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【転生令嬢】愛より金や! 〜断罪の宴に響くソロバンの音。「慰謝料」キッチリ計算してええですか?〜  作者: ちいもふ
第6章:【人事】今日から国王と王妃や。――あ、給料は据え置きやで?
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【絶望】 国王と妃、酔った勢いでナニワ商会の家宝を粉砕! 『ええ音したなぁ?』

 披露宴の興奮が冷めやらぬ深夜。


 王宮の特設会場では、魔物も人間も分け隔てなく泥酔し、完全にカオスと化していた。


 ――もちろん、主役の二人も例外ではない。


「飲み足りないんだけどー!

 カシムも『王様』なんだから、もっとグイッといっちゃいなよ!」


「……ギル、私はアルコールの分解効率が極めて低いと……ひっ。

 ……あ、あれ? ギルが三人に見えます。……計算が、合わない……」


 普段の鉄面皮はどこへやら。


 眼鏡をずらしたカシムは、ギルに勧められるまま最高級の魔導ブランデーをあおり、陽気な酔っ払いになり果てていた。


「あはは! カシム、超ウケる!

 ねえ、あそこにあるキンキラした像、マジ映えそうじゃない?

 近くで自撮りしよーよ!」


 ギルが指差したのは、会場の最奥。


 厳重に安置された 『黄金のソロバンを抱いたエリザベス像』 だった。


 ナニワ商会の家宝。


「ウチの魂や。傷一つ付けたら新大陸ごと更地にしたげるわ」


 エリザベスが豪語していた、いわくつきの象徴である。


「お安い御用です……。

 私が……支えます……」


 千鳥足のカシムが、ギルの腰を抱き寄せて像に近づく。


 かっこいいところを見せようと、像の台座に足をかけた。


 ――次の瞬間。


 アルコールに裏切られた平衡感覚が、カシムを無慈悲に放り出した。


「あ」


「え」


 スローモーションのように、二人はもつれ合って転倒する。


 そして、カシムが反射的に伸ばした手が――。


 エリザベス像の腕に抱かれた『黄金のソロバン』を、正確無比に直撃した。



 ――ガッシャァァァァァァァン!!



 会場が、凍りつく。


 床に転がっていたのは、無残にも砕け散った「黄金のソロバン玉」。


 よりにもよって、商売人の命とも言える計算道具が、破壊されていた。


「……カシム、これ……マジでヤバくない?

 お嬢に見つかったら、ウチら『物理的に』更地にされるよね?」


「……。はい。

 脳内シミュレーションによれば……生存確率は 0.00001% 以下……。

 即刻、夜逃げのロジックを……構築せねば……」


 酔いが一気に引き、二人の顔から血の気が消える。


 その時だった。


 会場の入り口から、「カツ、カツ、カツ」と、靴音くつおとが響く。


「……あんたら、えらい楽しそうやねぇ」


 エリザベスは、カチリと扇子を閉じ、瞳に暗い炎を宿して微笑んだ。


「……まずは、慰謝料の概算から始めましょか?」


「「ひ、ひえぇぇぇぇぇ!!」」


 新大陸の英雄――


 国王と妃が、完全な敗北を悟った瞬間だった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 酔った勢いとはいえ、商売人の「魂」を粉砕してしまった国王夫妻。


 今後の展開は……そうですね、たぶん新大陸の国家予算レベルの請求書が届くのではないでしょうか。

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