【無一文】からの逆転劇? ――ドレスのまま、路上で「エドガー」を売る
「…………無一文。ウチの全財産が……」
豪華な会場の外、冷たい夜風に吹かれながら、エリザベスは空っぽの財布を逆さにした。
出てきたのは、さっきエドガーから渡された「口座凍結」の通知書一枚だけ。
「……お嬢様。私のヘソクリも、ギルとコツコツ貯めていた『美味しいお肉貯金通帳』も、全てエドガー卿によって没収されました。……パン一つ買うお金もございません」
カシムが、いつになく殺伐とした無表情で告げる。
豪華なドレスのギルが、涙目で腹の虫を鳴らした。
「お、お嬢……お腹空きすぎて、その辺の馬車の馬が、美味しそうなチキンに見えてきた……」
「……あかん。国際問題になるわ」
エリザベスは、ぐいっとドレスの裾を捲り上げ、歩きにくいハイヒールを脱ぎ捨てた。
「……エドガーのアホ。甘いわ! ウチを誰やと思ってるねん。ナニワの看板背負って、ゼロから世界を買い叩いてきた女やで!」
瞳に、獲物を狙う「商売人」の輝きが戻った。
「カシム! そこらのゴミ箱から、綺麗な紙とペンを拾ってきなはれ! それと、夜会の厨房から最高級の牛フィレ肉をパクってくるんや! ギル! アンタは一番高い声で、今夜の『特大イベント』を宣伝!」
ギルは喉の奥を鳴らすと、言葉の代わりに熱線を空へ放ち、夜空を火柱で染め上げた。
「……お嬢様。……まさか、路上で商売を?」
「当たり前や! 元手がないなら、『知識』を切り売りしたるわ!」
夜会から出てくる着飾った貴族たちの前に、異様な光景が現れた。
豪華なドレスを纏ったまま、地面に堂々と座り込んだエリザベスと、「世界一高い抜け殻」と書かれた看板を持つカシム、そして口から火を噴いて客寄せをする竜。
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 今夜だけやで! 伝説の古代竜による『一瞬で焼き上がる直火焼きステーキ』! そして、ウチが教える『エドガー様の倒し方・極秘メモ』! 一口・金貨一枚からや!」
エドガーに憧れる令嬢たちが「極秘メモ」に食いつき、役人たちが、竜の火力に驚いて足を止める。
「……お嬢様。……ただの紙切れが、爆速で売れていきます。……利益率一〇〇パーセント。さすが、『ミーハー心』をお金に変えさせたら、右に出る者はおりませんね」
カシムが、拾った空き箱を金庫代わりに、次々と投げ込まれる金貨を回収していく。
「ふん、当たり前や! ……さぁ、軍資金は集まったで。エドガー、覚悟しなはれ!」
お読みいただきありがとうございます!
無一文になっても、エリザベスのソロバンは止まりません。
「ないなら作ればいい、売れるなら何でも売る!」の精神で、エドガーのプライバシーすらも軍資金に変えました。
エリザベスが「路上の実業家」として覚醒します。
さて、次に何をやらかすのか……引き続き、お付き合いいただけると嬉しいです!




