【貧乏の味】は、再起のスパイス? ――お腹が空くほど、商才は研ぎ澄まされる
ナニワ商会のトップが、一泊・銀貨三枚のボロ宿で、過ごすことになるとは。
傾いた床、隙間風が鳴る窓、そして「お化けが出る」という噂付きの一室で、カシムは稼いだばかりの小銭を、ベッドにぶちまけた。
「……お嬢様。例の必要経費を差し引いた純益は、これだけです。……さらに宿代と、ギルが我慢できずに買い食いした『串焼き』の代金を考えると、残りはパン三つ分しかございません」
エリザベスが、薄暗いランプの下で、ジャラリと小銭を数える。
表情は、大金を動かしていた時よりも、ずっと険しく、真剣そのものだ。
「……いつか必ず、宿ごと買い取って、エドガー卿を物置に閉じ込めてやりましょう」
「カシム、贅沢言ってる場合やないわ。この小銭は、ウチらがまた成り上がるための大事な『種金』なんやから」
エリザベスは、カシムが買ってきた石のように固いパンを、一つギルに放ってやった。
「ほら、ギル。アンタ、さっき串焼き食べたばかりやけど、まともに食べさせるもんがないわ。堪忍な」
「わーい! お嬢、ありがとう! ……もぐ……。んぐ……。か、硬い! でも、なんだか皆でこうしてると、昔を思い出すね」
狭い部屋で身を縮め、尻尾を枕にして丸まるギル。
エリザベスは、手元を見つめ、不敵に微笑んだ。
「……ふん。ひもじい思いをさせて、泣きつかせようと思ってるんやろけど、逆効果や。お腹が空くほど、『稼ぎたい欲』は研ぎ澄まされるんやからな!」
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
豪華な王宮から一転、銀貨三枚のボロ宿へ。
「空腹は最高のスパイス」と言いますが、エリザベスにとっては「最高の軍資金」に変わるようです。
窮地をどう脱出するのか。
エリザベスの逆転劇、ここからが本番です!




