求婚はすべて資源ゴミ! エリザベスお嬢様の「勘違い」モテ期、到来
軍事帝国ガリアとの通商条約締結、そして古代竜を「物流の看板」へと書き換えた空域制圧から数日。
ナニワ商会の朝は、絶望的な光景から始まった。
「……カシム。ウチ、『古紙回収業者』になった覚えはないんやけど?」
エリザベスは、自身のデスクを見て、呆然と立ち尽くした。
重厚なマホガニーの机は、もはや木目すら見えない。
視界を埋め尽くしているのは、色とりどりの封筒、バラの香りが漂う便箋、そして、これ見よがしに宝石が埋め込まれた親展の山、山、山――。
「……お嬢様、おはようございます。
今朝の第一便で届いた、各国の王侯貴族からの『熱烈なラブレター』、および『夜会への招待状』でございます」
カシムが事務的に告げる。
眼鏡の奥の瞳は、深夜の墓場のように冷たく、どす黒い光を宿していた。
「ラブレターぁ? なに寝ぼけたこと言うてんの。
……あぁ、なるほど。
『マッハ・デリバリー』に目をつけた連中が、提携の申し込みを情熱的に綴ってきたっちゅうわけやな?」
「……いえ、お嬢様。
九割九分、お嬢様の『独身枠(市場価値)』を狙ったハイエナどもの求愛でございます」
エリザベスは、山の一番上にあった金箔入りの封筒を指先でつまみ上げ、太陽の光に透かした。
「……封筒の装飾だけで金貨一枚分はするな。どこのどら息子や?
贅沢禁止法で訴えたら、和解金でボロ儲けできるんちゃうか?」
「……すでに判定『D(資源ゴミ)』として仕分け済みです。
紙屑は、指先一つで、物理的に『除却』できますので」
カシムの手には、いつの間にか、魔導シュレッダーが握られていた。
「ギィィィン」と鳴り響く音は、どことなく求婚者たちの悲鳴に似ていた。
だが、カシムの手が、一通の「飾り気のない真っ白な封筒」の前で止まる。
「……お嬢様。
エドガー・ヴァイス。王立財政監査卿からの、公開尋問への招待状です」
手紙の内容を要約すればこうだ。
『――ナニワ商会は、稼ぎ方に問題がある。明晩の夜会にて、私に直接釈明せよ』
「……お嬢様。狙いは監査ではなく、お嬢様をダンスに誘うための『へたくそな口実』です。
不愉快極まりない」
「カシム、何言うてんの。それより『稼ぎ方が不当』やて!?
ナニワの看板に泥塗るっちゅうんか! ええわ、その喧嘩、買うたる!
ソロバンの珠、全部ダイヤに植え替えて乗り込むで!」
エリザベスは、「不器用なエリートによる、必死なデートのお誘い」だとは、微塵も気づいていなかった。
「……承知いたしました。では、敵を恐怖させるための『夜会用・最強ドレス』を用意します。
ギル……起きなさい」
「……ふぇ? あ、旦那サマ。おはよー……って、うわっ!
目が完全に殺し屋になってるんだけど!?」
「……お嬢様の初陣です。
貴女は護衛として、お嬢様に近づく害虫をすべて『不良債権』として処理しなさい。
……一匹でも漏らしたら、今夜は一緒にお風呂に入りませんよ」
「えぇー! わかった、わかったよぉ!
お嬢の隣は、ウチがガッチリガードするからさ!」
こうして、エリザベスの史上最高に「勘違い」なモテ期が始まったのである。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
エリザベスお嬢様、愛よりも何よりも、「ソロバン」を片手に、夜会という名の戦場へ出陣です。
エドガーとの「ダンス」は、どうなるのか……ぜひブックマークをして、ナニワ商会の決算報告をお待ちください!
評価や感想もいただけると、エリザベスが喜んで「粗利」を計算します。
よろしくお願いします!




