【地上げ】聖域? いえ、ナニワ商会の「物流拠点」です
『天教国スカイハイ』。
雲を突き抜ける巨峰と、空を統べる古代竜たちが支配する、地上の法が届かないはずの聖域だった。
――だが、彼らの常識は、「ナニワ商会」に通用しない。
「……カシム殿。本当にやるんですか? 火を吹くトカゲが、ウジャウジャいるんですよ」
物流主任のゴウモンが震える手で、巨大な『立看板』を山道に突き刺した。
金文字で、こう書かれている。
【ナニワ商会・航空貨物第一ターミナル建設予定地(私有地につき不法占拠厳禁)】
「……ゴウモン主任。拒否するなら、ステーキ店にする。ならば、『地面』から剥がし取るのが、最適解です」
カシムは淡々と、測量データを魔導端末に打ち込んでいく。
「……昨夜、お嬢様が山脈一帯の権利を、辺境伯爵から買い上げました。……つまり、この山でドラゴンが羽ばたくのは、我が社の庭で、トカゲが暴れているのと同じ扱いです」
「買い上げたって……ほぼ脅して奪ったようなもんじゃないですかズゾッ!」
掃除機のような音を立てるズゾーのツッコミを無視し、カシムは冷酷に指示を飛ばす。
「ギル。準備はいいですか」
「おっけーカシム! ウチのセンス、マジ爆発させちゃっていいよね!」
ギルが指を鳴らすと、上空のリモコンバルーンから、ド派手な「ピンクのテープ」が大量に投下された。
ドラゴンの動きを封じるためではない。
「私有地の境界線」をアピールするためのデコレーションだ。
「……おい、翼なき下等種族ども! 何をしている!」
異変に気づいた一匹の若竜が急降下し、岩をも溶かす猛炎を放つ。
だが、カシムは眉ひとつ動かさず、覇気だけで、炎を霧散させた。
「……しつけのなっていないトカゲですね。お嬢様の庭で火遊びとは」
「……はぁ!? バ、バカな、人間風情が……!」
「……吠えても無駄です。次は『差押』の赤札を、全身に張り付けますよ」
カシムが眼鏡をクイッと上げると、山周辺に打ち込まれた魔導杭が共鳴し、全域がナニワ商会の「金色」に輝き始めた。
「……さあ、族長バハム・ズ・アゴに伝えろ。不法占拠の罪を償うか、それとも『商会の備品』として第二の人生を歩むか……選ばせてあげます、と」
こうして、誇り高き古代竜の聖域は、瞬く間に「ナニワ商会の物流拠点」へと書き換えられた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
聖域にまで手を出し始めたナニワ商会。
ドラゴンすらも「備品」として扱うカシムの容赦なさに、読者さまも戦慄(?)されたのではないでしょうか。
次回も、どうぞお楽しみに!




