【ヘッドハンティング】! ――神様なんてやめて、ウチの「技術顧問」になりなはれ
「……ふぁ。……俺、……寝てたのか?」
最高級の魔法羽毛ベッドの上で、レインがゆっくりと上体を起こした。
数百年の疲労を吸い取った枕から頭を上げると、目の下の隈は消え、肌には人間らしい血色が戻っている。
「お目覚めですか、レイン卿。睡眠時間、合計一六八時間。世界維持コストの分散処理……すべて滞りなく完了しております」
枕元で、カシムが事務的に、しかしどこか安堵した声で告げる。
「……あぁ、体が軽い」
レインが、ウィンドウを開き、外の様子を確認する。
民が自分たちの魔力で支え合って暮らす、「新しい世界」の光景が広がっていた。
「……俺がいなくても、動いてるんだな」
「当たり前や! ウチの『経営再建プラン』に不備があると思ってんのか!」
ソロバンをパチパチと鳴らし、絶好調な様子のエリザベス。
「レインの旦那! 寝ぼけてる暇はないで。今まで『仕様書』もなしに、行き当たりばったりで世界を回してたやろ。管理者のすることやないわ!」
エリザベスがベッドの上にドサリと置いたのは、分厚い一冊の書類――『オーバーライド・エンパイア:新・標準運用仕様書』。
「……これ、何……?」
「新しいルールや! アンタはもう『孤独な神様』卒業やねん。これからはナニワ商会の『技術顧問』として、仕様書通りに世界を動かすバグ取りを担当してもらうで」
「え……? でも俺、神様の力なんて……」
「あほ! アンタの価値は『神の力』やない。150億人のシステムを一人で管理し続けた『ノウハウ』や! そんな貴重な人材、野放しにするわけないやろ!」
エリザベスは不敵に微笑み、レインの鼻先に黄金のソロバンを突きつけた。
「これからは、無理のない範囲で、楽しく働いてもらうで。どうや、条件は悪ないやろ?」
レインの瞳から、ポロリと一粒の涙がこぼれた。
「救世主」として祀り上げられるのではなく、一人の「技術者」として必要とされたことが、何よりも嬉しかった。
「……ふふ。レイン卿、妻は一度狙った獲物は逃さない主義でね。私も、君のような優秀な『共同経営者』が増えるのは大歓迎だ」
エドガーが優雅に腕を組み、同意の頷きを見せる。
「レイン! ウチも一緒に働くよ!」
傍らで、ギルが嬉しそうに吠えた。
「……ああ、喜んで。俺を、雇ってくれ、エリザベス!」
レインが力強く魔法契約を刻んだ瞬間、かつての「孤独な救世主」は消え、最強の「ナニワ商会・社員」が誕生したのである。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
孤独な神様が、最高の仲間とホワイトな職場(?)に巡り会う物語でした。
レインがようやく見つけた「自分の居場所」を、これからも見守っていただけると嬉しいです!




