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【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第6章:【人事】今日から国王と王妃や。――あ、給料は据え置きやで?
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ロイヤル初夜は「玉拾い」。――お嬢様は、魔王より、魔王です。



 静まり返った披露宴会場。


 床に散らばった黄金のソロバン玉を前に、カシムとギルは、生まれたての小鹿のように震えていた。


「お、お嬢様……。

 これには、不可抗力という名の物理的な法則が……」


「お嬢! マジごめん!

 ウチが自撮りとか言ったからで、カシムは悪くないっていうか……!」


 必死に言い訳を並べる二人の前へ、エリザベスは歩み寄る。


 そして、床に転がるソロバン玉の一つを、ひょいと拾い上げた。


「……ほう。

 ウチの魂を粉々にしておいて、謝罪だけで済むと思てるん?」


 扇子の奥で、笑みが消える。


「甘いわ。

 アンタら、ナニワ商会の社訓、忘れたんか?」


 扇子が広げられた瞬間、背後に控えていた清掃員ドブドスと物流主任ゴウモンが、血相を変えてバケツとピンセットを差し出した。


「『壊したもんは、利益で埋めろ』。……ええね」


 エリザベスは会場を一望し、静かに告げる。


「今から、散らばったソロバン玉を回収しなはれ。

 一粒でも足りんかったら、新婚旅行は中止」


 にこり、と笑う。


「明日から二人揃って、新大陸の最果てで

 『素手で岩塩掘り』の刑や」


「「ひ、一粒残らず……!?」」



 こうして――


 豪華絢爛ごうかけんらんな初夜を迎えるはずだった国王と王妃は、高級な礼装のまま、地べたをいずり回る。


「……右側 4.5 メートル地点に、3 粒。

 シャンパンタワーの残骸ざんがいの裏に、12粒確認」


 必死に数を弾き出しながら、カシムが指示を飛ばす。


「ギル、回収を。

 ……くっ、タキシードが邪魔で、計算通りの角度で腰が曲がらない……!」


「理屈言ってる暇あったら拾ってよ!

 ヤバい、お嬢が時計見てる!」


 ギルは半泣きで叫ぶ。


「マジで岩塩掘りとか、爪死ぬし!」


 みじめな二人を、広報パパラッチのゼツボーンは、遠巻きに撮影した。


「あああ……。

 床をうギル様……。これも、ある種のエモ……ッ!」



 夜明け前。


 ようやく最後の 1,000 粒目 をカシムが発見し、エリザベスの足元に置かれた箱へと収める。


 その瞬間、二人はボロ雑巾のように床へ倒れ込んだ。


「……全部、揃いました。

 お嬢様……これで、許して……」


「……ま、ええわ」


 エリザベスは満足げに頷く。


「カシム。あんたの執念は認めたげる。

 ……ギル、あんたも『王妃』の重み、少しは分かったやろ?」


 あくびを一つ。


 きびすを返し、背を向ける。


「もう夜が明けるね。罰は終わりや。

 さっさと自分らの部屋に戻って、寝なはれ」


 そして、ふと思い出したように付け足した。


「……あ、カシム。

 朝一で『新国王の所信表明演説』の原稿、持ってきなはれや」


 扇子が、パチンと閉じる。


「休みなんて、一秒もあげへんからね?」


「…………。

 お嬢様は、魔王より、魔王です……」


 フラフラになりながら、寝室へと向かう二人。


 こうして、史上最も過酷な「結婚初夜」は、幕を閉じたのであった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


 史上最悪(?)の初夜を終えた国王と王妃に、せめて乾杯を……といいたいところですが、すぐに「所信表明演説」が待っています。


 ナニワ商会に休みはありません!

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