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【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第8章:【純愛?】ナニワの看板娘、恋という名の『計算不能』に、ソロバンを弾き損ねる
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恋の始まりは、【全財産没収】。――ゼロ距離ダンスと、経営破綻の宣告



「……ちょ、ちょっと待ちなはれ。距離、近くない!? パーソナルスペースの侵害やで!」


 エリザベスは、自身の腰に回されたエドガーの腕の熱さに、思わず悲鳴を上げた。


 華やかな旋律がホールを満たす中、ダンスが始まる。


 「一歩動くことに、利益がなんぼ」と弾き出す、エリザベスの脳内ソロバンが、パチパチと空回りするばかりで、全く数字を刻まない。


「……緊張しているのか? 君の鼓動ビートが、私のハートにまで響いているよ」


 エドガーが、楽しげに目を細めて、ささやく。


 至近距離で浴びせられる、極上の香水と、宝石のような瞳の輝き。


 エリザベスの「商売人としての防衛本能」は、完全に機能停止していた。


「……こ、鼓動やないわ! これは……そう、投資のチャンスを前にした武者震いや!」


「ふふ、君の稼ぎ方は強引だと思っていたが、訂正しよう。……強引なのは、私の心を一瞬で奪い去った、君の瞳の魔力だ」


「……ウチの目に、ダイヤモンドでも埋まってるように見えたんか!?」


 必死で啖呵たんかを切るエリザベスだったが、顔はゆで上がったカニのごとく、真っ赤だ。


 強気な言葉とは裏腹に、足元はふわふわして、エドガーに身を預ける形になってしまう。


 だが、甘い雰囲気をぶち壊したのは――。


「……エドガー卿。お嬢様の腰に触れている指一本につき、金貨百万枚の『特別接触税』を課します」


 見れば、カシムとギルが、これ見よがしにステップを踏んで、エドガーに張り付いていた。


 カシムの眼鏡は殺気で真っ白に光り、ギルは「いつでもいけるよ、旦那サマ!」と言わんばかり。


「……今、ええとこなんや! 恥ずかしいから、どっか行きなはれ!」


 曲がクライマックスに向かい、エドガーが、エリザベスを強く引き寄せた。


 そして、先ほどまでの熱っぽい眼差しを、急に冷徹な「監査卿」のものへと切り替える。


「……エリザベス。甘い時間はここまでだ」


「……え?」


「今のナニワ商会の稼ぎ方は危うく、他国から狙われるリスクがある。一時的に私の管理下・・・・・・・・・に置いた」


 エリザベスは、耳を疑った。


 エドガーの腕の中から解放された瞬間、冷たい夜風が吹き抜けたような感覚に襲われる。


「……は? 冗談やんな? ……カシム! ちょっと確認して!」


 カシムが懐から水晶端末を取り出すが、一瞬で絶望的な顔になった。


「……お嬢様。……誠に遺憾いかんながら、ナニワ商会の全資金、および我々の給料口座まで、『残高ゼロ』となりました」


「……ウチ、今、無一文……?」


 恋のドキドキが、「経営破綻けいえいはたん」の寒気に塗り替えられた。


 史上最高に「ロマンチック(物理)」な夜会は、全てを失う最悪の幕開けへと変貌へんぼうしたのである。

 お読みいただき、ありがとうございます!


 甘いダンスの時間は終了しました。


 経営者として、恋人(?)として、エリザベスは絶体絶命のピンチをどう切り抜けるのか……いや、そもそも全財産没収って、ひどすぎませんか!?

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