敵襲かと思えば「マシマシセット」。――王都を埋め尽くす、黒い雪(カップ麺)
軍事帝国ガリア。
この国は、鉄壁の防空網を誇る「空の要塞」として恐れられていた。
だが、平和な午後は、突如として空を裂く「衝撃波」によって破られた。
「て、敵襲だぁぁぁ! 上空より正体不明の高エネルギー体が急接近! ……マッハを超える速度です!」
迎撃に出ようとした帝国騎士たちが、愛竜に跨る暇もなかった。
雲を突き抜け、王都の広場に降り立ったのは――コンテナを背負い、白目を剥いて泡を吹く古代竜の群れだった。
「ひ、ひ、ひぎぃぃ……! ……着いたぞ。三十分以内……間に合った……!」
族長バハム・ズ・アゴが、地面にキスをしながら、震える声で叫ぶ。
「……目標時刻より十二秒短縮。お疲れ様です、族長」
族長の眉間から軽やかに飛び降りたカシムが、呆然とする帝国の門番に「受領印」の書類を突きつけた。
「……ナニワ商会・航空貨物部門です。ご注文の『ナニワ麺・特製マシマシセット』一万食、お届けに上がりました。……ここにサインを。……お嬢様からお預かりした『試供品』は、今から空域全体に配布します」
「……えっ?」
門番が空を見上げた瞬間、ギルが指を鳴らした。
「おっけー! みんな、ナニワの愛、受け取ってよね!」
上空で待機していた若竜たちが、一斉にコンテナを解放する。
空から降り注いだのは、雨ではない。
パラシュート付きの「ナニワ特製・カップ醤油麺(限定版)」が、黒い雪のように王都を埋め尽くした。
「空からドラゴンが、麺を運んできたというのか!?」
恐怖は、「食欲」へと塗り替えられた。
「……さあ、帝国中に広めなさい。……空を支配するのは、もはや翼ではありません。……お嬢様の『鮮度へのこだわり』です」
カシムが不敵に微笑む傍らで、族長は「もう二度と飛びたくない……」と、干からびていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「空を支配するのは翼ではなく、鮮度」
お嬢様のビジネス哲学が、帝国を美味しく侵食しました。
降ってきたのは弾丸ではなく、お湯を注ぐだけで幸せになれる一杯。
族長、過酷な輸送任務、本当にお疲れ様でした。




