ダンスホールの「ドキドキ」と、想定外のロイヤル・エスコート
王立夜会の会場となる白亜の宮殿。
エリザベスは、扇子の裏に隠した「金儲けのメモ書き」をチラリと見て、戦闘態勢に入った。
「……お嬢様。心拍数が上がりすぎです。……敵の『顔面の良さ』に惑わされないよう、『金の亡者』としての心を取り戻してください」
背後に控えるカシムが、冷たい声で囁く。
隣で、ドレスアップしたギルが、周囲の貴族を睨みつけていた。
「わかってるわ。……せやけど見てみぃな。
シャンデリア一つで、ナニワの倉庫が三つ建つわ。
……こんな無駄遣いする奴に、ウチの商売にケチつけさせてたまるか!」
エリザベスが鼻息荒く、大階段を降りようとした瞬間。
「――お待ちしておりました、エリザベス殿」
会場のガヤガヤした音が、ピタッと止まる。
階段の下で待っていたのは、国家財政を担うエリート、エドガー・ヴァイス。
キラキラした銀髪に、ピシッとした礼服。
いつもは怖い顔のエドガーが、優しい笑顔で、エリザベスを見上げていた。
「な……っ!?」
エドガーが、エリザベスの手を取るために、階段を上がる。
ざわめきが消えたホールの中で、二人の歩む道だけが、スポットライトを浴びたように見えた。
エドガーの指先が、エリザベスの手袋に触れた瞬間、頭の中にあった「戦う準備」がバラバラに崩れ去った。
「……今夜の貴女は、世界中の全ての宝を集めても足りないくらい、美しい」
そのまま、王子様のように優雅な動作で、エリザベスの手の甲にキスをした。
「……へ? ……あ、えっ!?」
パチパチパチパチ……ガシャーン!!
エリザベスの頭の中で、フル回転していた「商売モード」がショートして、真っ白になった。
いつもなら「そのお世辞、なんぼで売れる?」と冗談でも言えるはずなのに、顔が真っ赤になって言葉が出てこない。
「エスコートさせてほしい。……君とのダンスが楽しみで、仕事も手につかなかったんだ」
エドガーが耳元で囁くたびに、エリザベスの心臓は早鐘を打つ。
「……お金のことしか考えないお嬢が、林檎みたいに真っ赤になって、大人しくしてる……!
カシム、世界が滅びる前触れじゃない!?」
ギルが驚愕の声を上げる中、エリザベスは、「胸のドキドキ」に振り回されながら、エドガーの腕に引かれてホールへと向かった。
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殺し屋の目をした護衛たちを尻目に、エリザベスお嬢様の「勘違い」はどこまで行くのか。
エドガー卿の甘い口説き文句に、お嬢様のソロバンは機能停止中です!




