「空を見上げたなら視聴料(カネ)を払いなはれ」。――伝説の翼、広告塔へ
軍事帝国ガリアの王都広場。
ようやく息を吹き返した族長バハムは、慣れない手つきで、ナニワ麺の「賄い」を啜っていた。
「……う、うまい……。音速を超えて羽ばたいた甲斐があったというものだ……」
「……でしょう? 頑張った後のマシマシは格別ですよ、族長」
ギルが、ドラゴンの鱗をポリポリと掻いてやりながら、動画の再生数を確認している。
だが、平穏を打ち破ったのは、カシムが差し出した、最新型の魔導通信機だった。
「……族長、お嬢様から追加の指示です」
「……あ、もしもし? 出前、評判ええみたいやん」
通信機から響くエリザベスの声に、族長は直立不動になった。
「はっ! お嬢様! すでに納品を完了し、次のフライトに備えて……」
「あぁ、それなんやけど。目的地に着くたびに、判もらうの効率悪ない? 時間の無駄やわ」
「は……? 効率、でございますか?」
「せや。次からは、空域を飛びながら『ナニワ・ドライブスルー』を開始しなはれ。あと、その翼、ただ飛んでるだけやったら、もったいないわ。……カシム、例の『空中広告』の準備はできてる?」
「……はい、お嬢様。すでに全竜の翼の裏側に、蛍光魔法で『ナニワ商会、深夜まで営業中』の文字を刻む準備が整っております」
族長は、持っていた割り箸を落とした。
「誇り高き我らの翼に、直接文字を刻んで光らせろと……?」
「何言うてんの。空飛ぶ『看板』になれるんやから、光栄に思いなはれ。それと、ついでに空域の下にある国々に『ナニワの看板が空を通過した通行料』を請求しとき。広告を見たんやから、視聴料払うのが筋やろ?」
もはや物流ですらない。
エリザベスは、空そのものを「ナニワのサブスクリプション」に変えようとしていた。
「……というわけです、族長。三秒以内に完食しなさい。……。次は、帝国の防空圏を『広告宣伝飛行』として往復します。一秒でも止まれば、損害賠償を請求しますよ」
「……っ! 我が一族、全速前進だぁぁ!! 翼に文字を刻め! 恥をかき捨てて、ナニワの看板になるんだぁぁぁ!!」
族長の悲痛な咆哮とともに、金色の文字を煌めかせたドラゴンたちが再び空へと舞い上がる。
空の覇者が「広告塔」へ成り下がったその日、世界の空域権はエリザベスの手中に落ちた。
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