【経営再建】開始! 神様一人に、おんぶに抱っこはやめなはれ!
「……無茶だ。俺がここを離れたら、世界の計算が止まる。そうすれば、150億人が一瞬で消えてしまうんだ……!」
檻の中から、レインが消え入りそうな声で叫ぶ。
体からは無数の光の糸が伸び、民の命を繋ぎ止める「命綱」になっていた。
「ハッ、笑わせんな! アンタ一人が寝んと踏ん張らな維持できん平和なんて、ニセモノや! 商売のイロハもわかってへん、ド素人の考えやで!」
エリザベスは鼻で笑うと、エドガーに合図を送った。
「『神様のお仕事』、プロの目から見てどうや!」
エドガーは、突き放すように告げる。
「……最悪だね。レイン卿のやっていることは、自分という資産を使い潰すだけの『自滅行為』だ。……エリザベス、このままだと彼は遠からず壊れる。どのみち世界は終わりだ」
「……っ。それでも、俺がやらなきゃ……!」
食い下がるレインに、エリザベスは黄金のソロバンを向けた。
「レインの旦那! ええか、今日からこの世界は、アンタ一人が背負うのを禁止するで!」
「え……?」
「カシム! 準備はええな!」
「……お嬢様。……150億人の魔法端末へ、『お助けプログラム』の配布を完了しました。……今この瞬間から、レイン卿の脳みそがやっていた計算を、150億人で『1人につき、ほんの少しずつ』肩代わりさせます」
カシムが魔導ペンをひと振りすると、レインを縛っていた光の糸が、小さな粒となって世界中へと飛び散っていった。
「な、何を……!? 民に負担をさせたら……!」
「あほ! 150億人もおるんや。一人分なんて、『まばたき一回分』の魔力で十分! 誰もが、レインの旦那に助けられて、お返ししたくてウズウズしてるんやで!」
エリザベスは、聖域の全スピーカーを使って、世界中に声を響かせた。
「オーバーライド・エンパイアの民ども、聞きなはれ! 今日から、神・レインは『夏休み』や! 今まで一人が背負ってた重荷、これからは自分らで、ちょっとずつ分けなはれ! それが、救ってもらったことへの『お代』や!」
バチバチッ、と大きな音がして、レインを吊り下げていた檻が消滅する。
一人で世界を支えていた重圧が消え、民が「自分たちで支える」という、当たり前で健康的な姿に戻っていく。
「……あ、あぁ……。体が、軽い……。俺、もう、寝てもいいの……?」
ゆっくりと降りてくるレインを、エドガーが優しく受け止めた。
「……ああ、お疲れ様。君の代わりに『ナニワの商売人』が、この世界を儲かる仕組みに作り変えてくれるさ」
エリザベスは、へたり込んだレインの頬をツンと突き、不敵に微笑んだ。
「レインの旦那。……『神様』卒業や。無理のない範囲で、楽しく世界を経営していこか!」
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「神様業務」を、一人で抱え込んでいたレイン。
ようやく「夏休み」の許可が下りました!
これで世界は、みんなで支え合う「健全な経営体制」にシフトします。




