【逆転決済】! ――エドガー、アンタ……その「条件」は計算外やで!
翌朝。
エドガー卿の屋敷の執務室に、「不法侵入者」が堂々と足を踏み入れた。
ボロ宿で一晩を過ごし、ドレスの裾を短く切り揃えたエリザベスである。
「……お嬢様。警備の騎士たちは、ギルが『火を噴くバーベキュー大会』を開催して、引きつけております。
今のうちに、監査卿の喉元を買い叩きましょう」
カシムが、いつもより鋭利に光る眼鏡を直しつつ、重厚な扉を開く。
そこには、優雅に朝の紅茶を嗜むエドガーが、余裕の笑みを浮かべて座っていた。
「やれやれ、降参の挨拶に来るには少し早すぎないか? エリザベス。……ひもじい思いをさせて悪かったね。今すぐ私に降伏すれば、最高級の朝食を用意させよう」
「……ふん。相変わらず、計算違いが激しい男やな、アンタ」
エリザベスは、エドガーのデスクにドカッと座り込み、一枚の「権利書」を叩きつけた。
「……え?」
エドガーの眉がピクリと動く。
そこに書かれていたのは、今飲んでいる『最高級の茶葉』の独占販売権、および、屋敷に水を引いている『私設水道の管理利権』など……すべてが、「ナニワ商会」によって買収された証明書だった。
「知らんかったんか? アンタの屋敷の維持費、昨日ウチが買い取って、別の幽霊会社に転売したんや。これで、下手な小細工はできんやろ?」
「……お嬢様が路上で稼いだ『エドガー卿の弱点メモ』の売上は、レバレッジをかけて一〇〇〇万倍の軍資金に化けました。今、貴方の生活インフラは、お嬢様の掌の上です」
カシムの追撃に、エドガーの手から、ティーカップが滑り落ちそうになる。
「……なっ。……私の資産を、逆包囲したというのか……?」
「当たり前や! 誰やと思ってるねん! 無一文になればなるほど、ウチのソロバンは『超高速』で回るんや!」
エリザベスは、呆然とするエドガーの顎をクイッと持ち上げ、不敵に言い放った。
「アンタの負けや。……今日からエドガーは、ウチの『管理下』や。許可なく、水一滴も飲ませへんからな!」
沈黙。
やがて、エドガーは力なく肩を落とし――堪らなくなったように、低く笑い声を上げた。
「……ははっ。……参ったよ。……君を閉じ込めて守ろうなんて、ただの傲慢だった。君は『絶望』すら『商機』に変えて、私を圧倒してしまう令嬢。……ああ、なんて強くて、美しいんだ」
エドガーがその場に跪き、エリザベスの指先に、恭しく、口づけを落とす。
「……支配したい、と思っていたが、訂正しよう。私は君という才能の『専属の財布』……いや、エリザベスと共に歩む『共同経営者』になりたい。私の全てを、資本として捧げよう」
「……っ!? ……パ、パートナーシップの提案やな!? 監査卿の資産全額出資……っ! じ、条件は悪ないわ!」
不意打ちの「プロポーズ(?)」に、エリザベスのソロバンが、本作一番の激しさで、パチパチとバグり始めた。
計算不能な結果は、まさかの『交際ゼロ日婚』。
お嬢様の快進撃は、愛という最強の資本を得て、さらなる加速を遂げる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
宿代にも困っていたはずが、気がつけば屋敷の「管理権」を握り、挙句の果てには監査卿を「専属の財布」にしてしまったエリザベス。
今回はバグりつつも、最高の「共同経営者」という資本をゲットしたようです。
愛と金が交差する二人のパートナーシップ、ここからが本当の始まりですね!




