【お別れ】と「金のソロバン像」 ――感謝するんやったら、ホンマは現金とちゃいまっか?
オーバーライド・エンパイアの経営再建が完了し、エリザベスたちが元の世界へ帰る日がやってきた。
『中央演算聖域』の広場には、150億人を代表する各エリアのリーダーたちが集結し、地鳴りのような歓声が響き渡る。
「お嬢様。広場の中央、巨大な布で覆われた物体を確認。魔力波形から推測するに、純度99.9%の黄金。嫌な予感しかいたしません」
カシムが事務的に、そして眉間を深く寄せて報告する。
「……アンタら、ウチらが帰るからって、まさか変な『記念品』とか用意してへんやろな?」
エリザベスが不審げにソロバンを鳴らした瞬間、アリスが満面の笑みで合図を送った。
「エリザベスさん、私たちの感謝の形です! せーの、公開っ!」
バサァァァッ! と、巨大な幕が剥がれ落ちた。
そこに現れたのは――高さ50メートル、全パーツが純金で作られた、『世界を救った黄金のソロバンを掲げるエリザベス像』。
「「「お嬢様、ありがとうございまーす!!!」」」
全員による大合唱。
「あ、あほ抜かせぇぇぇ!!!」
エリザベスの怒声が、聖域の空を突き抜けた。
「誰がこんな、維持費と固定資産税がかかりそうなもん建てろ言うた!
像なんて一銭の利益も生まん『死に資産』や!
50メートル? 邪魔や! 掃除する身にもなりなはれ!」
「えっ……。でも、感謝の気持ちを込めて、皆で魔力を結晶化させたんですよ……?」
シュンとするアリスと民衆。
圧倒的な熱量に、さすがのエリザベスもこめかみを押さえる。
「……ふふ。エリザベス、落ち着きなさい。
彼らにとって、君はそれだけ巨大な存在だということだよ。
もっとも、私の書斎に置くには、少々サイズが大きすぎるがね」
エドガーが、楽しそうに肩を揺らして笑う。
「笑い事やないわ、エドガー!
カシム! この『黄金のゴミ(像)』、今すぐ解体して細かくしなはれ!
その金で、各エリアに『ナニワ商会直営・職業訓練所』を100個建てるんや!
余った分は、レインの旦那の『新生活支援金』に回しなはれ!」
「承知いたしました。これが本当の『歴史の塗り替え』ですね」
カシムが即座に計算機を叩き、民衆の「感謝」を「実利」へと書き換えていく。
「ありがとう、エリザベス。君は最後まで、俺たちに『生きるための力』をくれるんだな」
レインが、ナニワ商会の制服(特注の白衣)を纏い、晴れやかな笑顔で手を振った。
「ふん。アンタがしっかり働いて、『配当』を送ってくるのを楽しみにしてるで!
ほな、エドガー、カシム、ギル! 帰るで!
本拠地が、帰りを待ってるわ!」
エリザベスは、光の渦の中へと足を踏み入れる。
大歓声と、解体されていく黄金像の欠片がキラキラと舞い散る中、最強の商売人一行は、意気揚々と自分たちの世界へと「凱旋」するのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
像を即解体して再利用するあたり、エリザベスらしい決断でしたね。
これまで「金」を武器に駆け抜けてきた一行。
最終回まで残り2話です。




