族向け)じゃ出るんだ。」
「多分、あっちで暮らす友達から聞いた。」
「実家じゃ家族が演習や出動要請で狩ってきた時に食事に出たかな。」
「成程。」
「サーシャのところじゃこれが当たり前に出てくるんだよね。」
「うん、こっちのお肉とか野菜、味が薄くてびっくりした。」
「最初に聞いた時そこまで!?と思ったけどこれを食べるとねえ。」
しみじみ頷くアンナとポリー。
タダでご馳走になるのは悪いと思って街の市場で買った食材を持ってきた二人。
同じ手順で作った結果の味の違いに驚いた。
今はベースとなる食材は二人が用意し、ところどころでサーシャが実家から持ってきた食材を使っている。
二人の視線は壁に掛けられたリュックに向いた。
「まさかマジックバック、それも時間停止機能付き、そんなものを普通に持っているなんて。」
「私、初めて見ました。」
とはポリー。
「こっちじゃ必需品だから10歳になったら自分で作るけど・・・」
サーシャの言葉に二人は首を横に振った。
「私、マジックバックって学園の演習で教師が使っているのを見たのが最初よ。
それも、時間停止無し、サーシャのと比べて容量が10分の1以下。」
「こっちの魔道具屋じゃ売ってないからね。
偶に競売で中古が出て物凄い値段で取引されてる。」
「そう言えばうちに来る冒険者さん達、一番の目的はマジックバックの入手だった。」
「そうでしょうよ。あるだけで旅の快適さが全く違うもの。」
そう言ってアンナはがしっとサーシャの手を握る。
「お願い、休みの時そっちに行かせて。」
「えーっと、うちで活動するには領主主催の講習を受ける必要があるんだけど。」
「「講習?」」
「知らないと普通に死ぬから」
「「・・・」」
サーシャの言葉に顔を見合わせる二人。
少ししてアンナは言った。
「お願い、講習受けさせて。」
「講習受けてもマジックバックが手に入るのは1年は掛かるよ。」
どういうこと?と問う二人に
「必要な素材を揃えるのに大体半年、それらを揃えて職人に依頼すると半年は掛かるからね。
なんで冒険者チームで手先の器用な人が職人に教わって作るの。」
「えっ?」
「旅先で修理や補修が出来た方が良いでしょ。壊れたらわざわざうちの近くまで来るの大変だし。」
「そうだけど・・・もしかしてあれ、サーシャが作ったの?」
「うん。」
競売に出てくる容量の少ないそれらはネロの子供や冒険者達が作った試作品とのこと。
職人が作った正規品は王家や騎士団、高位貴族や大手商会の依頼品で市場には出ないそうだ。
「マジックバックが欲しかったらネロに行けって聞いたけどまさか自分で作るとは思わなかった。」
「材料を揃えても職人は注文をこなすので忙しいからね。
順番を待っているより住人と仲良くなって手伝って貰いながら自分で作った方が早い。」
「成程・・・ネロの人達って皆作れるんだ。」
「ええ、マジックバックを作れて一人前って扱いだから。」
「・・・」
「ネロ家のお嬢様だから持っているのかと思ったけど。」
「まさか自作品だったとは・・・」
「まあ、子供でも作れるのはネロ領が霊峰の麓にあるからだけどね。」
「どういうこと?」
「マジックバック作りで一番の問題になるのは素材の性能。
錬金術の教本を読むとマジックバックで手間暇が掛かるのは素材の品質を上げる部分だから。」
「魔の森産はその問題が無いと。」
「うん。そこをクリアすれば後は製作者の魔力だけ。
で、ネロで生まれ育った子供は皆魔力が強いから。」
「?ならなんでネロ産のマジックバックが出回らないの?」
「ネロは人が少ないから他にやることが多くて自分や周りの人が必要としてないとわざわざ素材を取りに行かないんだよね。
余った分はそのまま取っておいて売らないし。」
「・・・」
閲覧、有難うございます。
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新キャラのアンナさん、ゲームでも登場したお助けキャラです。
当たり前ですがゲームでは餌付けはされてません・・・




