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【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第6章:【人事】今日から国王と王妃や。――あ、給料は据え置きやで?
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【悲報】王宮の初夜、最優先事項(メイン・クエスト)は別にあった

 朝日が新大陸の地平線から顔を出し始めた頃。


 カシムとギルは、ようやく寝室の重厚な扉を閉めた。


 豪華なキングサイズのベッドに、二人は崩れ落ちるように倒れ込む。


「……終わった。ギル、我々は生き残りました……」


「マジ無理……お嬢、ガチで鬼だし。ウチのダイヤ、半分くらい擦り切れてんだけど……」


 ギルのドレスはボロボロ、カシムのタキシードもほこりまみれ。


 だが、静まり返った室内で二人きりになると、先ほどまでの極限状態が嘘のように、奇妙な熱がこみ上げてくる。


 ギルが、横たわるカシムの顔をのぞき込み、ニッといたずらっぽく笑った。


「……ねえ、カシム。言ったよね? 『真っ先に外してあげる』って」


「……っ。……はい。業務時間外、ですから……」


 ギルが震える指先で、カシムの眼鏡をゆっくりと外す。


 レンズの向こう側にあったのは、一人の女性を真っ直ぐに見つめる、ひどく熱を持った男の目だった。


「眼鏡がないと、視界はボヤけて計算もできません。……ですが、今の貴女だけは、驚くほど鮮明に見える。……ギル、私は――」


「ちょ、カシム……それ、反則なんだけど……」


 ギルがカシムの胸元に顔を埋め、二人の距離がゼロになる。


 カシムの腕がギルの腰に回り、ついに唇が重なろうとした、その瞬間――。



 ドガァァァァァァァン!!



 部屋の扉が、凄まじい衝撃と共に、物理的に粉砕された。


「カシム殿ぉぉぉぉ! 助けてくれ! 緊急事態だぁぁぁ!!」


 飛び込んできたのは、涙目になった物流主任ゴウモンと、彼に担がれた清掃員ドブドスだった。


「なっ……何事ですか? 非常識極まりない時間に!」  


 カシムが慌てて、眼鏡を逆さまに装着する。


 「マジ殺す!」


 ギルも叫びながら、枕を投げつけた。


「門の前で! 元魔王軍が『ナニワ麺の粉末スープの量が前より減っている! ステルス値上げ反対!』と暴動を起こしているんだ!」


 直後、エリザベスの魔導通信が響き渡る。


『……カシム、聞こえてる? スープの減量案はウチの指示や。さっさと国王として「これは原材料の高騰による苦渋の決断や」って泣き落として、ついでに上位互換の「特濃スープ(有料)」を予約販売してきなはれ。……え、何? 寝てたん? 結婚したからって、一秒でもサボれると思わんといてや?』


 カシムは天を仰ぎ、深すぎるため息をついた。


「……。ギル、すみません。……どうやら『初夜』よりも『粉末スープのクレーム対応』が、現在の最優先事項メイン・クエストです」


「マジでナニワ商会ブラックすぎんだけどー!! 今夜はウチが、絶対にカシムを返さないって決めてたのにぃぃぃ!!」


 事務官国王はタキシードを直し、絶叫する妻を置いて戦場へと引きずられていった。



 新大陸の夜明け。


 結ばれるはずだった二人の愛は、またしても「残業」という名の闇に呑み込まれたのである。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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