黄金のソロバンと「勝ち確のシナリオ」
眩い光が収まった先には、懐かしい風の香りと、活気に満ちた喧騒があった。
辿り着いたのは、エドガーの屋敷のテラス。
「お嬢様。異世界での滞在期間、こちらの時間でわずか三時間。
時空の歪みを利用した、極めて効率的な出張でした」
カシムが手慣れた手つきで、早くも現世の帳簿を開く。
「……ふぅ。やっぱり、自分の領土が一番落ち着くな、カシム」
エリザベスには、運命を書き換えた「重み」が、心地よい達成感として残っている。
「世界中の経済指標が、帰還を予見したかのように上昇を始めているよ」
エドガーが、エリザベスの細い体を優しく、しかし離さないという強い意志を込めて抱き寄せた。
「……っ!? ……アンタ、帰って早々、何してんねん! 異世界出張の『慰労手当』は、向こうで支給したばっかりやろ!」
「ふふ。あちらは出張、こちらは日常だ。愛に、上限なんて設定していないよ。
それに、君という『最高傑作の資産』を、他の誰にも触れさせたくないんだ」
エドガーの甘い囁きに、エリザベスは顔を真っ赤にしながら、その胸に背中を預けた。
かつての冷徹な「監査卿」は、今やエリザベスという情熱に投資し続ける、世界で最も一途な「専属の財布」だ。
「ご歓談中失礼いたします。異世界のレイン卿より、第一四半期の『経営報告書』が届きました」
カシムが報告書を差し出すと、ギルが横から覗き込んで、声を弾ませる。
「見てお嬢、これマジ神。職業訓練所の稼働率、一〇〇%とかエグくない?
魔力供給も一二〇%上振れとか、マジ天才、優勝確定じゃん!」
「……なんやて? レインの旦那、なかなかやるやないか。
初年度からこれだけの成果を出すとはな」
エリザベスは満足げに、ソロバンを弾いた。
「ええか、カシム、ギル、エドガー。何でも、一箇所に貯め込んで腐らせたらあかん。
世界をより良くするために『循環』してこそ、初めて価値が生まれるんや」
夕日に照らされた景色を見下ろし、エリザベスは不敵に、そして誰よりも美しく微笑んだ。
「愛と金。二つが完璧に噛み合った時、世界に不渡りなんて出させへん。
それが、ナニワ商会の『勝ち確のシナリオ』や!」
黄金のソロバンが、今日一番の高く、澄んだ音を響かせた。
それは、新しい世界の幕開けを告げる「決済音」だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
異世界からの凱旋、そしてナニワ商会の日常風景でした。
どんな世界でも、彼女らしく「勝ち確」にもっていく姿、楽しんでいただけましたでしょうか。
いよいよ、次回で物語は結末を迎えます。




