誓いのキスは業務外。――新大陸最大(経費)の挙式、ついに開宴!
新大陸港湾国家『ポート・サカズキ』。
この日は、建国以来の狂乱に包まれていた。
何しろ、「国王」と「王妃」の結婚式である。
街の通りには、紅白の『ナニワ商会』の幟が立ち並び、噴水からは「特製・極上醤油スープ」が噴き出している。
集まった国民は、支給された記念限定カップ麺を啜り、歴史的な成金イベントを、今かと待ち構えていた。
「カシムー! 見て見て、ウチのドレス、ダイヤ10,000カラット盛り盛りなんだけど! 重すぎて腰死ぬ!」
純白のシルクに、宝石をジャラジャラ付けた、眩しすぎるウェディングドレス姿のギルが笑う。
デコった魔導スマホを掲げ、「新大陸の王妃なう!」と、満面の笑みでライブ配信をスタートさせた。
「……ギル。ダイヤの仕入れ値を知っているのですか? 歩く国家予算ですよ、貴女は」
カシムは白いタキシードに身を包み、いつになく落ち着かない様子で眼鏡を直す。
背後で、物流主任ゴウモンが巨大ウェディングケーキを運んでいた。
「ぬ、ぬおお……腰が、腰が砕ける……!」
冷蔵庫スタッフ・フリーズも、ケーキの鮮度を死守するために、気温をマイナス20度に調整する。
「溶かしてなるものか……!」
「準備完了や。……ええか? これは『結婚式』やない、ナニワ商会の『権力誇示』や。派手にやりなはれ」
エリザベスが黄金の扇子をパチンと閉じると、空を飛ぶワイバーン部隊が色とりどりの煙を吐き出し、咆哮でウエディングソングを奏で始めた。
「さあ、清掃部門! 腕の見せ所やで!」
清掃員ドブドスは、超強力洗剤で磨き上げ、光り輝く純白のバージンロードを見せつける。
「完璧に仕上げましたぁー! これぞナニワ商会の技術力ですぅー!」
神々しいまでの道を、カシムとギルが歩みを進める。
沿道の観衆は、魔物と人間が入り混じり、二人を好き放題に茶化していた。
「ヒューヒュー!」
「国王! 王妃に押し切られろよ!」
広報パパラッチのゼツボーンは、鼻血を吹き出し、連写シャッターの音を銃声のように響かせている。
「……あああ、レンズ越しでも目が潰れるほど尊い……ッ!」
王宮の特設祭壇にたどり着き、新大陸の夕陽が二人を照らした。
誓いのキスの瞬間。
観衆の声援が爆音と化す中で、ギルがカシムの耳元で、いたずらっぽく囁く。
「……『お仕事』じゃないからね?
終わったら、カシムの『理性』、ウチが全部壊してあげるから。……覚悟しなよ」
「……業務外の負荷が……高すぎます……ッ」
エリザベスはシャンパンを口に含み、満足げに微笑む。
「ええ式や。新大陸の株価も爆上がりやね。……さあ、宴の始まりや! ナニワ麺、替え玉無料キャンペーン開始しなはれ!」
新大陸史上、最も「経費」と「愛」が注ぎ込まれた一日は、夜の宴へと続いていく。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに迎えた結婚式。
派手すぎるウェディングドレスと、醤油スープの噴水。
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カシムの理性を、完全に崩壊させる燃料になります!




