【解決】五人目の四天王、吸引のズゾーを「天職」に充てよ
備蓄倉庫。
かつて「四天王の補欠」として恐れられた(あるいは呆れられた)男が、ナニワ麺の段ボールに顔を突っ込んでいた。
「……ズゾッ、ズゾゾォォォ……ッ。あぁ、粉末の絶妙な塩気が、魔界でリストラされた心に染み渡るズゾぉ……」
掃除機のノズルが顔に付いたような男は、カシムが背後に立っていることにも気づかず、スープ粉末を「吸引」し続けていた。
「……ズゾーさんですね。業務用の粉末を直接吸引するとは、衛生管理上、見過ごせません」
「ズゾッ!? だ、誰ズゾ!?」
跳ね上がったズゾーが振り返ると、冷徹な光を宿したカシムが、手帳を広げて立っていた。
「ひっ! お前は……ギル様のSNSでいつも背景に写り込んでる、地味な眼鏡ズゾ!」
「ちょ、『背景』扱いとかマジ失礼! てかアンタ、そのノズルで、ウチの初夜のムードまで吸い取ったわけ? ガチで許せないんだけど!」
ギルが、スマホのライトで、ズゾーを照らし出す。
「……四天王の補欠は、実績を出さないと魂を削られるズゾ! だから、スープを減らす指示を出したドサクサに紛れて、自分の分を少し頂いただけで……!」
「計算すると、貴方は全在庫の 5パーセント ――金額にして、新大陸の国家予算一ヶ月分に相当する粉末を、横領しています」
ズゾーは震え上がった。
「カシム。こんな粉泥棒、処刑するのも時間の無駄やわ」
エリザベスが優雅に歩み寄り、ズゾーの鼻を品定めするように、覗き込む。
「一回吸い込んだ粉を、コンマ一グラムの狂いもなく、吐き出すこともできるんやろ?」
「……ズゾ? まあ、吸引公爵ですから、出力の調整はお家芸ズゾ……」
「ええ返事や。決まりやね。……あんた、明日から工場の『全自動スープ充填機』として働かしたげるわ。機械より正確で、電気代もかからん。最高の人材やないの」
「それって、もしかして再就職ズゾ!?」
ぱぁぁ、とズゾーの顔が明るくなる。
「せや。福利厚生として『一日三食、ナニワ麺食べ放題』。……ただし、休憩時間は三時間に一秒。二十四時間フル稼働や。吸って、吐いて、袋に詰める。あんたの吸引力で、ナニワ商会のシェアを世界一にするんやで?」
「三食食べ放題!? ホワイト企業ズゾー! 一生付いていくズゾー!!」
泣いて喜ぶズゾーを尻目に、エリザベスはカシムに、分厚い書類の束を押し付けた。
「カシム。新しい人員の雇用契約書と、ズゾーを組み込んだ工場の新ライン設計図、夜明けまでに書きなはれ。……え、三連休? そんな暇あったら、ズゾーが詰めた『増量キャンペーン品』のチラシも、百万枚くらい刷っとき。……ええね?」
「…………。
結局、初夜どころか、三連休も『仕様書の書き換え』で終わりそうです……」
事務官国王の溜息は、麺の香りが漂う倉庫の闇へと、吸い込まれていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
吸引の天才・ズゾーがナニワ商会に仲間入り(?)しました。
休憩時間は三時間に一秒ですが、ナニワ麺が食べ放題なので、本人も商会もWin-Winですね!




